kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

絵本建築

今週のお題「一番古い記憶」。

・・・ということで、本をめぐる「一番古い記憶」の話をしようと思います。

これは、本をめぐる「一番古い記憶」の話でもあるのですが、一方、建築をめぐる「一番古い記憶」の話でもあります。わたしがもっともはじめてつくった建築の話といえるかもしれません。

 

「建築物」とは、『ブリタニカ小百科事典 小項目事典』によれば、「人間がその生活上の必要,あるいは文化的,形而上的な欲求から構築するものの総称」だそうです。

 

kotobank.jp

 

定義が広すぎてびっくりしますが、「ストーンヘンジ」のようなものも「建築」であるとするのであれば、このくらい広い定義でないとおさまりきらないのでしょう。

 

そしてもし「建築」が「人間がその生活上の必要,あるいは文化的,形而上的な欲求から構築するものの総称」と定義されるのであれば、保育園や幼稚園の子どもたちが、絵本を壁に見立てながらつくりだす「家」も、おそらく、「建築」と言えるのではないかと思います。

 

わたしにとって、もっとも古い本との関わりの記憶はまさに、この絵本でつくられた建築でした。ここれは試みにそれを「絵本建築」と読んでみることにしましょう。

 

 

「絵本建築」は、わたしだけの”発明”ではなく、全国いたるところに見られます。

保育園や幼稚園の子どもたちが「家」をつくるために絵本を使ってしまうことが、絵本の独占や本の損傷の観点から問題視されたり、はたまた、雨の日の遊びとして、絵本をつかった「迷路」がつくられたり・・・と、「絵本建築」の活用のされかたや受け取られ方はさまざまです。

こちらでPDF公開されている報告書(大阪府・都島桜宮保育園「課題研究② 遊びと学び『絵本の力』)では、絵本が子どもたちの「ごっこ遊び」のなかで、病院のカルテになったり、電車に乗車するための切符になったりしている様子が描かれていて、「絵本建築」のさらなる展開(?)の可能性を感じさせます。

 

「絵本」と「ごっこ遊び」というと、読書教育に関心のあるかたの多くは、絵本に描かれた物語などの内容から発展させた「ごっこ遊び」のみを思い描くことが多いようにも思います。

子どもたちの「ごっこ遊び」を成立させるための、見立ての素材となる本については、ほとんど触れられない。上記の実践報告(PDF)の面白いところは、そういうものもすべてひっくるめて、「絵本の力」と言いきってしまうところです。

 

わたしの古い記憶のなかでは、「絵本建築」づくりから始まって、それを使った「ごっこ遊び」がはじまり、「ごっこ遊び」に飽きてくると、今度は、「家」や「壁」として存在していた絵本を手にとって、読みはじめる・・・という、遊びの流れが、ごく自然二生じていたように思います。

 

もちろん、子どもたちは周囲にあるものをさまざまなものに見立てるので、とくに「絵本」だけを取り上げることに意味があるのかどうか、はわからないけれど、読書の発達や読書支援を考えるときに、こういう「モノ」としての本の存在をもう一度、考え直してみたいと思う今日この頃です。