kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

「書く。部」によるギャラリーガイド~『チュートリアル:ポスト・ヒューマン時代の歩き方』と『GAME 超人類転生』

水戸芸術館現代美術センター「高校生ウィーク」の一環として開催した連続ワークショップ「書く。部」が、昨日、無事に終了いたしました。

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イベントの詳細については、こちらをご覧ください。

書く。部第1回 対話型鑑賞「ハロー・ワールド」展

書く。部第2回 編集会議「夢のギャラリーガイドを妄想する」

書く。部第3回 ギャラリーガイド公開制作

 

第1回対話型鑑賞「ハロー・『ハロー・ワールド』」では、チームごとにわかれて、現代美術ギャラリーで開催されている「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」を、みんなで自由におしゃべりしながら鑑賞。

おしゃべりする中で、出てきたキーワードを、カードにどんどん書いていきました。

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「高校生ウィーク」とはいえ、参加者は、中学生から社会人さまざま。

「ハロー・ワールド」展でテーマになっているような、「科学技術やコミュニケション・テクノロジーと人類との関係」についても、世代によって、その人が生きてきた文化によって、さまざまなイメージがあります。

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展示作品から、「昭和」的なサイエンス・フィクション(SF)の世界を感じたり、1990年代のテクノ・ミュージックにありそうなサイケデリック感を想起したり…「科学技術と人類」と一言で言っても、そこには、さまざまな意味がたちあがってきます

 

第2回目の編集会議「夢のギャラリーガイドを妄想する」では、第1回目のワークショップで立ち上がってきたキーワードをもとに、「ハロー・ワールド」展を、より面白く見るために、どんなギャラリーガイドがあったら面白いだろうか?と妄想を膨らませます。

 

個別の作品から、ギャラリーガイドのためのヒントを得てみたり、あるいは展覧会全体のイメージから、ギャラリーガイドのヒントを得てみたり、発想の仕方はさまざま。

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 参加者たちから出てきたアイディアを、ホワイトボードにまとめていきます。

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話し合いの結果、今回の「書く。部」では、2つのギャラリーガイドを作成することになりました。

 

ひとつは、展覧会会場に入る前に、誰もが手にとることができる①配布用ギャラリーガイド。

もうひとつは、展覧会途中に立ち寄れる高校生ウィークカフェ「YAP!」内で遊ぶことのできる②ゲーム型のギャラリーガイド。

 

第3回目のワークショップでは、具体的に、自分たちで妄想したギャラリーガイドをかたちにしていきました。

こちらは、①配布型ギャラリーガイドを作成するチーム!真剣です!

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②ゲーム型ギャラリーガイドを作成するチームは、ゲームをプレイしながら、ガイドのあり方を考えていくので、もうちょっとゆるやかな感じ。…楽しそう。

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テストプレイを終えて、カードに清書をして…
…ついに完成です!できた!

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こうして、ようやくギャラリーガイドが完成しました。

 

できあがったギャラリーガイドは、水戸芸術館現代美術ギャラリー内カフェ

YAP!」の「書く。部」ブースにて配布&設置中です!

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4月8日(日)までの「高校生ウィーク」期間中に皆さんに見ていただいたり、体験していただいたりできるようにしたいと思っています。

ぜひ、皆さま、水戸芸術館現代美術ギャラリー内カフェ「YAP!」までお越しくださいませ。

プレイフルな芸術と、遊びのアート化―「みっける365日展:アーティスと探す人生の1%」

本日、2018年2月24日、世田谷生活情報センター・生活工房にて、「みっける365日」展が始まりました。

www.setagaya-ldc.net

「みっける」は、現代美術作家の北川貴好さんが、2011年1月に、「朝から夜まで一日千枚を目標にデジタルカメラで写真を撮り、それを一コマ0.2秒の高速のスライドショーにして約4分の映像を遊びで作ったところから始まった」プロジェクト(「history」-30秒に一回みっける写真道場

www.mikkedojo.com

こちらの動画を見ていただくと、理解しやすいかもしれません。


30秒に一回見っける写真道場!

