kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

大山登山と山のキャパシティ

今週のお題ゴールデンウィーク2017」。

山頂から富士山の見える山を多く有する神奈川県に引っ越してきてはや2年以上。

これまでまったく登山を経験したことがなかったので、「初心者・ファミリー向け「子連れ登山」におすすめと噂の丹沢大山に行ってきました。

f:id:kimisteva:20170430105934j:plain

 

「山ガール」向けのサイトでは、大山阿夫利神社から表参道(?)を通って本社まで行き、そのまま同じコースを引き返すコースが提案されていたのですが、このコースはちょっと(いや相当)危険だと思います。

 

www.yamagirl.net

今回、私たちは、こちらのサイトでおすすめされていた、大山阿夫利神社から表参道(?)を使って頂上本社に登山した後、見晴台コースを使って下山するコースを選びました。

yamahack.com

 

見晴らし台コースは、ところどころ危険な山道もありますが、表賛同(?)に比べて、舗装されている登山道も多く、道も比較的広いので、初心者や家族連れはこちらのコースを往復したほうが良いように思います。

 

大山阿夫利神社内に入り口が設けられた表賛同からの同登山道は舗装されていない道も多く、道もかなり狭いです。

人がすれ違うことが難しい場所も多々。

f:id:kimisteva:20170430102204j:plain

 

また、ゴールデンウィークや紅葉の季節など、人が多い時期にいった場合、登山道そのものはそれほど危険でなくても、登山する人たちがたくさんいることで、しかも登山に慣れていない初心者や家族連れがその中に多くいることで、それまでには生じなかったような事故が生じることも予想されます

f:id:kimisteva:20170430102715j:plain

f:id:kimisteva:20170430134527j:plain

以前、竹田城が、テレビCM等を通じて一躍有名になり、年間50万人以上の人々が訪れるようになったことで、それまでには想定され得なかったような転落事故や、冬の登山道での転倒事故などが起きたことが問題になりました

www.sankei.com

 

富士山での遭難件数も、相変わらず多いようで(2016年度の遭難事故件数は、世界遺産登録の年に次いで多かったようです)、「登山ブーム」によって初心者や家族連れの登山客がますます増える中、それぞれの山が登山客を迎える際のキャパシティをどう考えるか、登山客にどのように注意を促していくか、という問題がさらにクローズアップされていくのではないか、と思いました。

 

大山登山は、「神奈川で子連れ登山!富士山が見える山おすすめ3選」として紹介されるなど、かなり「初心者向け」「ファミリー向け」「子ども向け」と謳われているようです。

feature.cozre.jp

 

日本山岳遺産基金による「親子登山のススメ」では、はじめて子どもと行く登山の目安として、「高低差400~600メートルほど」「歩行時間3~5時間程度」が推奨されているので、丹沢大山は、子どもとはじめていく登山でもおすすめということになります。

だけど、この目安には、人が大勢押し寄せること(しかもそこには初心者や家族連れがたくさん含まれる)によるリスクが考えられていないと思います。

親子登山のススメ | 日本山岳遺産

 

「初心者向け」「ファミリー向け」であることを謳い、広報すれば、そこには、たくさんの初心者や家族連れ、子どもたちが集い、それによって登山のリスクは高まります。

 

そのようなリスクも想定したうえで、登山すべき山を選定したり、推奨したりしていかないと、「想定していなかった」と言われるような事故がもっと増えていくのではないか。

 

…そんなことを思わずにいられなかった初の大山登山でした。

 

本や雑誌がわたしたちに教えてくれるもの~アイデアを生み出すためのザッピング読書

大学で担当している演習授業「国語教育演習Ⅰ」では、毎年、国語教育・読書教育関連の学術雑誌を「乱読」「ザッピング」する活動を実施しています。

 

 ザッピング読書に思いいたるまで

本や雑誌の「乱読」「ザッピング」には以前から関心を持っていたのですが、外山慈比古『乱読のセレンディピテイ』を読んだり、嶋浩一郎『なぜ本屋に行くとアイデアが生まれるのか』を読んだりして、一見関係なさそうに並んでいる本をザッと見比べたり、タイトル同士に思いがけないつながりを見出したりすることで生まれるアイデアについてあらためて考えさせられたこと。 

