kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

岡本太郎「太陽の塔」の著作権~こだま芸術祭「太陽の塔プロジェクト」~

埼玉県本庄市児玉郡エリアで開催されていた「こだま芸術祭」に行ってきました。

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kodama-art-festival.info

「こだま芸術祭」は、1969年に設立されたこだま青年会議所の50周年記念事業ということで、公益社団法人こだま青年会議所による主催。

 

これまでも、多くの地方自治体が主催となって、地方の芸術祭やアートプロジェクトが行われることは多々あったし、後援、協力のなどのかたちで、青年会議所などが名を連ねることもあったとは思うのですが、ついに、青年会議所の単独主催で芸術祭やアートプロジェクトが行われる時代になったのですね…!

 

そんな「こだま芸術祭」の中で、戸矢大輔「太陽の塔プロジェクト」と名付けられたプロジェクトが展開され(戸矢 大輔 | こだま芸術祭)、11/5より、本庄市にある上里建設駐車場敷地内にて、「太陽の塔」の模索が展示されるいういうことで、話題になっていたようです。

地元の新聞(上毛新聞)でも記事として取り上げられていました

www.jomo-news.co.jp

 

この記事によると、本作の制作者である戸矢大輔社長(上里建設の社長をなさっている方なんですね!)は、「大阪万博が開かれた1970年ごろの熱はすごい。美術には空間を変える力があり、この街の雰囲気を変えられればいい」という熱い思いで、本作の制作に着手されているようで、きっと、本作は、岡本太郎太陽の塔》へのオマージュという意味合いもあったのではないか、と思います。

 

その上で…、ほぼ職業病的に心配になってしまったのが、この作品の著作権処理に関してです。

新聞記事にも掲載されて話題になっているくらいの作品ですしきっとなんらかの対応はなさっているはず…だとしたら、どのようにしたらこのような作品の展示がOKになるのかしら、と思い、岡本太郎作品に関する著作権管理を行っている現代芸術アトリエに問い合わせてみたところ、次のようなご回答をいただきました。

 

弊社には主催者や製作者から相談や通知などは一切なく、本日お知らせをいただき初めて知りました。(2018/11/19 現代芸術アトリエからの回答)

 

…特に、許諾がとられていたわけではなかったんですね…。

 

そうだとすると、これは「著作物が自由に使える場合」に当てはまるということなんでしょうか。

www.bunka.go.jp

 

文化庁ホームページ内「著作物が自由に使える場合」を見てみると、著作権法第46条に「公開の美術の著作物等の利用」というのがあり、「屋外に設置された美術の著作物又は建築の著作物は,方法を問わず利用できる」とあります。

 

…おっ!

太陽の塔》が、美術作品か建築物かという議論はさておき、「方法を問わず利用できる」のであれば、やっぱりこれは、「自由に使える場合」に当たるのか?

 

と思って、最後までこの項目を読んでみると、「(若干の例外あり(注6))」という文字が目に入ります。

では、「若干の例外」とはいったいなんでしょうか?

 

(注6)公開の美術の著作物等の利用の例外
(1)彫刻を彫刻として増製し,又はそれを公衆に譲渡すること。
(2)建築の著作物を建築として複製し,又はそれを公衆に譲渡すること。
(3)屋外に恒常的に設置するために複製すること。
(4)もっぱら販売目的で美術の著作物を複製し,又はそれを販売すること。 

 

太陽の塔》が「彫刻」にあたるのか「建築」にあたるのかという議論はさておき(しつこくて、すみません)、「彫刻」であっても「建築」であっても、それを増製・複製することは、やはり、「自由に使える場合」には当てはまらない(=利用の例外) ようです。

 

そうだとすると、この「太陽の塔プロジェクト」は、どのようにして、著作権法上、展示可能になっているのか、がますます気になります。

著作権管理者の許可も得ておらず、著作権法上の自由利用の範囲外(少なくとも、文化庁のホームページなどで、少し調べただけなので、もっと他にも著作権に関する細かな自由利用可能条件があり、それが適用されるということなのかもしれませんが)にあるとしたら、この展示は、著作権法上、問題があると言わざるを得なくなってしまうのではないか、と思ってしまいます。

