kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

トライアルワークショップ『パフォーマンスに基づく新しい教員研修の方法』

「パフォーマンス心理学研究会」による12月の研究会(ワークショップ)に参加してきました。

「トライアルワークショップ『パフォーマンスに基づく新しい教員研修の方法』」というタイトルで、講師は、宮本万里さん。

 

3時間のワークショップでしたが、あっという間に終了時間になってしまいました。

「パフォーマンスに基づく新しい教員研修の方法」というタイトルで、しかも、下記のような紹介で集まってきた方々だったせいか、パフォーマンスへの意欲がかなり高い状態で、始まったワークショップだったなぁ、という印象です。

 

トライアルワークショップ
『パフォーマンスに基づく新しい教員研修の方法』
日時:2018年12月16日(日曜日)
   14時から17時まで。
会場:筑波大学東京キャンパス


講師:宮本万里さん(Creative Communication Company, New York)


内容:プロジェクト研究3『演劇的表現やパフォーマンスを通した学習と学習環境の共創』の3つのミッション(①附属学校群の教育方法の革新、②教員のマインドの改革、③危機管理に関する新しい研修方法の開発)のうちの②のためのトライアルワークショップを試みる。


 プロジェクト3の内のミッション③について:教員のバーンアウトや新しいことにチャレンジできない固定化したマインド等の問題が指摘されて久しい。本プロジェクトでは、教員、とくにベテランといわゆる年齢となり、これまでのやり方から抜け出すことのできず、相変わらず体罰や暴力的な指導を繰り返す教員が少なくない。

インプロパフォーマンスの経験を通して、このような固定化してしまった教員に対して、新しいことに向かって再イニシエーションの支援を行うような、新しい研修プログラムを開拓する。

 

 

今回行ったアクティビティは、下記のとおり:

 

  1.  ポーズで自己紹介
  2.  相手の名前を呼ぶ
  3.  「GO!」
  4.  赤いボール
  5.  「何してるの?」
  6.  単語あてゲーム①(名詞)
  7.  単語あてゲーム②(名詞+形容詞)
  8.  2人組でフリーシーン
  9.  「あけて/あけたくない」のスキットに基づくシーンづくり

 

ワークショップでは、受付時に、「自分の呼ばれたい名前」をテープに書いて、わかりやすい位置に貼るように求められます。

「1 ポーズで自己紹介」では、その名札テープにかかれた名前を言いながら、「自分がどこから来たのか?」にまつわるポーズをとりました。

わたしは、その日、某オリンピック・サーフィン会場予定地から上京して、ワークショップに参加していたので、サーフィンのポーズを取ったつもりだったのですが、まったく伝わらなくて残念でした(^^;)

 

次に、1 で示された名前とポーズを使って、「2 相手の名前を呼ぶ」アクティビティ。

自分のポーズを取りながら自分の名前を言い、次に、ターンを受け渡したい相手のポーズを取りながら、相手の名前を呼びます。

1 で、印象的なポーズを取られていた方がやたらとターンを回される羽目になります。……仕方ない(笑)

 

「3 『GO!』」は、「GO!」と言って相手に近づきながら、相手をその場所から移動させ、自分がその相手のいた場所に入るというゲーム。

相手の名前を呼んだりするわけではないので、相手に向けて「GO!」を届けること、相手との間のテンションを保ちつつ近づいていくことがポイントとなります。

 

「4 赤いボール」は、参加者全員で輪になって、イメージの「赤いボール」を渡していくゲーム。渡す人は、「赤いボール」といって、イメージのボールを手渡し、それを受け取った人は、イメージ上のボールを受け取ったあと、「赤いボール。ありがとう」と言います。

今回のワークショップでは、「緑のボール(Green ball)」「緑のボール。ありがとう(Green ball. Thank you!」と受け渡すアクティビティーから始まり、「大きなスイカ(Big Water mellon)」「眠っている赤ちゃん(Sleeping baby)」など、さまざまなものが受け渡されていきました。

 