 

  さらに、『Courrie Japon』のウェブページで読んだスプツニ子!さんのコラム「Vol.30 手にした情報の「結びつけ方」で、新しいアイディアは生まれる」を読んで、あらためて、アイデアを生み出すための本の読み方として、「乱読」「ザッピング」を捉えてみたい!と思ったこと。

courrier.jp

そんな経験から、ここ数年ずっとそんな実践研究に取り組んでいたりします。

例えば、こちら。

JAIRO | 読書体験を共有する活動に着目したワークショップ・プログラムの実践

JAIRO | <リーフレット>こどもニンジャ(にんじゃ)図書館合戦(としょかんがっせん)あそび方(かた)ガイド

続きを読む

烏龍茶グラノーラを試してみました

「烏龍茶グラノーラなるものを購入してみました。

f:id:kimisteva:20170416201909j:image

上野から御徒町にかけてあるアメ横商店街の一角に、ドライフルーツと木の実(ナッツ)を扱った「小島屋」という店があります。

 

小島屋では、自社ホームページや楽天ショップから、ドライフルーツやナッツを通販で購入するシステムを取り入れているのですが…、たまたま見てしまった、小島屋のホームページが熱い!

 

ナッツ&ドライフルーツ専門店としての誇りと職人魂のようなものを感じさせるテキストの数々と、職人としての実践知から次々と湧き出てくるような商品開発アイデアに、大きな感動を覚えます。

 

烏龍茶グラノーラも、そんな職人魂と実践知から生み出された新商品のひとつ。

烏龍茶グラノーラの商品説明には、次のようなテキストが付されています。


烏龍茶タイプ | ドライフルーツ82種 通販 小島屋

今や、朝食の定番とも…美容やダイエット食とも…大人気のグラノーラ

ですが…市販のグラノーラを食べてみると、ナッツの香ばしさがなかったり…ドライフルーツが固かったり…

「これで…贅沢配合なのか…意外と少ないな…」

1食80gとして140円程で食べられますが、シリアルに対するドライフルーツやナッツは、そのうち13gほど… つまり、16%~18%なんです。。。

もう少しだけドライフルーツとナッツがひきたったグラノーラが食べたいなぁ。。。

などなど、ドライフルーツとナッツの専門店の性分でしょうか…とっても気になってしまったんですよね。

 

 

「これで…贅沢配合なのか…意外と少ないな…」

 

そんなことをグラノーラを食べながら思う人は、どのくらいいらっしゃるのでしょうか…?

とにもかくにも、私は感動したのです!

 

そして、「烏龍茶グラノーラ

 グラノーラのドライフルーツ&ナッツの量に疑問を持つだけだったはずなのに、なぜ、ミルクの壁を乗り越えようと思ったのか。

 

専門家の実践知からくるアイデアは、時に、一般人の常識を軽々と超えていきます。

それこそ、まさに経験に裏打ちされたクリエイティビティ!

これは、食べてみるしかない!

 

…というわけで、食べてみました。

 

お湯を沸かして、烏龍茶パックを入れたポットにお湯を注いで数分間。

しっかり烏龍茶の風味が出てきたところで、ブランフレークと烏龍茶グラノーラの両方を混ぜ合わせた器の中に、烏龍茶を注ぎます。


f:id:kimisteva:20170417000841j:image

※注※ 商品にイチゴは含まれておりません。

 

ブランフレークを入れたのがいけないのでしょうか?それともホット烏龍茶を入れたのがいけないのでしょうか?

どんどん、フレークが溶けていきます……このままだとお粥的なものになってしまう!

 

急いで、食べてみます。

 

……なんだこれ。

なんか、懐かしい味がする!