「みっける365日」展のホームページには、次のように説明されています。

切り取りたいものごととの関係性をつくろうとする、能動的な行為のこと。

これまで各地で展開してきた「みっける写真道場」は、1日に1,000枚写真を撮り高速スライドショーを作るプロジェクトです。

能動的に何かを「みっける」ことで現れた、あなたの思考や意思を映す写真――。

そんな写真の連なりを映像作品にして発表してきました。

この度の「みっける365日」は1日ではなく、1年。

つまり人生の1%以上を能動的に動き、おもしろくみっけるアクション! を積み重ねていくプロジェクトです。

 

「みっける」は、2015年頃から、それまでの「地域再発見」的な1day ワークショップの範疇を越えて、さまざまなアーティストたちとのコラボレーション・ワークを展開してきています。

「みっける365日」は、その中でも、市井の人たちが1年間撮りためた写真を使って、それを高速スライドショーなどのかたちで見せていくプロジェクト。今回は、世田谷という地域になんらかのかたちでかかわる人たちが、1年間、なんらかのかたちで撮りためた作品をもとに、アーティストたちのもと作品を制作するというプロジェクトになています。

わたしは、2016年に行われた「みっける日常ヨコハマ|だれかの365日とアーティスト」での試み―だれかが1年間スマホで撮りためた写真を素材にして、アーティストが「みっける」作品を制作するという試み―に、ある種の暴力性を感じていて、それを北川さんご本人に伝えていたこともあり、今回のプロジェクトがどのような展開になるのか、非常に楽しみにしていました。

 

…そんなこともあってか、今回、オープニング・イベント「『みっける』って、なんなん?」にゲストとしてお呼びいただきました。ありがとうございます。

 

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本日、展示会場では、まだ何人かの参加者の方々が、公開制作を続けられているような状況ではございましたが、そのような中、オープニング・トークイベントが開催されました。

わたしにとって、今回の大きな関心事は、「みっける365日」展で採用された、「ゼミ」システムが、アーティストと参加者とのどのようなコラボレーションを生み出すのか?ということ。そして、そのなかで「みっける」という仕組みがどのように意味づけられ、それが最終的に、どのような作品群に結実するのか?ということでした。

 

そんなわけで、トークイベントへの出演をご依頼いただいたことをきっかけに、森田幸江さんによる「みっける探偵FILE」のブログを熟読し、下記の記事を中心に、それぞれの「ゼミ」の特徴(?)として読み取れるものをスライド資料にしながら、トークを進めていくことにしました。

www.setagaya-ldc.net

上記ブログ記事のなかでは、各ゼミのその日の様子が、次のようなキーワードでまとめられています。

  • 北川貴好ゼミ──追加的
  • 青山悟ゼミ──魔法的
  • キュンチョメゼミ──二次元的
  • タノタイガゼミ──求心的

実際に、展示室に行って作品を見てみると、ここで書かれているような関係性がこう結実するのか…!と得心すもあり、逆に、疑問に思うこともあり…、トークイベントでは、そのあたりのことを、参加者の皆さんに、直接お伺いすることができました。

おかげで、今回の「みっける365日:アーティストと探す人生の1%」において見られた展開をもとに、あらためて、芸術でもあり遊びでもあるものとしての「みっける」のレンジが浮かびあがってきたように思います。

 

以下、展示について。

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「Tokyo Art Research Lab」初年度成果レポートに寄せて(2011年3月)

「東京アートポイント計画」のスタッフの方々より、インタビューの依頼を受け、アーツカウンシル東京ROOM302まで、行ってきました。

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わたしは、2009年度~2010年度、東京文化発信プロジェクト(公益財団法人東京都歴史文化財団)だった頃の、「東京アートポイント計画」立ち上げメンバーだったので、「東京アートポイント計画」草創期の話を聞かせてほしい、というご依頼でした。

 

とはいえ、かつての一緒にデスクを囲んでた大内さんも、坂本さんも、「東京アートポイント計画」で働いていらっしゃるし、アートプロジェクトのための評価のフレームを一緒に考えてきてくれた(と、わたしは思っている)佐藤李青さんもいらっしゃるので、わざわざわたしが出向いて話せることなんて、ほとんどなかったように思います。

 

そんなわけで、ただただ、楽しかっただけの時間で終わってしまいましたが、ひとつ、とてもうれしいことがありました。

 

「Tokyo Art Reserach Lab」の独自サイトへの移行や、東京アーツカウンシルHPへの移行の中で、消えてしまったと思っていた、わたしのテキストを、見つけていただくことができました。