「5  何してるの?」は、『インプロをすべての教室へ』にも掲載されているアクティビティー

2人組でペアになって、1人が何かのアクション(例:料理をする)をしているところに、もう1人が「何してるの?」と声をかけ、アクションをしていた人は、自分がしているのとはまったく異なるアクションを言います(例: 「水泳してるの!」)。言われた方のペアは、相手が言った内容のアクション(この例でいえば、水泳)をはじめ、それを交互に行っていくというゲームです。

インプロをすべての教室へ 学びを革新する即興ゲーム・ガイド

インプロをすべての教室へ 学びを革新する即興ゲーム・ガイド

 

今回のワークショップでは、宮本さんから、「自分が言ったことに対して、相手がどんなアクションをするのか。自分のイメージとの違いを感じてみて!」という声かけがありました。

確かに、「掃除をする」でも、雑巾がけあり、窓拭きあり、掃除機あり…とそのイメージはさまざまですよね。

個人的には、たまたま、その声かけがあったあとにペアになった方が、「焼酎飲んでるの!」「日本酒飲んでるの!」とおっしゃって、わたしなりの焼酎飲んでる像と、日本酒飲んでる像を演じわけてみたのですが、自分がそんなことができることにビックリでした。

 

次の「 言葉あて」(6~7)では、1人ひとつずつ、名詞のみのカードと、形容詞+名詞のカードが配られます。その言葉そのものを言わずに、相手になんもか、自分の持っているカードの言葉を当てさせるゲームです。

 

これらのゲームを経て、後半は、ペアによるシーンづくり。

ひとつ目の「8 フリーシーン」は、脚本なし。もうひとつ最後に行われたシーンづくりでは、「開けてほしい/開けたくない」の対立がある短いスキットが示され、それに基づくシーンづくりを行いました。

 

終了後の交流会で、宮本さんにお伺いしたところ、今回のワークショップでは、「自分が用いている、この言葉のイメージは、相手に伝わるのだろうか?」ということについて振り返り、考えていくための時間を創りだすことをねらっていたとのこと。

 

ニューヨークで日本語学習のためのインプロ&パフォーマンスによる学びの場を展開して、日本で英語教育のためのインプロ&パフォーマンスによる学びの場を展開してきた宮本さんが、「言葉のイメージ」に対してそのようなかたちでインプロ・ゲームやパフォーマンスを用いられていることが、興味深かったです。

 

留学生対象の日本語教育を担当されている先生とともに、日本語初級クラス受講生と教員養成課程の学生との共同ワークショップを行って2年目になりますが、そのワークショップでは、むしろ、「言葉がなくても通じちゃった!」とか「ミス・コミュニケーションって面白い!」みたいな感覚を創出するこもをねらいにしてきました。

そういう意味では、言葉やコミュニケーションの学びと、インプロやパフォーマンスとの関係について、また違ったアプローチを見せていただいた感じがします。

絶望的な社会と、ロバストなわたしたち~「マイ・チャイルド: レーベンスボルン」

東京ゲームショウ2018のインディーズ・ゲーム・コーナーで出会った、「マイ・チャイルド: レーベンスボルン」をついにクリアしました。

 

kimilab.hateblo.jp

 

このゲームについては、すでにいろいろなところで、レビューも出ているようなので、どのようなゲーム・アプリなのかについては、そちらをご参照ください。

マイ・チャイルド・レーベンスボルンのレビューと序盤攻略 - アプリゲット

 

この作品、「東京ゲームショウ2018」で公開された当初やそれ以前は、「ノルウェー現代史の闇」を扱った作品であることがクローズアップされていたように記憶しています。

たとえば、この記事だと、「レーベンスボルン」についての詳しい解説とともに、このゲームが「ノルウェー現代史の闇」を扱っており、それを後世に伝えるために開発されたゲーム・アプリであることが紹介されています。

www.4gamer.net

 

しかし、東京ゲームショウ2018にあわせた日本語版リリースのあと、実際にこのゲームを日本語でプレイする人々も多くなり、日本のゲーム・カルチャーのなかで紹介されていくなかで、かなりこのゲームの紹介のされ方が変わってきたなぁ…という印象を持っています。

こちらは、上と同じ、4game.netの記事のはずなのですが、「ほぼ(日刊)スマホゲーム通信」として掲載される記事だけあって、「スマホゲーム・レビュー」の語り口や用語法にあわせて、このゲームが語られているのが、面白いです。

www.4gamer.net

 

「シリアスなアドベンチャー…!