 

わたしは、この芸術祭の運営について詳しいことを知っているわけではないので、これ以上、何かをいうことはできないのですが。

アーティストをはじめとした人々の表現をあつかう「芸術祭」であればこそ、人々の表現を守る権利である著作権についても、大切に扱われているはずであってほしい…と祈らずにいられません。

図書館総合展ゲーム部フォーラム「図書館サービスとしての『ゲーム』活用」レポート

2018年10月30日~11月2日にかけて開催された「図書館総合展」の初日に、図書館総合展ゲーム部フォーラム「図書館サービスとしての『ゲーム』活用」が開催されるということで、フォーラムに参加してきました。

 

図書館における所蔵資料としてのゲームや、利用者サービスとしてのゲーム活用については、本フォーラムの翌日(11月1日)にJLA(日本図書館協会)から『図書館とゲーム:イベントから収集へ(JLA図書館実践シリーズ)』も発売され、いよいよ、図書館とゲームとの関係について、本格的な議論がはじまる土台が整ってきたな!という印象を持っています。

 

図書館総合展ゲーム部フォーラム「図書館サービスとしての『ゲーム』活用」については、すでにフォーラム参加者の方々が、その内容をツダってくださっていて、Togetter上でのまとめ(「図書館総合展フォーラム 図書館サービスとしての「ゲーム」活用(速報版)」)もすぐに公開され、どんなことが提案・議論されたのかについては、ある程度知ることができます。

 

また、11月14日は、公式サイトで、フォーラム当日の動画が公開されましたので、そちらを見れば、さらに詳しく議論の様子を見ることができます。


図書館サービスとしての「ゲーム」活用/第20回図書館総合展(2018)

 

ですので、いまさら、フォーラムの内容を報告するまでもないのですが、せっかくフォーラムに参加し、その場で自分なりに提案や議論の内容をまとめましたので、こちらのブログでも、当日の議論のメモをアップしておきたいと思います。

 

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ガメイちゃんにセンター取らせたい!~『図解ワイン1年生』

10月末から、新ルールが適用になり、「もはやボジョレーの時代は終わった。これからは日本ワインだ」というニュースもちらほら見かけるようになりました。

diamond.jp

 

そんななか、なぜか、今までまったく興味がなかったボジョレー・ヌーボーに興味を示し、今年はじめて(だと思う)ボジョレ―・ヌーボーを飲んでみたわたしです。

そのきっかけは、こちらの本、小久保尊・山田コロ『図解ワイン1年生』と出会ったこと。

 

  

 

 発売が2015年ですから、もう3年前。発売後、徐々にSNSなどで話題になっていった本とはいえ、話題になってからも久しいのですが、いまだにヨドバシカメラのワインコーナーに行くと、キャラクターが見られたりする『図解ワイン1年生』というワイン擬人化本があったりします。

 

『図解ワイン1年生』に出てくるワイン擬人化キャラクターは、「図解ワイン1年生 web」ですべて見ることができます。

昨年の記事ではありますが、「ボジョレ・ヌーボー企画」の記事もアップされていて、今年見てもそれなりに楽しめる不思議。

wine-highschool.com

 

『図解ワイン1年生』のワイン擬人化は、数ある擬人化ものの中でも、群を抜いていると思います。

わたしの中では、2.5次元ミュージカル化(!)までした鉄道擬人化マンガ『青春鉄道』にならぶ、

擬人化キャラクターの完成度の高さ!

関係性の読み込みの深さ(?)!

…があると思っています。

 

こちらの「ちょこっと紹介ムービー」では、シャルドネピノ・ノワールメルローリースリングカベルネ・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨンが、紹介されているので、この動画を見ると、少しその雰囲気が伝わるかもしれません。


図解ワイン一年生 ちょこっと紹介ムービー

 

ただ、この動画だと、関係性の読み込みまでは伝わりませんね…!