 

その時は、なんだかよくわからなかったのですが、思い出してきました。

以前、好きでよく飲んでいたロシアンティー(紅茶+ジャム)や、小さい頃飲んでいた砂糖入りの麦茶(なぜそんなものがあったのかはよくわかりませんが)に、よく似た味がするんです。

 

考えてみれば、味の構成要素が同じなので、そんなにビックリすることでもないのですが、「烏龍茶グラノーラ」とはじめて聞いたときはまったく味のイメージがつかなかったので、これに気づいたときには、「なるほど!」という感じでした。

 

なお、後日、「やっぱりグラノーラだし、ミルクのほうが合うのでは?」と思い、ミルクでも試してみたのですが、ドライフルーツがうまく溶けず、全体として調和した味にはなりませんでした。

 

なので、やっぱりこの商品は、烏龍茶のためのグラノーラ=「烏龍茶グラノーラ」なんだと思います。

 

ただし、やはり、フレークが溶けすぎてしまうという問題は残ります。

どんなフレークを使うと、パーフェクトな烏龍茶グラノーラが楽しめるのか。

これは今後の課題としたいと思います。

古代遺跡!戦争遺跡!廃墟!夢の競演エンターテイメント!~埼玉のカッパドキア・吉見百穴に行ってみた

埼玉のカッパドキア」として有名(?)な吉見百穴に行ってまいりました。

 古代遺跡の魅力

 

f:id:kimisteva:20170415153430j:plain

f:id:kimisteva:20170415152523j:plain

 

吉見町観光・見どころガイドによると、吉見百穴古墳時代の末期に造られた「横穴墓」で、死者が埋葬された部分の構造も横穴式石室とそんなに変わらないらしい。

 

つまり、古墳時代末期につくられた集団墓地ということでよろしいでしょうか…?

この穴のひとつひとつが、すべて墓だったと考えると、なかなか感慨深いものがあります。

 

戦争遺跡=軍需工場跡地としての魅力

あまりに穴が多いので、そのカッパドキアっぷりにばかり着目されがちな吉見百穴ですが、それだけではありません。

吉見百穴のあたりは、昭和19~20年に地下軍需工場として利用されていたこともあり、穴の中に一歩足を踏み入れると、そこには突然、地下要塞のような風景が!

 

f:id:kimisteva:20170417075027j:image


f:id:kimisteva:20170417075040j:image

 

f:id:kimisteva:20170415150457j:plain

 

軍需工場跡・ヒカリゴケ | 観光地 | 吉見町観光・見どころガイド」を見てみると、この軍需工場、作られ方がすごい。

 

ダイナマイトを使用しての工事であったが、地下施設工事に適した凝灰質砂岩の分布は百穴と岩粉山付近でしか認められず、松山城下には第三紀層の固い岩盤があり落盤が起こりやすく、百穴と岩粉坂の中間は山が低いので掘削に適さず工事は難航したと言われている。また、この工事は設計後の図面に基づいて実施しているわけではないので、工事を進めながら設計を進めるという作業であった。そのため掘削しては測量し、高低や方向を修正していたと言われている。

 

「工事を進めながら設計を進める」!!

 

すごいですね。

インプロヴァイズド・ラーニング(即興的な学習)ならぬ、インプロヴァイズド・ビルディング(即興的建築)

 

人間にとって建築とは何かを、あらためて、考えさせられます。

 

岩室観音

吉見百穴の近くには、「岩室観音」という古くてディープそうな寺があり、B級スポットマニアの心をくすぐります。

tokyodeep.info

 

お堂の建築物内外に岩室が広がっており、そこには多数の石仏が。

f:id:kimisteva:20170417075054j:image

 

さらにお堂の裏手に進むと、「胎内くぐり」の入り口と思われるハート型の穴が…!

この日は足場が悪いのでさすがに挑戦できませんでしたが、次回行くときはこの胎内くぐりがどこに続いているのか…知りたい気持ちがやみませんでした。
f:id:kimisteva:20170417075107j:image

 

岩窟ホテル

そして…わたしもここに行くまで知らなかったのですが、心霊スポットや廃墟、またB級スポットとして名高い(らしい)岩窟ホテル

bqspot.com

 

たしかに、このあたりだけ、客をもてなすために植えられたような草木があったりするので、何か施設があったのかな…?というかんじはあるのですが、まさかホテルがあったとは!