なるほど、ゲーム・ジャンルとしていえばそうだよね、と言わざるを得ない、シンプルな紹介。これを見て、「そ…そうか」となってしまうのは、わたしだけなのでしょうか。

しかし逆に、「スマホ・ゲーム」という語り口から見えてくること、考えさせられることもあります。わたしが考えさせられたのは、この記事の最後にある、シリアスな作品だが,ゲームバランスは比較的マイルドなので,当時の歴史などに興味を持ったらぜひプレイしてほしい」という一文。

 

「ゲームバランスは比較的マイルド」

「ゲームバランスは比較的マイルド」

「ゲームバランスは比較的マイルド」


f:id:kimisteva:20181128143004j:image

 

こちらは、各章をクリアしたあとに出てくる画面のひとつなのですが、さすがに「『マイルド』とはなにか」と言いたくなってしまいます。

 たしかに、わたしはその章をクリアしたわけですし、この記事を書いている時点では、全章をクリアして、とりあえず、バッド・エンドにはならなかった(とてもじゃないけど、ハッピー・エンドとはいえない…というか、ハッピー・エンドになんてなれないのではないかと思います)わけですが、いくら章をクリアしても、全章クリアしてエンディングにたどり着いても、自分が「できなかったこと」「やるべきでなかったこと」はいつまで経っても残り続けます

 

たとえば、上の画面で示した章をクリアしたとき、わたしは、「あなたを含む55.5%の人が、ドイツ語について注意しませんでした」というメッセージを見て、かなりのショックを受けました。

いくら腐っても、端くれでも国語教育研究者ですので、「クラウス」(ゲームに出てくるわたしの子ども(=マイ・チャイルド))の母語であるドイツ語を「使わないほうが良い」と注意しなかったことについて、わたしは、後悔していません。

でも、(おそらく)そのせいで、彼は、その後、学校でいじめに遭ったし、唯一の友達も彼をいじめる側にまわってしまいました。

多くの人たちはそれがわかっていて、そしてゲームプレイヤーとして「正しい」選択をして、彼のドイツ語を注意したんだと思います。

でも、いくら腐っても端くれでも…以下、略!

いくらゲームでも、フィクションでも、自分の子どもに、「母語を使うな」とは言えないです。それがいくら、ゲーム上「正しい」戦略でも。

でも、ゲーム上、有利な戦略をしなかったせいで、きっと、「バッド・シナリオ」には近づいてしまったんだ…と、この画面を見て気付き、ショックを受けたわけです。

 

そんな葛藤を抱えつつ、なんとかゲームを全章クリアしたタイミングで、上記の記事に出会い、この記事のなかで、「ゲームバランスは比較的マイルド」という言葉で、このゲームが紹介されていることを知りました。

 

たしかに「マイルド」なんでしょう。…このゲームが、「マイルド」でなかったら、わたしのような人間は、バッド・エンドめがけてまっしぐらだったと思います。きっと。

 

そして、レーベンスボルンの子どもたちの実話に基づいて作られたこのゲームの、ゲームバランスが「マイルド」であることは、もうひとつ、重要なことを教えてくれている気がします。

それは、どんなに絶望的な社会のなかに置かれていたとしても、わたしたち人間は、そのなかをたくましく生き抜いていくことができるということ。

少なくとも、ゲームバランスが「マイルド」になるくらいには、わたしたち人間って、絶望的な社会を生き抜くロバスト(頑健)な生き物なのではないか。

…そんなことを思いました。

 

各章をクリアするごとに出てくる上記のような画面は、プレイヤーであるわたし自身の価値観を映し出す「鏡」にもなっていて、それが、大きく心を揺さぶられるところでもあります。

ちなみに上の画像だと、わたしは「楽観的」46%、「寛容」46%ということになってます。「厳しい」は7%。

この結果が、自分自身の教育者としての信念や価値観すらも映し出している気がして…、なんだかそのことにも考えさせられました。

 