『図解ワイン1年生』の面白さは、どちらかというと、関係性の読み込みにあると思っています。

…というのは、ワインの面白いところは、ブドウの味だけでなく、テロワール(ブドウをとりまく自然環境)や、熟成のさせかたを含む、地域ごとの作り方…などなどによって、味がまったく変わってくるところにあるからです。

だから…、

関係性、めっちゃ重要!!

だから、(ストーリーとして)面白い!!

…わけです。

 

上記に紹介した動画で見られる関係性としては、リース・リングだけ、(ツンデレ感を出すために)ちょこっとだけそのあたりに触れられています。

ツンデレ」キャラのリース・リングですが、なぜ、「ツンデレ」かというと、辛口から甘口まですべてそろっている(!)上に、他のブドウにとりつくとそのブドウを死に至らしめるカビ(ボトリティス・シネレア)とカップリングされると(←妄想はいってきました)、すばらしく甘く美味しい(らしい)貴腐ワインができてしまう!という、デレ具合!

 

アルザスという場所は霧が発生しやすいところなのですが、そのせいでぶどうがカビやすくなっています。“ボトリティス・シネレア”というカビなんですが、他の品種だったらたいていこのカビで死にます。でもリースリングはこのカビがつくことによっとて、水分だけがすーっと抜かれていって、ワインにとっていい感じのぶどうになっちゃうんです。水分が抜けることによって、適量の糖分だけが残ってくれるからです。

また貴腐ワインは、“貴腐香”という独特の香りを放つことがあるそうです。「薫り立つ腐臭」だそうです。たまりませんね。そういう悩ましげな描写は大好きです。(『図解ワイン1年生』173ページ)

 

他の品種であれば、死に至る病でしかない”ボトリティス・シネレア”と、リースリングカップリングに、ロマンを感じるのはわたし(とこの作者)だけではないはず!!…と信じたい。

 

『図解ワイン1年生』では、こんな調子で、ワインの作りかたやテロワールや…さまざまなワインをめぐるストーリーが、キャラクターの中に折り込まれていて、キャラクター同士の関係性や、(ショートストーリーしかないですが)そこから生み出されるエピソードを創り出しているわけです。

 

…と、まぁ、そんな感じで、どはまりしていたら、アール・ヌーボーの解禁日間近になって、「ガメイちゃんが、1年間で唯一、センター取れる日!マジか!!」と沸き立ってしまい、近くの店にいく羽目になったのでした。

 

そんなふうに、ワインが擬人化されて見えてくると、こんなワインの試飲セットも違った見え方ができてくるように思います。

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アライでない(かもしれない)人たちとのLGBTセミナーの作り方

2018年11月14日に、わたしの勤務先の大学で、男女共同参画センター×障がい学生支援室主催「ワークライフバランスセミナー LGBT」という企画が開催されました。
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このタイトルを見ただけで、察しの良いかたは、「『ワークライフバランス』と『LGBT』???」「これは誰がどういう目的でやろうとしているものなの??」など、ある種の「違和感」や「うさんくささ」を感じられることと思います。

このバラバラな感じの意味するところは、非常に明確です。
単刀直入に言ってしまえば、「今まで、そんなこと考えたことがなかった」人たちが、これまでの枠組み(「男女共同参画」!「ワークライフバランス」!)を使って、なんとか、今、必要とされている課題に取り組もうとした結果、こんなことになってしまった、ということ。
わたしは、とにもかくにも、何か自分たちにできることを始めてみよう!と、このような「無理やり感」あふれる企画を考え実現した方々に、大いなる敬意を評します。
ゼロからパーフェクトなものを創ることを望んで、いつまでも「何もできないよね」と、外から言い続けているよりは、はるかにましだと思います。

