kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

「フクシマ」の純粋記憶

本日、2014年9月15日午前0時。

福島県富岡町-双葉町間の国道6号線の通行規制が解除され、同線の全面通行が可能となりました。2011年3月11日に起きた東日本大震災から、3年半の月日を経て、ようやくこの区間の通行が可能になったということです。

 

「福島の国道6号、通行制限解除 原発事故以来3年半ぶり」 News i - TBSの動画ニュースサイト

国道6号 規制解除で3年半ぶり全線開通 | 河北新報オンラインニュース

帰還困難区域の国道6号、車に限って通行再開 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

国道6号の通行制限解除 福島の「帰還困難区域」 :日本経済新聞

 

日経新聞によると、「同区間の除染後の空間放射線量は平均で毎時3.8マイクロシーベルト」で、「帰還困難区域を含む避難指示区域を通過する場合、被曝線量は推計で約1.2マイクロシーベルト」になるのだそうです。
一般的な「X線の基礎知識」のような資料でよく目にする放射線量(自然・人工
)に関する図表(たとえば、これ)だと、「軽水型原子力発電所周辺の線量目標値」は「1マイクロシーベルト(年間)」となっておりますので、復興を目指す地域の声に強く押されるかたちで通行を許可することになったのだろう、と推測します。

本日お昼頃には、さっそくNHKニュースでこんな記事も取り上げられていたようですね。

国道6号全線通行再開 復興後押しに期待 NHKニュース

 

3.11以後、被災地の支援に向かいたいという思いはありつつも、なかなか足を運べないまま3年以上の月日が経ってしまいました。

そんなタイミングで今回の国道6号線全面開通のニュースがあり、今、この機会に「フクシマ」を見ておきたいという思いで、国道6号線を北上してみることにしました。

 

f:id:kimisteva:20140915215711j:plain

 

通行が規制されていた区域に近くなると、「帰還困難区域」という言葉が用いられた看板があちらこちらに見えてきます。

「帰還困難区域」とはなんでしょう。おそらく行政の部署で使用されている用語がキメラ化してできた用語なのでしょうが、言葉そのものから意味をとろうとすると、もはやここの区間を通過したものは、元には戻れない、生きては帰れないのだと警告されているようにすら思えます。

 

そして、「福島第一原子力発電所」の案内板。

f:id:kimisteva:20140915215747j:plain

 

先日、秋からはじまる授業についての準備を進めるなかで、たまたま「記憶」という言葉について調べました。『世界大百科事典(第2版)』では、「記憶」について次のような、深く、美しい説明文が付されています。

 

きおく【記憶 memory 

一般に,過去体験やできごとを記銘し,保持し,再生する働き,あるいは再生されたものをいう。しかし,これが広狭両様にいわれるところから,記憶をめぐる解釈上の問題が起こっている。例えばベルグソンは,習慣も過去に定着した運動機構の保持と再生であるとして,それを〈習慣‐記憶〉と呼んだ。さらに彼は,事物の時間的生成が過去の絶えざる累積であることを〈純粋記憶〉と言い表している。これなどは記憶という語の最も広い用法の一例であるが,ここまでくると,記憶という語の使用意味を失うと思われる。(記憶 とは - コトバンク

 

通行規制区間にある数々の痕跡をはじめ、「フクシマ」に残された数々の痕跡は、ベルグソンのいうところの<純粋記憶>。すなわち、「事物の時間的生成が過去の絶えざる累積であること」としての「記憶」について、私たちに問いかけています。

 

f:id:kimisteva:20140915070539j:plain

f:id:kimisteva:20140915101835j:plainf:id:kimisteva:20140915093147j:plain