『マイ・チャイルド:レーベンスボルン』は、300円~400円くらいで購入できるのですが、この金額でこの体験ができるのであれば、ぜひ体験してみたほうが良いのでは、と思います。

ただし、本当に、感情を大きく揺さぶられますし、わたしの知り合いの中にも、わたしがプレイしているのを見て「これは絶対無理!」と言った人もいるので、Android端末をお持ちのかたは、まずはお試し版をプレイしてみてから考えたほうが良いかもしれません。

 

 

 

図書館総合展ゲーム部フォーラム「図書館サービスとしての『ゲーム』活用」レポート

2018年10月30日~11月2日にかけて開催された「図書館総合展」の初日に、図書館総合展ゲーム部フォーラム「図書館サービスとしての『ゲーム』活用」が開催されるということで、フォーラムに参加してきました。

 

図書館における所蔵資料としてのゲームや、利用者サービスとしてのゲーム活用については、本フォーラムの翌日(11月1日)にJLA(日本図書館協会)から『図書館とゲーム:イベントから収集へ(JLA図書館実践シリーズ)』も発売され、いよいよ、図書館とゲームとの関係について、本格的な議論がはじまる土台が整ってきたな!という印象を持っています。

 

図書館総合展ゲーム部フォーラム「図書館サービスとしての『ゲーム』活用」については、すでにフォーラム参加者の方々が、その内容をツダってくださっていて、Togetter上でのまとめ(「図書館総合展フォーラム 図書館サービスとしての「ゲーム」活用(速報版)」)もすぐに公開され、どんなことが提案・議論されたのかについては、ある程度知ることができます。

 

また、11月14日は、公式サイトで、フォーラム当日の動画が公開されましたので、そちらを見れば、さらに詳しく議論の様子を見ることができます。


図書館サービスとしての「ゲーム」活用/第20回図書館総合展(2018)

 

ですので、いまさら、フォーラムの内容を報告するまでもないのですが、せっかくフォーラムに参加し、その場で自分なりに提案や議論の内容をまとめましたので、こちらのブログでも、当日の議論のメモをアップしておきたいと思います。

 

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アライでない(かもしれない)人たちとのLGBTセミナーの作り方

2018年11月14日に、わたしの勤務先の大学で、男女共同参画センター×障がい学生支援室主催「ワークライフバランスセミナー LGBT」という企画が開催されました。
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このタイトルを見ただけで、察しの良いかたは、「『ワークライフバランス』と『LGBT』???」「これは誰がどういう目的でやろうとしているものなの??」など、ある種の「違和感」や「うさんくささ」を感じられることと思います。

このバラバラな感じの意味するところは、非常に明確です。
単刀直入に言ってしまえば、「今まで、そんなこと考えたことがなかった」人たちが、これまでの枠組み(「男女共同参画」!「ワークライフバランス」!)を使って、なんとか、今、必要とされている課題に取り組もうとした結果、こんなことになってしまった、ということ。
わたしは、とにもかくにも、何か自分たちにできることを始めてみよう!と、このような「無理やり感」あふれる企画を考え実現した方々に、大いなる敬意を評します。
ゼロからパーフェクトなものを創ることを望んで、いつまでも「何もできないよね」と、外から言い続けているよりは、はるかにましだと思います。

わたしは、横浜国立大学LGBTQサークル「クーピー」の顧問をしていたこともあり、この企画が立ち上がった段階で、お声がけをいただき、セミナー当日まで、企画運営面でのご協力をしてまいりました。
twitter.com

企画が立ち上がり、お声がけいただいたのが、7月。
それから企画実施までに、4ヵ月近くの期間があったわけですが、ある日突然、「LGBTに関する啓発セミナーを開催してほしい」という話があり、何がなんだかわからぬまま、セミナーを企画運営することになってしまった(!)という担当者の方をサポートする中で、いろいろ気づいたことがありました。

このような事態は、これから先、様々な場所で起こっていくだろう、と思います。

LGBTに関する啓発セミナーをやろう」と、学校や企業などの組織が決定し、なんとなく担当すべき部署を割り当て、その担当者に、セミナーの企画を命じる。
担当者が、たまたま、LGBT-Allyであるという場合もあるかもしれませんが、おそらく、そうでないことも多いでしょう。