わたしは、横浜国立大学LGBTQサークル「クーピー」の顧問をしていたこともあり、この企画が立ち上がった段階で、お声がけをいただき、セミナー当日まで、企画運営面でのご協力をしてまいりました。
twitter.com

企画が立ち上がり、お声がけいただいたのが、7月。
それから企画実施までに、4ヵ月近くの期間があったわけですが、ある日突然、「LGBTに関する啓発セミナーを開催してほしい」という話があり、何がなんだかわからぬまま、セミナーを企画運営することになってしまった(!)という担当者の方をサポートする中で、いろいろ気づいたことがありました。

このような事態は、これから先、様々な場所で起こっていくだろう、と思います。

LGBTに関する啓発セミナーをやろう」と、学校や企業などの組織が決定し、なんとなく担当すべき部署を割り当て、その担当者に、セミナーの企画を命じる。
担当者が、たまたま、LGBT-Allyであるという場合もあるかもしれませんが、おそらく、そうでないことも多いでしょう。

セクシュアル・マイノリティの当事者と”出会った”経験もなく、自分が実際に会ったときにどういう感情を抱くのかわからない…。
自分が「アライ(Ally)」(=「alliance(同盟)」を表すことばで、セクシュアル・マイノリティの人たちを支え、応援する人たち)であるかどうかわからないし、そんなこと考えたこともない。実際に当事者と会ってみたら、ホモフォビア(同性愛嫌悪)の感情が起きてしまい、アライになろうという気持ちを起こせないかもしれない…。
www.nhk.or.jp

そういう人たちが、「LGBTに関する啓発セミナー」を開催しなければならない事態が、ますます増えていくということです。

世間になんとなく蔓延するホモフォビアが、見て見ぬふりをされながら放置されたまま、社会の要請として、具体的にいえば行政的・経済的な要請として、「LGBTインクルーシブな環境」づくりが求められた結果が、こういうことなのだろう、と思います。

そのような、アライでない(かもしれない)担当者がつくることになったセミナーの企画運営をサポートすることになったわけですが、結果的に、今回のセミナーの内容な次のようなかたちになりました。

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今回のような状況で開催されるセミナーの場合、当事者に直接話をしてもらう機会を設けることは、かなりリスキーです。

担当者が、突然、ホモフォビアを発症する危険性がありますし、そうでなくても、対応の仕方がわからなくて戸惑ってしまう、フリーズしてしまうということは十分ありえます。
さらにいえば、セミナーの受講者はさらに「読めない」ので、正直、初のセミナーには、当事者を呼ばない方が良いのではないか…とすら思います。

今回は、たまたま、すばらしく理解のある学生・OBがいて、快く協力を申し出てくれたので、当事者によるライフヒストリーを語る機会を設けられましたが、そういう幸せな状況がなければ、こんな危険な状況で、見知らぬ人たち相手にカミングアウトを強制することは、来ていただく当事者にとってリスクが高すぎると思います。
セクシュアル・マイノリティ当事者がカミングアウトしなくても成り立つような教育プログラムの開発について、私たちは、もっともっと真剣に取り組まなければいけない、と、あらためて実感しました。

今回、担当者の方が、「自分には知らないことばかりでとても勉強になった」とおっしゃってくださり、セミナー当日にも利用した動画教材は、下記の2つです。

(1)総務省人権啓発ビデオ「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」(活用の手引きはこちら(PDF))

人権啓発ビデオ 「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」

(2)NPO法人Re:Bit LGBT教材 中学校向け「Ally Teacher's tool kit」より動画「【中学校版】多様な性ってなんだろう?」

【中学校版】多様な性ってなんだろう?

