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kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

「書きつづけること」への許可証

2008年8月3日。
日本読書学会の大会にて「読書科学研究奨励賞」という賞をいただきました。

賞を受賞すると、受賞スピーチをしなければならないので、
スピーチで何を話すか、ずっと考えていたとき、
わたしの頭の中にあったのは、わたしが通っていた小学校の図書室の壁に大きく貼られていた掲示でした。

「本はごはん。マンガはお菓子。お菓子ばかりを食べていては大きくなれません。みんなで本を読みましょう」
 
結局、わたしは
マンガが好きで、同人誌を享受したり創作したりする少女たち、
マンガやイラストのようなものを自由帳にかいてる小学生の女の子を事例としてとりあげて、研究としてまとめたわけですが、
それら「一連の研究」(賞状での文言)が認められたことに、あらためて深い驚きを覚えました。

なにしろ、「読書教育」に関わる方の多い学会です。
率直に言ってしまえば、「マンガはお菓子です」とか「同人誌なんて読書じゃない」とか一蹴されてもしかたがないと思ってました。
・・・たしかに、そういう意味での苦労がまったくなかったわけではありませんが、
それでも、こうして、わたしが書いてきたことを認めてもらえた。

なによりも、そのことをうれしく思っています。

わたしは、受賞スピーチでこんなことを言いました。

わたしがオタクの女の子たちを研究しているのは、
・・・それは自分がオタクだからだというのもありますが(笑)、
もうひとつ、わたしが大切にしたい小さい頃の経験があるんです。

少女小説や少女マンガによくモチーフとして用いられることが多い童話に『人魚姫』があります。
わたしも、小さい頃『人魚姫』が好きで、なんども『人魚姫』を読んでいたのですが、
どうも読むたびに、最後のページを、クレヨンで塗りつぶしてしまってたらしいんですね。
でも『人魚姫』は好きだから
消してもらったり、あるいは新しいものをもらったりするんだけど、
それでもやっぱり、最後のページを、クレヨンでグチャグチャグチャーってかいちゃうんです。

で、それはわたしだけの話じゃなくて、
少女小説とかにもよく『人魚姫』がモチーフにされた作品があるんですが、
そういう少女小説って、絶対、ハッピーエンドで終わるんです。
人魚姫は、王子様と幸せになるんです。


わたしは、
もし自分が読書とか読書教育とかに関わるなら、
『人魚姫』を読んで、最後のページが許せなくてクレヨンでグチャグチャにしてしまった小さい頃のわたしを大切にしたいなって思ってました。

何か本を読んだときの・・・その、抵抗みたいなもの。
最後のシーンを書き換えてしまいたいと思うような、そんな抵抗を、大切にしたい。

・・・わたしは今、論文を書くということしかできないけれど、だとしたらそんな抵抗を大切にした研究をしていきたいな・・・って思って、研究をしてきました。

それが、こうして賞をいただいたことで、
そういう思いを大切にしていいんだよ、
これからも書いていっていいんだよ、と言ってもらたような気がして、
そのことを、なによりも、うれしくおもってます。

本当に、ありがとうございました。

・・・なにも付け加えることはありません。
言いたいことは、すべて言えたという気がします。

これからも、今の思いを大切にしていきたい。それだけです。