セクシュアル・マイノリティの当事者と”出会った”経験もなく、自分が実際に会ったときにどういう感情を抱くのかわからない…。
自分が「アライ(Ally)」(=「alliance(同盟)」を表すことばで、セクシュアル・マイノリティの人たちを支え、応援する人たち)であるかどうかわからないし、そんなこと考えたこともない。実際に当事者と会ってみたら、ホモフォビア(同性愛嫌悪)の感情が起きてしまい、アライになろうという気持ちを起こせないかもしれない…。
www.nhk.or.jp

そういう人たちが、「LGBTに関する啓発セミナー」を開催しなければならない事態が、ますます増えていくということです。

世間になんとなく蔓延するホモフォビアが、見て見ぬふりをされながら放置されたまま、社会の要請として、具体的にいえば行政的・経済的な要請として、「LGBTインクルーシブな環境」づくりが求められた結果が、こういうことなのだろう、と思います。

そのような、アライでない(かもしれない)担当者がつくることになったセミナーの企画運営をサポートすることになったわけですが、結果的に、今回のセミナーの内容な次のようなかたちになりました。

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今回のような状況で開催されるセミナーの場合、当事者に直接話をしてもらう機会を設けることは、かなりリスキーです。

担当者が、突然、ホモフォビアを発症する危険性がありますし、そうでなくても、対応の仕方がわからなくて戸惑ってしまう、フリーズしてしまうということは十分ありえます。
さらにいえば、セミナーの受講者はさらに「読めない」ので、正直、初のセミナーには、当事者を呼ばない方が良いのではないか…とすら思います。

今回は、たまたま、すばらしく理解のある学生・OBがいて、快く協力を申し出てくれたので、当事者によるライフヒストリーを語る機会を設けられましたが、そういう幸せな状況がなければ、こんな危険な状況で、見知らぬ人たち相手にカミングアウトを強制することは、来ていただく当事者にとってリスクが高すぎると思います。
セクシュアル・マイノリティ当事者がカミングアウトしなくても成り立つような教育プログラムの開発について、私たちは、もっともっと真剣に取り組まなければいけない、と、あらためて実感しました。

今回、担当者の方が、「自分には知らないことばかりでとても勉強になった」とおっしゃってくださり、セミナー当日にも利用した動画教材は、下記の2つです。

(1)総務省人権啓発ビデオ「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」(活用の手引きはこちら(PDF))

人権啓発ビデオ 「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」

(2)NPO法人Re:Bit LGBT教材 中学校向け「Ally Teacher's tool kit」より動画「【中学校版】多様な性ってなんだろう?」

【中学校版】多様な性ってなんだろう?

上記2つの動画から、中学生が体験する困難に関するエピソード(ミニドラマ)、社会人が体験する困難に関するエピソード(ミニドラマ)を総務省の人権開発ビデオから、大学生がライフヒストリーとして語る困難や周囲からの支援に関するエピソードを、Re:Bitの動画教材から抜粋してご紹介することになりました。

なお、はじめの5分間(!)だけで開設する「基礎知識」編ですが、これについては、受講者全員にテキストを配布し、詳しくはあとで読んでいただくかたちにしました。
このとき、使用したのは、新設チームC企画の皆さんが、奈良教職員組合とのコラボレーションで制作した『教職員のためのセクシュアルマイノリティ・サポートブック(第3版)』なのですが、以前は、こちらの新設チームC企画のサイトから、PDFがダウンロードできたはずなのに、今、見たらできなくなってしまっていました…!(泣)

おそらく、『教職員のためのセクシュアルマイノリティ・サポートブック』(第4版)が発行されたためと思われますが、第4版は、第3版と比べて、内容がかなり固めになった印象で、はじめて紹介する人たちに向けてのテキストとしてはちょっと伝わりにくい印象があるので、これとは別に、第3版を復活させていただきたいです…。