このテキストは、香川秀太・青山征彦(2015)『越境する対話と学び:異質な人、組織、コミュニテイをつなぐ』(新曜社)に掲載されているわたしの論文「密猟されるオープンソースとしての「共通言語」─「Tokyo Art Research Lab」における実践のデザイン」 の考えのもとになったテキストであり、わたしが、「東京アートポイント計画」スタッフ時代に、自分自身の名前で書いた数少ないテキストのひとつだという意味で、とても大切なテキストなんです。

この他には、『アートプロジェクトを評価するために:評価ゼミ|レクチャーノート』に書いた1頁の原稿と、ブログ(笑)のみだったと思います。

 

  

 

そして、何よりも、2011年3月に起きた東日本大震災の直後に、自分自身の生活も、引っ越しの準備もままならない中、混乱を極める他のさまざまなコーディネーションをこなしつつ、その空き時間を見つけながら、「今、自分にできることは、自分が見てきたことを残すことだけだ」という必死の思いだけで書いた原稿なんです。

 

それが、こうして、またわたしの手元に戻ってきてくれたことが、うれしい。

そして、そのときのわたしの言葉を、こうして、皆さんにまた開いていけることが、うれしい。

 

もちろん、5年以上前のわたしは、研究者としても中途半端である上に、アートプロジェクトの世界についても、ようやく初級の言葉がわかり、なんとかコミュニケーションができるようになった…という段階なので、この原稿も、その未熟さをそのまま、反映している。

 

それでも、実践の現場に関わりながら、研究者としての視点を忘れないでいようとし続けたわたしの言葉には、意味がある、といまでも思う。

 

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動物たちとクリスマス~東武動物公園クリスマス・イベント~

お題「Merry Christmas!」

何年かぶりに、まったく仕事のない12月24日を確保できたので、「行ってみたい」と言いつつ行ったことのなかった東武動物公園に行ってきました。

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この時期の東武動物公園といえばウィンターイルミネーションが有名(?)らしく、「東武動物公園ウインターイルミネーション2017-2018:東武動物公園」の特設サイトができ、イルミネーション用の特別チケットが発売されたりしているようです。

 

たしかに、広大な敷地をあますところなく使ったライトアップ&イルミネーションは、なんともいえない味わいがあります。

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個人的には、やはり、遊園地のライトアップが好きですね。

あまり新しくない…見方によっては、多少、"廃墟"的な雰囲気すら感じられる遊園地なので、幻想的な雰囲気が味わえます。

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そして、クリスマスの日には、動物園エリアでもいろいろなイベントが開催されていたのに、東武動物公園のページを見たところ、まったくそんな情報が掲載されていなかったので、残念!

 

この日には、スペシャル・イベントとして、動物のパレードがあり…

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動物園の夜間開放ありで、動物園のクリスマス・イベントとしては見どころ満載でした。

 

こちらは、ライトアップされる皇帝ペンギン(王者の風格)。

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そしてこちらは、夜になってようやく動き出したビーバー(夜行性)。

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はじめて行ってみましたが、大人でも一日楽しめるなかなかステキなところでした。

最後に、今回一番ショックをあたえた、ジレンマのないヤマアラシ

ヤマアラシのジレンマ」とはいったい何だったのか…。

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思考によるリフレクション/身体によるリフレクション~上條晴夫『実践・教育技術リフレクション あすの授業がうまくいく〈ふり返り〉の技術(1)身体スキル』~

東北福祉大学の上條晴夫先生から、『実践・教育技術リフレクション あすの授業が上手くいく〈ふり返り〉の技術 (1) 身体スキル』(合同出版)をご恵投いただきました。

 

 

「あすの授業が上手くいく」という、教育技術のマニュアル本によくあるフレーズと、「リフレクション」「振り返り」という言葉が共存していることの奇妙さに、違和感を感じつつ、一方で、そういったディスコースの矛盾の中に、未来の可能性を見出してきた者の一人として強く興味を惹かれ、さっそく読んでみました。

 

すべてを読み通してみて、この書籍自体が、試行錯誤のプロセスの中にあるものだという印象を受けました。いただいた添書の中にも、本書が実験的な試みとして作られている旨が記載されていたけれども、まさに、ひとつの試行・実験として、世に出された本だという感じがします。

 

そんな本書の実験の中で、興味を惹かれたのが、読者自身に、自身の実践の「リフレクション」を促そうとする部分。

本書の中では、教師に求められる「身体スキル」を8つに分類し、それぞれのカテゴリーに分類された各スキル(例:「共犯関係をつくりだす」「フォローの技を磨く」など)に対して、