しかも、岩窟ホテル

f:id:kimisteva:20170415155114j:plain

 

しかも、岩を掘って部屋をつくりそこに客を泊めるという斬新な発想!

f:id:kimisteva:20170415155130j:plain

 

なんていうか…一言でいうと、泊まってみたかった

 

…というわけで、埼玉県吉見町の吉見百穴周辺は、かなり見どころが多いエンタメ地域であると思いました。

 

みんなが穴を掘りたくなって、掘る。そしてみんなの堀った穴、穴を掘りたい欲望がが文化を作り、それがさらに現代に残る遺跡(や廃墟)を作っている地域というのもステキです。

古代から現代まで、「穴を掘りたい」と思い「穴を見たい」と思う共通の心性(?)のようなものを感じます。

日本SFアニメは電気羊の夢を見るか?ー『ゴースト・イン・ザ・シェル』

『ゴースト・イン・ザ・シェル』、2D吹き替え版で見てきました。

 

字幕版は観ていないので、比較はできないのですが、少なくとも、予告編などで観た範囲の印象でいえば、この映画は吹き替え版で観るのが良いような気がします。

 

映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』公式サイト


『ゴースト・イン・ザ・シェル』 BUILDING-JUMP 本編映像 4分45秒

 

日本のアニメーション映画として制作された『攻殻機動隊』の実写版なんだから、アニメ版と同じ声で観たい!…というのがもともとの動機でしたが、それ以外のところでも、「これは字幕版で観たら、違和感があったのでは?」と思えるところがいくつかありました。

 

ビートたけし演ずる荒巻が、電脳通信以外でもふつうに、日本語で話すので、これはさすがに会話のやりとりとして見ると違和感があったんじゃないか、

とか、

草薙素子が「少佐」でなく「メジャー(major)」と呼ばれるのには耐えられなかったんじゃないか、

とか、

そんな細かなことばかりなんですが、それでもやっぱり気になる人には気になると思うんです。

 

映画そのものについては、『ブレードランナー』の世界観発展系とも見えるようなSF的な都市の描写や、同作品の中で展開されて板「人間とは何か?機械とは何か?」という哲学的な問いが、『攻殻機動隊』に舞台を変えて展開されていて、とてもエキサイティングでした。

 

 
Blade Runner 30th Anniversary Trailer - YouTube

 

原作映画にあたる『攻殻機動隊』に比べて、少佐に感情がありすぎるという批判や、ホワイト・ウォッシュ批判など、いろいろな批判もあるようですが(例えば、こちら)、独立したひとつのSF映画としてはよくまとまっているし、現代のVFXを駆使した映像は非常に甘美ですらありました。

 

映像に関していえば、全体的に『攻殻機動隊』よりも、ビジュアル・ドラッグな感じがあり、どちらかというと、筒井康隆原作のアニメーション映画『パプリカ』を思い出しました。


映画『パプリカ』 予告編 - YouTube

 

全体的に、『攻殻機動隊』の米国実写版として観るより、『ブレードランナー』日本版(日本のSFアニメーションの舞台を借りた『ブレードランナー』?)みたいな印象を持つのは、私だけでなんでしょうか…?

 

そのような作品なので、『攻殻機動隊』として観ようとすると、「攻殻機動隊の世界観の肝がわかっていない!」と批判したくなることは必至です。

 

でも、おそらくこれは、『鉄腕アトム』からずっと、機械と人間との共存のありかたを考えてきた日本のSFアニメと、機械と人間との戦いや覇権争いの中で「人間とは何か」という問いを突き詰めようとしてきた、あるひとつのSF映画的な伝統との相違に由来するのかもしれません。

 

教員を目指す学生の皆さんに役立つかもしれない学習指導要領関係情報

新年度が始まってはや2週間。

ついに先週から、勤務校での授業「初等国語科教育法」もはじまりました。

f:id:kimisteva:20160630155800j:plain

 