上記2つの動画から、中学生が体験する困難に関するエピソード(ミニドラマ)、社会人が体験する困難に関するエピソード(ミニドラマ)を総務省の人権開発ビデオから、大学生がライフヒストリーとして語る困難や周囲からの支援に関するエピソードを、Re:Bitの動画教材から抜粋してご紹介することになりました。

なお、はじめの5分間(!)だけで開設する「基礎知識」編ですが、これについては、受講者全員にテキストを配布し、詳しくはあとで読んでいただくかたちにしました。
このとき、使用したのは、新設チームC企画の皆さんが、奈良教職員組合とのコラボレーションで制作した『教職員のためのセクシュアルマイノリティ・サポートブック(第3版)』なのですが、以前は、こちらの新設チームC企画のサイトから、PDFがダウンロードできたはずなのに、今、見たらできなくなってしまっていました…!(泣)

おそらく、『教職員のためのセクシュアルマイノリティ・サポートブック』(第4版)が発行されたためと思われますが、第4版は、第3版と比べて、内容がかなり固めになった印象で、はじめて紹介する人たちに向けてのテキストとしてはちょっと伝わりにくい印象があるので、これとは別に、第3版を復活させていただきたいです…。

教職員のためのセクシュアル・マイノリティサポートブック | 奈良教職員組合

今回、テキストの中からご紹介したポイントは、以下の4つです。

(1)「性(sexuality)」の4つの軸(身体の性、心の性、社会的な性、性的指向性
(2)「性」は、4軸のグラデュエーションのどこかの領域同士をつなぎあわせて見えてくる、無限に広がる多様なものであること
(3)「カミングアウト」と「アウティング」は異なること。「カミングアウト」を受けたからといって、自分がその知った情報をだれにも言ってよいということにはならないこと。
(4)学校において直面する困難や支援のポイント(テキストを参照)

このうち、もっとも大切なのは、(2)における「アウティング」の説明だったと思います。
特に、今回のセミナーでは、当事者が自分自身のライフヒストリーを語るシーンがありましたので、ここで聞いたライフヒストリーについての話を、第三者と共有する際にも、当事者の意思を尊重する必要がある、という話をしました。
たまたま、今回お呼びしたゲストの2人のうち1人は、他者との共有がOK、もうひとりはNGというスタンスでしたので、この話についてリアリティをもって聞いていただけたのは良かったと思っています。

なお、セミナーのタイトルに「LGBT」はついていましたが、「Lは…、Gは…」みたいな説明はしませんでした。ゲストとして来てもらった当事者を、これらのカテゴリーにあてはめて紹介することもしませんでした。
個人的に、「このかたは、Tです」とか「この人は、Gです」というかたちで、カテゴリー化して紹介することは、変な「代表性」「典型性」を付与してしまう気がして、気がすすまないのです。

あとは、ふたりのゲストが、自分自身のライフヒストリーの中で、もし「自分は、『T』です」というようなことをいうようであればそれはお任せしよう、と思っていました。
ひとりの方は、ライフヒストリーの一部(カミングアウトのエピソード)の中で触れていましたが、もうひとりのゲストは不明なままだったので、受講者の方の中には、モヤッとしたかたもいたかもしれないですね。

でも、それでいいんだと思います。
カテゴリー化して理解してもらいたいわけでは、ないですからね。
グループごとに質問&ディスカッションの時間にも、それとなく、「聞きたければ、聞いてくださいね」と言ってみたのですが、どなたからもそのような質問はありませんでした。

そのような、わたしの思いを汲んでくれたのか、最後のまとめの言葉のなかで、本企画の主催にかかわる理事の方から、「Lとか、Gとか、Bとか、Tではなく、性は多様であるということ。そのことについて理解を深めていく、記念すべきはじめの日であった」というような趣旨のコメントがあり、少し、救われたような気持ちになりました。

現在、オンライン上には、LGBTインクルーシブな社会をつくるためのさまざまなリソースが存在しています。
それをいかに用い、教育プログラムを作っていくのか。
当事者にリスクを負わせることなく、性の多用性についての理解を深められるような教育プログラムを創ることは、果たしてどの程度可能なのか。