「思考でリフレクション!」

「身体でリフレクション!」

…という、2つのタイプの「リフレクション」が求められるようになっています。

 

面白いのは、後者の「身体でリフレクション!」があるというところ。

これまでも「振り返り」「リフレクション」の大切さは何度も繰り返されてきたけれども、そのときに重視されるのは、どちらかというと認知的な部分(「思考でリフレクション」)であったように思います。

それに対して、身体的な感覚や感情を用いて振り返ることを、このような教育技術マニュアル本の中に入れ込んできた(!)ところが面白いです。

私は以前、コルトハーヘン『教師教育学:理論と実践をつなぐリアリスティック・アプローチ』学文社)を読んだ際、「ALACTモデルにおける第2局面で有効な具体化のための質問」に、「あなたはどう感じたのですか?」「生徒たちはどう感じたのですか?」という、感情について振り返りが入っていることに、とても感銘を受けました。

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今回の本書の試みは、そのような感情についての振り返りを、教育技術マニュアル本の中に盛り込んでいこうとする試みなのかもしれません。

 

一方、せっかく「身体でリフレクション!」として紹介されているにも関わらず、認知的な振り返りにとどまるような問いかけになっている(と思われる)ものもけっこうあり、それが残念なところでもありました。

それは、もちろん、身体的・感情的にリフレクションをする、ということが、マニュアル化しにくいことの証でもあるように思います。そういう意味では、身体的・感情的にリフレクションをするための問いのありかたについて、本書から考えさせられる部分は、とてもたくさんありました。

 

たとえば、「一緒にゲームを楽しむ(スキル5-4)」(pp.72-73)の「身体でリフレクション!」は次のようなものです。

 

① あなたは、子どもと一緒に学ぶことを十分に楽しんでいますか?

② あなたは、子どもと一緒に学びの「フロー体験」をしていますか?

③ あなたは、子どもと一緒に学びの達成感を得ていますか?

 

これらの問いは、自分が授業のなかで感じていた自分の身体のありかた、感情の動きのようなものを見つめなおすきっかけとして機能してくれるように思うのです。

授業後に、自分を振り返ってみたときに、「今日の授業は、(子どもたちは楽しんでいたけど)私は完全にサーバント(servant)だったな」とか、「今日は、みんなで一緒に学んだー!って感じがしたな」とか、考えるときがあるけれど、まさにそれを引き出してくれる問いだという感じがする。

 

一方、その直前にある「チューニングをする(スキル5-3)」(pp.70-71)の「身体でリフレクション!」には、次のように書かれています。

 

① あなたは、子どものファッションに関心を向けていますか?

② あなたは、子どもの「エンタメ」行動に関心を向けていますか?

③ あなたは、子どもの人づき合いの仕方に関心を向けていますか?

 

たしかに、子どもの表現に「チューニング(同調・調律)」していくために、これらのようなことを普段から意識しておくことはとても大切だとは思うのですが、これらが「身体でリフレクション!」するための問いかけになっているだろうか…と考えると、少し疑問です。

「チューニングできた!」「チューニングがうまくいかない!」という感覚は、身体的・感情的な現象なので、その部分にフォーカスしないで、それがしやすくなるための条件の部分を問いかけても、「チューニング」の経験には迫れないような気がするのです。

逆にいえば、子どもたちのファッションや「エンタメ」行動、人付き合いの仕方に関心を向け続けていたとしても、〈いま・ここ〉の場で、チューニングしようと意識し、身体を意図的にオープンな状態にしないと、チューニングはできないのではないか?と思うのです。

 

上條先生には、今年の8月20日に、夏休みお試し版「即興×リフレクション体験会」を横浜国立大学にて開催していただいました。

 

aosenn.hatenablog.com

ameblo.jp

 

その時に、「即興×リフレクション」体験会での、リフレクションの際のポイントを実行委員の皆さんが考え、言語化されていたのですが、このようなポイントの提示のありかたが、身体的・感情的な振り返りを促していくためのひとつのヒントになるような気がしています。f:id:kimisteva:20170820094358j:plain