すでにニュース等でご存じのお方もいらっしゃるように、今年3月末には、次期学習指導要領が公示されました

 

「ICT Connect 21」のサイトでは、いちはやく、次期学習指導要領に関連するリンクをまとめたページが作成され、多くの方がこちらのページを参照していたようでした。

ict-enews.net

ictconnect21.jp

 

「初等国語科教育法」の受講者の多くは、大学2年生。

文部科学省によって示されている「次期学習指導要領改定に関する今後のスケジュール」によれば、小学校学習指導要領は平成32(2020)年4月より実施、中学校学習指導要領は平成33(2021)年4月より実施です。

 

つまり、小学校教員を目指す学生たちは大学を出て働きはじめた途端に、中学校教員を目指す学生たちは働きはじめて1年目に、学校で扱うカリキュラムの基準が新学習指導要領に切り替わることになります。

 

第1回目のオリエンテーションで、学生たちにそんな話をしてみると(もちろん次期学習指導要領が公示されたことすら知らない学生が大半ですが)、やはり次期学習指導要領について意識している学生たちは、「これからどうなっていくんだろう?」「自分たちはこれからどんな準備をしたらいいんだろう?」と不安を持っているようです。

 

現時点では、わたしにも「これをやっておいたらいい!」という明確な答えを提示できる用意はありませんが、せめて、わたしが今、授業で向き合っている学生たちと同じ不安を抱えている学生たちに、自分が参照している情報そのものを示すことはできます。

 

不安を抱えている学生たちのにとっては、そもそも、次期学習指導要領を見る方法も、現行の学習指導要領とどこが異なるのかを知る方法も明らかでないようでした。

 

ですので、現時点で公開されている参照可能な情報を、以下に示しておきたいと思います。

 

(新)学習指導要領(本文)

★ 小学校学習指導要領(平成29年3月公示、本文のみ)文部科学省(PDF)

★ 中学校学習指導要領(平成29年3月公示、本文のみ)文部科学省(PDF)

 

(現)学習指導要領(本文)

★ 小学校学習指導要領(平成20年3月公示、ポイント、本文、解説等):文部科学省

★ 中学校学習指導要領(平成20年3月公示、ポイント、本文、解説等):文部科学省

 

新学習指導要領と旧学習指導要領の違い(新旧比較表)

★ 3月31日告示 新学習指導要領反映 新旧対照表一覧 | 学校図書株式会社

www.gakuto.co.jp

 

ポイントの解説(文部科学省の解説動画)

学習指導要領改訂に関しては、その方向性について平成28(2015)年10月~11月に、動画による解説が公開されています。

中央審議会での審議のまとめを踏まえて、方向性だけを示した動画なので、現在公示されている学習指導要領の内容に比べると具体的でない部分が多いですが、ざっくりと方向性をつかむときには参考になります。

 


学習指導要領改訂の方向性について:文部科学省

 


「審議のまとめ」解説① 「審議のまとめ」に至るこれまでの経緯と「社会 に開かれた教育課程」の実現

 


「審議のまとめ」解説② 何ができるようになるか-育成を目指す資質・能力-

高校生ウィーク アーカイ部「ひと・こと採集2017」

2017年4月9日。

早いもので本年度も水戸芸術館の「高校生ウィーク」が最終日を迎えるということで、今年も「高校生ウィーク」に参加された皆さまの生の声を、その場で「採集」すべく、カフェ会場(水戸芸術館現代美術ギャラリー内ワークショップ室)まで行ってきました。


f:id:kimisteva:20170411210754j:image

 

「高校生ウィーク アーカイ部」とは?