これから考えていくべきことは、まだまだたくさんありそうです。

【TGS2018】教育や社会とかかわるゲームを求めて:インディーゲームコーナー

東京ゲームショウ2018」におけるゲーム・レポート、第3段。

 

東京ゲームショウ2018」の見どころのひとつしても紹介されることのある「インディーゲーム」コーナー。実際、東京ゲームショウのビジネスデー最終日には「センス・オブ・ワンダーナイト」というインディーゲームの祭典が行われたりもしていて、主催者側でも、インディーゲームを重要なものとして位置付けていることがわかる。

gamebiz.jp

今年の「センス・オブ・ワンダーナイト」の受賞作品もすでにオンライン上でレポートされているようだ。

jp.ign.com

そんなわけで、海外のゲームサイトでは、早くから「東京ゲームショウ2018におけるベスト・インディーゲーム8(The 8 best indie games from Tokyo Game Show 2018)」という記事も公開されていたり、

こちらの記事では、審査を通過してデモ展示されている「インディーゲームA」と、「センス・オブ・ワンダー」ノミネート作品のリストが示されている。

Check out the Indie Games Featured at Tokyo Game Show 2018 | The Reimaru Files

 

…海外からの視点と、日本からの視点の違いを感じますね。

 

わたしは、以前から、教育や社会とゲームとの関わりに関心があるので、その視点から、インディーゲームコーナーを巡っていたわけだが、そんなわたしから見て、面白かったゲームをいくつかご紹介。

 

1.現代ノルウェー史の闇を扱った育成シミュレーションゲーム『マイ・チャイルド:レーベンスボルン』

以前、「4gamer.net」で記事を見て気になっていた、ノルウェーの現代史の闇を扱ったインディーゲーム「マイ・チャイルド:レーベンスボルン。このゲーム、「東京ゲームショウ2018」にあわせて日本語版が公開され、日本でもiOSおよびAndroidでプレイできるようになったようだ。

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www.4gamer.net

www.4gamer.net

詳しくは、4gamers.netのこれらの記事を見ていただければと思いますが、このゲーム、ナチスによる人口増加計画「レーベンスボルン(生命の泉)」の問題を取り扱っている。

人の命を奪うことによる「純血」計画が、ホロコーストであるとしたら、レーベンスボルンはそれとは対照的なかたちでの「純血」計画であるといるかもしれません。

ノルウェーでは、戦後、ナチス党員とノルウェー人との間に生まれたの子どもたちを「レーベンスボルン」と呼び、公然とこの子どもたちを差別の対象としてきた歴史がある。

『マイ・チャイルド』は、この「レーベンスボルン」と呼ばれ、差別され、学校で公然といじめられてくる子どもたちの親となって、この子どもたちを育てていく「育成ゲーム」(!)。

子どもは、学校から帰ってくるたびに、傷だらけになっていて、自分がなんでこんな目に遭わなければいけないのかがわからずに落ち込んでいて、「お父さんのこと、教えてくれる?」と語りかけてくる。

プレイヤーは、「お父さんのこと」をどう伝えたらいいのか逡巡しながら、ひとつひとつ答えるべきセリフを選択したり、子どもへの働きかけかたを選んでいきながら、「わたしの子ども(マイ・チャイルド)」との関係を作っていく。

そんなシミュレーション・ゲーム。

 

「感情を揺さぶられる」と評されているけれど、まさに「揺さぶられる」という言い方がぴったりくるような経験ができるゲームで、何分間か、デモ・プレイを体験しただけのわたしでも、いまだに、「わたしの子ども」がその後どうだったのか、わたしはどうすべきだったのか、気になって仕方がない。

 

幸いなことに、直接、開発者らしきスタッフの方と話をすることができたので、どうしてこのようなゲームを制作したのか聞いてみたところ、「レーベンスボルン」と呼ばれた子どもたちが現在、70代になっており、この歴史を語り継がねばならないとの思いから、ゲームアプリを開発したのだというお話を聞くことができた。

 

www.mychildlebensborn.com

 

以下、時間がなくてプレイはできなかったのだが、インディーコーナーを歩いていて、「これは!」と思ったゲームを、紹介記事とともにご紹介したい。

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【TGS2018】ゲームスクールコーナーに行こう!

