読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

みんながいなければ、たどりつけない場所――ロクディムフェスティバル

第6回「したまち演劇祭 in 台東」のなかで開催されていた「ロクディムフェスティバル この瞬間を一緒に笑おう」に行ってきました。

 

 

ロクディムの皆さんとはじめてお会いしたのは、2011年。東日本大震災があったその年の秋のことです。
当時わたしは、現代美術家の中崎透さん、水戸芸術館現代美術センター学芸員の竹久侑さん、高橋瑞木さん、そして現在水戸芸術館で教育プログラムコーディネーターをしている田中麻衣子さんとともに、「仮設☆空間 喜望峰」という期間限定のスペースを共同運営していました。

そのとき、中崎さんからのご紹介で、ロクディムのカタヨセさん、渡さんたちが「喜望峰」で即興ライブをしてくださる、ということになったのでした。なつかしい。

 

東日本大震災の後、被災した多くの人たちが、さまざまなかたちで「震災で何もなくなってしまったところから、何をはじめたら良いのか」という問いに向きあってきたわけですが、いわき市出身のカタヨセさんは、特にその思いが強かったのではないかと思います。これについては、インタビュー企画「6時間目 はなしの時間」のなかの松尾貴史さんとの対談のなかで、渡さんが次のように述べられています。

 

うんうんうんうん。本当に同じようなことを、去年そのカタヨセヒロシは、特にあのメインで活動してたんですけど。「なぜ即興なのか?」っていうことは、 今、松尾さんが言われたとおり、その何もないところから、もしくはその震災で何もなくなったところから、じゃあ、どうやって創っていくんだ、これから を。っていうことは、僕らがやっていること、何もないところから『どうもー』って出ていってお客さんと喋って、それを使って1つ物語を創るわけですよね。 その時には演出家も脚本もないところで『この人がこれ言ったからこうだ』『これ言ったからこうだ』って、その場その場で、ずっと臨機応変に対応していっ て、結果こんなんなりました!っていうのが、なんて言うんですかね「人生即興じゃないですか」っていうのと同じようなテーマがあるね。

 

カタヨセさんには、この「喜望峰」での企画のあとにも、何度も水戸に足を運んでいただき、即興のワークショップを開催していただきました。

わたしは会場提供に関わった者として、即興のライブよりも、即興のワークショップに参加することのほうが多く、そのなかで、「みんながいるからこそ、できること」とか、「失敗があるからこそ、面白くなれる」こととか、いろいろ感じたり、学んだり、新たに気づいたことがあるのですが、今回かなり久しぶりに、大きな舞台での即興ライブを見ることができて、あらためて感じたことがありました。

 

それは、「みんながいなければ、たどりつけない場所」がある、ということ。

 

f:id:kimisteva:20150913195134j:plain

 

そういう意味で、このシーンがとても、わたしにとっては象徴的でした。

 

このときはたしか、はじめの設定だけを決めて、その後、カタヨセさんが言葉を発さずにマイムだけで動くので、カタヨセさんの言葉を周囲の人がセリフ化していく・・・というようなインプロ・ゲーム(?)だったと思います。

「種から芽がでる」(!)という当初の設定からはじまって、たしかに、はじめはカタヨセさんが展開の主導権(?)をもっていたのですが、途中から、誰が展開のキーマンになっているのかがわからなくなり・・・、もしかしてこれって台詞にあわせてカタヨセさんが動いているだけじゃないのか?と思うような局面もありつつそうでもないような感じで、いわば、集団としての集合的な意志で動いているとしか説明しきれないような物語が展開していきました。

 

このシーンは、種から出た芽がどんどん伸びていって空をつきぬけ、その茎(?)をどんどん登っていって空まで届いた!というシーンなのですが、なぜそんなことになったのか、がおそらく、個人の意志としては説明できないんです。

ジャックと豆の木』のような、観客と舞台とで共有されている(と思われる)物語スキームがあり、それがどこかで、何かのきっかけで参照された結果、みんなでこの方向に動いていってしまった!・・・という感じがします。

その意味で、この物語を作ったのは、パフォーマーであるロクディムだけではない。観客が知っている、求めている物語とのもっとも「面白い」関係性が実現された結果、こうなったとしか言えない。

この「空」は、パフォーマーであるロクディムの皆さんと観客がいなければ、たどりつけなかった場所なのだと、そう思いました。

 

f:id:kimisteva:20150913211311j:plain

 

この日の公演は、千秋楽であったこともあり、最後のほうで、渡さんがカタヨセさんの即興上のセリフに涙する場面もありました。

 

各地で甚大な被害をもたらした台風の日にスタートをきった「ロクディムフェスティバル」。その5日間の公演の時間は、まさに、「みんな」で共有されてきた時間なのであり、その共有された時間の最後に、わたしは立ち会っているんだと思いました。

 

今回の公演のタイトルには「この瞬間を一緒に笑おう」という言葉が付されていましたが、5日間という時間は、「この瞬間」の蓄積としての時間を、私たちに感じさせてくれたように思います。

 

今年11月14日(土)には、ロクディムの皆さんが東北で行ってきたプロジェクトの報告会+ライブのイベントが開催されるとのこと。

ロクディム:6-dim+ 東京↔東北 LIVE | ロクディム:6-dim+|即興芝居×即興コメディ|この瞬間を一緒に笑おう

 

2011年の東日本大震災以後、「ジャパンツアー」をはじめとした活動のなかで、何もないところから、みんなで一緒に未来をつくっていくことの可能性を各地で見せてきてくれたロクディムの皆さんの報告会。

ぜひスケジュールをあわせて参加できれば、と思っています。