「高校生ウィーク」は、水戸芸術館現代美術センターの高校生無料招待月間から始まった、一連の教育プログラム。

高校生と同年代の人たちをメインターゲットにしたイベントやワークショップを開催していた期間を経て、2000年代後半からは、この1カ月の期間中、高校生や大学生を中心としたボランティア・スタッフによるギャラリー内カフェ(!)が開催されています。

 

私はちょうどカフェ・プログラムが始まって数年経った頃に、「高校生ウィーク」の存在を知り、初めは大学院生としてフィールドワーク調査のために、現在は、フィールドワーク調査で得たことなどを現場とつなげていく可能性を探るために、「高校生ウィーク」と関わり続けています。

 

「高校生ウィーク アーカイ部」は、私にとっては、フィールドワーク研究者としての私と、現場(フィールド)そのものをつなぐ試み。

「高校生ウィーク」30周年、カフェ・プログラム始動20周年を記念して始まった、記録と記憶のためのプロジェクト。

 

インタビューやアンケートなど、いろいろな「みんなの手と声で記録と記憶をつくる」活動を提案しながら、それを実現してきたわかですが、「高校生ウィーク」最終日に、現場での生の声を残そう!というこの試みも、「アーカイ部」メンバーの中から提案され、続けられてきたものです。

 

「開く」と「閉じる」のバランス

今年、はじめて「ひと・こと彩集」のインタビュアーを体験してみたのですが、はじめて体験してみて、わかることがたくさんありました。

 

今年度のカフェは、現代美術ギャラリーで行われている企画展「藤森照信ー自然を生かした建築と路上観察」との結びつきが強く、いつもはカフェ会場として区切られているところに、展覧会企画の一部である「たねや」の出張販売所があります。

また、その販売所が、水戸芸術館のテラスからも入れるようになっているため、外から一般客も来場できます。

 

「ひと・こと彩集」のインタビューの中では、このような状況で開催された「高校生ウィーク」について「いつもとちょっと違う」といったかたちで違和感が表明されることもありました。

 

社会人ボランティアの人たちや、たまたま来場していた「高校生ウィーク」OB・OGの人たちからは、「変わらないなぁ」「戻ってきた感じ」というような言葉のほうが多く聞かれたので、おそらく、「高校生ウィーク」に高校生や大学生として関わっている人たちのほうが、その“違い”を敏感に感じとっていたのかもしれません。

 

私は以前、「アーカイ部」のインタビューで、「高校生ウィーク」のこの場所のことを、「開かれつつ、閉じられつつある場所」

と表現しましたが、その意味でいえば、今年の「高校生ウィーク」は、“開く”方向にバランスが傾いていたのかもしれません。

 

閉じつつ開く。開きつつ閉じる。新しいコミュニティのかたち | 水戸芸術館 高校生ウィーク

 

 

しかし、“開く”方向にあったからこそできた、新たな試みのようなものもありました。

その象徴ともいえる存在が、この漆喰の作品。


f:id:kimisteva:20170411222824j:image

 

これは、「高校生ウィーク」カフェ会場が開かれたあと、会期の最後の方で制作されたようですが、カフェ会場の設えをみんなで作っていく…みんなの手で会場ができていくという試みは、初めての試みであったようです。

 

このような試みも、企画展との関係で行われていたことを思うと、あらためて“開く”ことでできる可能性を感じます。

 

“開く”ことと“閉じる”ことのバランスの取り方について、あらためて考えさせられます。

 

「高校生ウィーク」から離れたカフェのゆくえ


f:id:kimisteva:20170411223259j:image

 

“開かれた”カフェは、「高校生ウィーク」終了後も、展覧会会期終了まで継続して開かれるそうです。

 

「高校生ウィーク」が終わっても続く、同じ場所で開かれるカフェ。

それは、「高校生ウィーク」でカフェ・プログラムをはじめた初めの世代の人たちにとっては、まさに、当時、望んでも得られなかった当のものであるように思います。

その世代のOB・OGたちが、「高校生ウィーク」期間終了後のカフェをどのように思っているのか、そして、実際に「高校生ウィーク」から離れたカフェがどのようなものになるのか。

 

そのことに、今、とても興味があります。

少なくとも、今年、「高校生ウィーク」はいろいろな意味で、転換点を迎えていたように思います。

 

来年はついに、「アーカイ部」も5周年。

この機会に、この転換点がどのようなものだったのか、をみんなで考えられる企画ができるといいですね。