そのような意味では、同じく8月に行われた国際ワークショップ「パフォーマンス心理学の未来」を踏まえてこの日に行うことになった、「演じるリフレクション」が本書の中で紹介されているにもかかわらず(p.121)、この日に共有されていたこれら3つのリフレクションのポイントが触れられていなかったのは、ちょっぴり残念でした。

 

① 学び手としての自分の実感を語りましょう。

② 生まれたての言葉で語りましょう。

③ 一緒に意味を作ってみましょう。

 

「即興×リフレクション」体験会では、さまざまな「即興」や「リフレクション」の在り方が紹介されていましたが、その多様な「リフレクション」に通底するポイントとして、これら3つのポイントが導き出されていたのだとしたら、私たちはこれをもとに、「リフレクション」のありかたを考えていくことができるのではないか?とあらためて思いました。

 

たまたま噂で耳にしたのですが、現在ふたたび、「即興×リフレクション」のイベントの企画が動き出しているようです。

次回の開催も楽しみにしています!

アイデンティティのブリコラージュ―横浜吉田中学校DSTプロジェクト

お題「最近気になったニュース」

*1

 

2017年12月19日の東京新聞に、横浜吉田中学校でのDST(Digital Story Telling)プロジェクト記事が掲載されたとのお知らせをいただきました。

www.tokyo-np.co.jp

横浜吉田中DSTプロジェクトは、横浜国立大学で学んでいる留学生や日本人学生がサポーターとなり、横浜吉田中学校に在籍する外国につながる生徒たちの語りをともに生成し、彼らのストーリーを、映像作品(=デジタル・ストーリー)にしていくプロジェクト。

このプロジェクトの作品上映会が、12月9日に、横浜吉田中学校にて開催されたのですが…

このたび、私、幸運にも、その上映会に参加することができました!*2に、共同研究メンバーとして参加しているためです。上映会は広く公開しているわけではなく、学校の関係者やプロジェクト関係者、保護者の方のみをお呼びして小さなかたちで行われているようでした。))

 

DSTについては、これまでも、メディア・リテラシー教育の観点から関心をもっていたのですが、今年度に入って、小川明子(2016)『デジタル・ストーリーテリング:声なき想いに物語を』(リベルタ出版)を読んで、あらためて、自分自身の研究的な関心との接点を見出したり、

 

環境学習と創作支援グループ「耕す人々」で、DSTプロジェクトに取り組んでいる池田佳代さんによる研修会に参加させていただき、その「市民メディア」としての可能性について考えたり…といったことがあり、

tagayasuhitobito.jimdo.com

今回の横浜吉田中DSTプロジェクトでどのような作品が制作されるのか、上映会はどのような雰囲気の中で行われるのかに、とても関心がありました。

 

そんな期待を膨らませながら、当日、横浜吉田中学校に行ってみたわけですが…

上映会は、わたしが想像していたものとは、まったく異なっていました!

 

たとえば、東京新聞の記事中には、次のような上映作品のエピソードが紹介されています。

制作した映像は二分程度。大学生と一緒にストーリーを考え、それに合った写真を探したり、新たに撮影したりした。写真はタブレット端末に取り込み、生徒がナレーションを吹き込んだ。一月に中国福建省から来日した林盛(リンセイ)さん(14)は「最近あまり連絡を取れないから」と、中国に残る友人の写真で映像を作った。「日本語は苦手。でも大学生と交流でき、楽しかった」と笑顔だった。

この記事だけ読むと、林盛(リンセイ)さんが、自分がすでに持っていた友人の写真(とそれに関連した写真)を使って、デジタル・ストーリーを構成したように読めますよね。

わたしも、実際に、そういうイメージを持っていたんです。

ストーリーの語り手がすでに持っている写真や、語り手の思い出に関するモノを新たに撮影したものを中心に、デジタルストーリーが構成されるんだろう…って。

 

でも、全然、違いました。

いや、もちろん、そういう写真も使われてはいるのですが、それと同じくらい…いやそれ以上に、ポピュラー・カルチャーや、デジタル・カルチャー系の画像が多い!!

自分の写真、友達や家族の写真にしても、写真加工アプリ「SNOW」で撮影された、加工写真だし。

toyokeizai.net

東京新聞の記事にも紹介されていた、林盛(リンセイ)さんが、離れ離れになってしまった中国の友人との"距離感"を表すために使われた画像は、Google Mapだし。

おそらく著作権に配慮してのことだと思われますが、「いらすと屋」ワークが炸裂していたものもあり、個人的にはそれも面白かったです。

matome.naver.jp

そしてもちろん、ゲームや、マンガ、アニメ、アイドル(K-POP!)などの、ポピュラー・コンテンツもたくさんあり、作品上映後のディスカッションでは、参加者たちが、自分たちの「推し」を語り合う場面も…(むろん、わたしも参戦!)