今回、東京ゲームショウに初参戦して、わかったことがたくさんありました。

 

東京ゲームショウについては、毎年、マスコミでも多く取り上げられているのですが、ニュースの焦点は、ほぼ来場者数の多さと、コンパニオン&コスプレイヤーのレポ。

なんだこれ、と思って、毎日新聞の「東京ゲームショウ」特集ページまでたどってみたら、ほぼコスプレイヤー・レポでした。

そんなわけで、試遊ソフトのおすすめが書かれている記事を見つけるのが、大変なくらいです。「東京ゲームショウ」とは名ばかりで、もしかしたら、だれもゲームをプレイすることには関心がないんじゃないかと思ってしまいます。

 

そういう事情もあって、「ゲームは好きだけど、東京ゲームショウには興味がない」という状況が長らく続いておりました。…きっと、そういう人は、わたしだけではないと思う。

 

…でも、それは一面的な見方でした。

 

幕張メッセ貸し切りで行う、日本最大…いや、アジア最大のゲーム・イベントです。大手ブースの新作にはほとんど興味を持てないわたしの心をグッとつかんでくれるインディーズ・ゲームたちもあれば、「誰がそんなものを作れといったんだ!」とつっこみたくなるくらいよくわからないものを作っている、エッジのきいたゲーム制作者たちもたくさんいます。

こちらのニフティニュースは、「2分でわかる「東京ゲームショウ2018」に見どころ」というタイトルで、最後にインディーゲームコーナーは曲者揃い!? 」とかいう記事をもってきちゃうあたり、なかなか、ステキです。

 

そんなわたしにとって、面白かったコーナーのひとつが、自分自身も出展していた「ゲームスクールコーナー」でした。

 

「ゲームスクールコーナー」は、その名のとおり、ゲームについて学ぶことのできる専門学校や大学(学部・学科)が広報のために来ているようなブースも多いので、多くの方々はスルーしていってしまいます。

だけど、

「ゲームスクールコーナー」は、それだけじゃない!

専門学校や大学による研究成果展示のためのブースもあって、そちらはむしろ、ゲームの未来を感じさせてくれたり、奇抜なアイデアを感じさせてくれたりするので、「体験しない手はない!」というかんじです。

日系トレンディのページでも記事になっていたようなので、そちらでは触れられていないおすすめをご紹介したいと思います。

trendy.nikkeibp.co.jp

 

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【TGS2018】ゲームアプリ「図書館ガイダンス リバードリィ」、東京ゲームショウに出展!

東京ゲームショウ2018」に行ってきました!

…というか、「常磐大学ゲーミフィケーション研究会」のメンバーとして、ゲームスクールコーナーで出展してきました!

www.tokiwa.ac.jp

f:id:kimisteva:20180925191239j:plainwww.4gamer.net

 

今回、東京ゲームショウに出展するに至った主な理由は、なんといっても、現在、Google Playで無料ダウンロードできるゲーム・アプリ「図書館ガイダンス リバードリィ(Libardry app)」をいろいろな方に知ってもらい、実際にプレイしていただくためです。

apkpure.com

 このアプリ、以前制作したカードゲーム版をもとに、アプリを制作したものです。

カード版からアプリ版を制作した経緯などについては、Entertainment & Computing2017での発表(ショートノート)(PDF)にてご説明しておりますので、よろしければ、こちらご参照くださいませ。

★寺島哲平・名城邦孝・ 関敦央・ 宮崎雅幸・石田喜美(2017.9)「大学図書館の利用方法を学び「大喜利」型ゲーム・コンテンツ「Libardry CARD」:カードゲームからゲームアプリへ」(「エンタテインメントコンピューティングシンポジウム(EC2017)」2017 年 9 月)

 

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