教職員のためのセクシュアル・マイノリティサポートブック | 奈良教職員組合

今回、テキストの中からご紹介したポイントは、以下の4つです。

(1)「性(sexuality)」の4つの軸(身体の性、心の性、社会的な性、性的指向性
(2)「性」は、4軸のグラデュエーションのどこかの領域同士をつなぎあわせて見えてくる、無限に広がる多様なものであること
(3)「カミングアウト」と「アウティング」は異なること。「カミングアウト」を受けたからといって、自分がその知った情報をだれにも言ってよいということにはならないこと。
(4)学校において直面する困難や支援のポイント(テキストを参照)

このうち、もっとも大切なのは、(2)における「アウティング」の説明だったと思います。
特に、今回のセミナーでは、当事者が自分自身のライフヒストリーを語るシーンがありましたので、ここで聞いたライフヒストリーについての話を、第三者と共有する際にも、当事者の意思を尊重する必要がある、という話をしました。
たまたま、今回お呼びしたゲストの2人のうち1人は、他者との共有がOK、もうひとりはNGというスタンスでしたので、この話についてリアリティをもって聞いていただけたのは良かったと思っています。

なお、セミナーのタイトルに「LGBT」はついていましたが、「Lは…、Gは…」みたいな説明はしませんでした。ゲストとして来てもらった当事者を、これらのカテゴリーにあてはめて紹介することもしませんでした。
個人的に、「このかたは、Tです」とか「この人は、Gです」というかたちで、カテゴリー化して紹介することは、変な「代表性」「典型性」を付与してしまう気がして、気がすすまないのです。

あとは、ふたりのゲストが、自分自身のライフヒストリーの中で、もし「自分は、『T』です」というようなことをいうようであればそれはお任せしよう、と思っていました。
ひとりの方は、ライフヒストリーの一部(カミングアウトのエピソード)の中で触れていましたが、もうひとりのゲストは不明なままだったので、受講者の方の中には、モヤッとしたかたもいたかもしれないですね。

でも、それでいいんだと思います。
カテゴリー化して理解してもらいたいわけでは、ないですからね。
グループごとに質問&ディスカッションの時間にも、それとなく、「聞きたければ、聞いてくださいね」と言ってみたのですが、どなたからもそのような質問はありませんでした。

そのような、わたしの思いを汲んでくれたのか、最後のまとめの言葉のなかで、本企画の主催にかかわる理事の方から、「Lとか、Gとか、Bとか、Tではなく、性は多様であるということ。そのことについて理解を深めていく、記念すべきはじめの日であった」というような趣旨のコメントがあり、少し、救われたような気持ちになりました。

現在、オンライン上には、LGBTインクルーシブな社会をつくるためのさまざまなリソースが存在しています。
それをいかに用い、教育プログラムを作っていくのか。
当事者にリスクを負わせることなく、性の多用性についての理解を深められるような教育プログラムを創ることは、果たしてどの程度可能なのか。

これから考えていくべきことは、まだまだたくさんありそうです。

【TGS2018】ゲームスクールコーナーに行こう!

今回、東京ゲームショウに初参戦して、わかったことがたくさんありました。

 

東京ゲームショウについては、毎年、マスコミでも多く取り上げられているのですが、ニュースの焦点は、ほぼ来場者数の多さと、コンパニオン&コスプレイヤーのレポ。

なんだこれ、と思って、毎日新聞の「東京ゲームショウ」特集ページまでたどってみたら、ほぼコスプレイヤー・レポでした。

そんなわけで、試遊ソフトのおすすめが書かれている記事を見つけるのが、大変なくらいです。「東京ゲームショウ」とは名ばかりで、もしかしたら、だれもゲームをプレイすることには関心がないんじゃないかと思ってしまいます。

 

そういう事情もあって、「ゲームは好きだけど、東京ゲームショウには興味がない」という状況が長らく続いておりました。…きっと、そういう人は、わたしだけではないと思う。

 

…でも、それは一面的な見方でした。

 

幕張メッセ貸し切りで行う、日本最大…いや、アジア最大のゲーム・イベントです。大手ブースの新作にはほとんど興味を持てないわたしの心をグッとつかんでくれるインディーズ・ゲームたちもあれば、「誰がそんなものを作れといったんだ!」とつっこみたくなるくらいよくわからないものを作っている、エッジのきいたゲーム制作者たちもたくさんいます。