 

そんな中学生たちのデジタルストーリーの作品群を見ていると、

彼らが、今、生きている日本の横浜という場所で、自分の「好き」を見つけたり、そこから自分の立ち位置を見出したり、自分のルーツや未来とのつながりを思い描いたりしている様子が、わたしにも、なんとなく伝わってくるようで、

「わかる、わかる!EXO、サイコーだよね!」などと、ウンウンうなづいたり、大笑いしたりしながら、とても幸せな時間を過ごしました。

 

最近読んだ、『ニュースウィーク日本版』の記事「「見た目外国人」の日本人親子を苦しめる誤解 」では、日本の「単一民族神話」のなかで、受け入れられない、外国にルーツをもつ子どもの現状が報告されていました。

また、『WIRED』の「多言語の家庭で育つということ:シリーズ「ことばとアイデンティティ」]の記事では、「自分らしく生きていくための言語」という小見出しで、次のような文章がありました。

 

自分らしく生きていくための言語


国籍もばらばら、家族のかたちもばらばらの4組。どこへ行っても「どこから来たの?」と問われる彼らの心中は計りしれない。どの家族も、家庭環境に応じていちばん見合う言語を家族間の共通言語にしている。また、家族間に言語の壁を生じさせないように、意識的にバイリンガルトリリンガルになっているようだ。彼らの証言からわかることは、幼いころから「国籍」と「言語」と「アイデンティティ」を考えざるをえない状況のなかで、言語とともにコミュニケーション能力を身につけ、日本にいながらその枠にとらわれずに生きているということだ。 

 

どちらも、今年12月に入ってから発表された記事です。

そして、横浜吉田中DSTプロジェクトの記事が、東京新聞に掲載されたのも、12月19日。

 

今年に入ってから、5月に行われた全国大学国語教育学会での公開講座「インクルーシブ教育とアクティブラーニング~多言語・多文化と授業づくり~」を皮切りに、多言語・多文化と関わる機会がますます多くなりました。

12月に入ってから目にするこれらの記事は、今後、ますますこの問題が大きな問題となっていくことを予測しているような気がします。

 

*1:f:id:kimisteva:20170830143105j:plain写真は、宮城県石巻市街地にあったグラフィティ

*2:私が上映会に参加できたのは、今年度から、横浜国立大学の学内プロジェクト「外国に繋がるこども・若者との共生社会教育研究モデル『ヨコハマ−神奈川モデル』の確立に向けたネットワーク構築」事業

相鉄グループ100周年「いま、むかし、みらい大相鉄展」

12月16日から12月25日まで、横浜高島屋で開催されていた、相鉄グループ100周年記念展「いま、むかし、みらい大相鉄展」に行ってきました。

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相鉄といえば、12月中旬に、相鉄・JR直通線の新駅名称「羽沢横浜国大」駅が発表され、話題になったばかり。

trafficnews.jp

「羽沢横浜国大」駅という名称だからなのか、なんなのか、完成イメージ図に、横浜国大生らしき人が描かれている!という噂があったりなかったり…

そんな未来の新駅を思い描きつつ、相鉄社員さんによる「いま、むかし、みらい」を合体させたジオラマ(!)を観に行ってきました。

www.sankei.com

www.tokyo-np.co.jp

 

ジオラマのみ撮影可能ということだったので、撮ってきた写真をいくつかご紹介します。

 

まずは上星川」の7号踏切

私たちが日常生活を行っている、その土の下で未来への胎動は始まっているのです。

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こちらは、「星川」駅の高架化工事ですね!

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これは…未来なんですかね。

未来にあると、そうニャンが人間界に侵食してくるよ、という警鐘なんでしょうか…恐ろしいですね。

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産経新聞の記事によると、終点の海老名駅周辺のジオラマが、まだ未完成で、「次は小田急線と並んで海老名駅に車両が入る光景を作成したい」とおっしゃっているとのこと。

海老名駅のどのようなシーンを、空想的(妄想的?)に表現してくださるのか、今からちょっと楽しみです。