こちらのニフティニュースは、「2分でわかる「東京ゲームショウ2018」に見どころ」というタイトルで、最後にインディーゲームコーナーは曲者揃い!? 」とかいう記事をもってきちゃうあたり、なかなか、ステキです。

 

そんなわたしにとって、面白かったコーナーのひとつが、自分自身も出展していた「ゲームスクールコーナー」でした。

 

「ゲームスクールコーナー」は、その名のとおり、ゲームについて学ぶことのできる専門学校や大学(学部・学科)が広報のために来ているようなブースも多いので、多くの方々はスルーしていってしまいます。

だけど、

「ゲームスクールコーナー」は、それだけじゃない!

専門学校や大学による研究成果展示のためのブースもあって、そちらはむしろ、ゲームの未来を感じさせてくれたり、奇抜なアイデアを感じさせてくれたりするので、「体験しない手はない!」というかんじです。

日系トレンディのページでも記事になっていたようなので、そちらでは触れられていないおすすめをご紹介したいと思います。

trendy.nikkeibp.co.jp

 

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【TGS2018】ゲームアプリ「図書館ガイダンス リバードリィ」、東京ゲームショウに出展!

東京ゲームショウ2018」に行ってきました!

…というか、「常磐大学ゲーミフィケーション研究会」のメンバーとして、ゲームスクールコーナーで出展してきました!

www.tokiwa.ac.jp

f:id:kimisteva:20180925191239j:plainwww.4gamer.net

 

今回、東京ゲームショウに出展するに至った主な理由は、なんといっても、現在、Google Playで無料ダウンロードできるゲーム・アプリ「図書館ガイダンス リバードリィ(Libardry app)」をいろいろな方に知ってもらい、実際にプレイしていただくためです。

apkpure.com

 このアプリ、以前制作したカードゲーム版をもとに、アプリを制作したものです。

カード版からアプリ版を制作した経緯などについては、Entertainment & Computing2017での発表(ショートノート)(PDF)にてご説明しておりますので、よろしければ、こちらご参照くださいませ。

★寺島哲平・名城邦孝・ 関敦央・ 宮崎雅幸・石田喜美(2017.9)「大学図書館の利用方法を学び「大喜利」型ゲーム・コンテンツ「Libardry CARD」:カードゲームからゲームアプリへ」(「エンタテインメントコンピューティングシンポジウム(EC2017)」2017 年 9 月)

 

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全国大学国語教育学会ラウンドテーブル「国語教育における即興的パフォーマンスとしての学習 」

全国大学国語教育学会2018秋大会のプログラムが、ホームページ上に公開されました。

プログラムは、こちらからPDFでダウンロードできます。

www.gakkai.ac

わたしは、2日目(10/28(日))の午前中に開催される課題研究シンポジウムで、コーディネーターとして登壇する予定なのですが、その他にもいくつかの企画に参加しています。 

kimilab.hateblo.jp

そのうちのひとつが、2日目午後のラウンドテーブル、「国語教育における即興的パフォーマンスとしての学習―「うまくいかない」「できちゃった」から生まれることばの学び―」です。

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以前から、国語教育×インプロ(即興)みたいなテーマで、ラウンドテーブルができると良いなぁ…と考えていたところ、あれよあれよという間に、知り合い同士がつながり、今回の企画が実現することとなりました。

たまたまこの日程で、登壇者の皆さんに予定を調整していただくことができ、かつ、東京というアクセスの良い会場での研究大会開催だからこそ、皆さんに来ていただける。そんな奇跡的な偶然が重なったからこそ、実現できるラウンドテーブルです。

ぜひこの奇跡的な機会を、皆さんに共有していただければと思っています。

 

今回のラウンドテーブルの登壇者の皆さんからは、事前に、要旨集原稿のオンラインでの共有について許可をいただいているので、こちらで、要旨集原稿を公開いたします。

 

★PDF「国語教育における即興的パフォーマンスとしての学習
―「うまくいかない」「できちゃった」から生まれることばの学び―」

 

また、以下にテキストもアップいたしますので、よろしければぜひご覧ください!

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