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kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

誰かのための住処/みんなの公共空間――DenchuLab.一般公開展示

お仕事(アートほか) アート

東京都台東区谷中霊園の近くにある旧・平櫛田中邸で行われたいた若手アーティストによる滞在制作「Denchu Lab.」の公開展示を見にいってきました。

★若手アーティストによる滞在制作 | Denchu Days_Live Arts and Archives

★プレスリリース(PDF)

 

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平櫛田中は近代木彫を発展させた彫刻家。

その旧邸宅は、大正時代のアトリエ付住宅の姿を現在に伝えるものとして、台東区のNPO法人「たいとう歴史都市研究会」などによって建物の保全活用が行われています。

「Denchu Lab.」も旧・平櫛田中邸をさらに活用していくための試みのひとつであるようで、「アートを通じて地域・世界の人々と再生し、新たな創作と交流の場として育てていく活動の一環として、アーティストの制作・発表を応援する」ことを目的としているようでした。

 

もともと「住む」ための場所でもあり「創造する」場所でもあったアトリエ付住宅を、新たなかたちで、「住み」ながら「創造する」活動(=滞在制作)のために使っていくという試みは、とても面白そうです。

若いアーティストの皆さんが、どのように建物と活動の趣旨を読み込み、作品を制作されているのか、にとても興味を持ちました。

 

「三宅島在住アトレウス家≪山手編≫」以来、久しぶりに、旧・平櫛田中邸を訪れてみて感じたのは、特定の誰かのための住みつくるための場所が、みんなのための住みつくるための場所に転用されていることのズレ、というか違和感でした。

 

入り口からして、こんな感じだったので、「工事中」感満載で入りにくかっただけかもしれません(笑)

 

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あるいは、会場に到着したときに、スタッフの方(?)が、展示もされている部屋の片隅でお昼寝をされていたので、「住む」ための機能が(実は)この場所になかったということを予想外のかたちで実感してしまったせいなのかもしれません。

 

いずれにせよ、本来は特定のだれかのための場所なのに、そこでみんな(4組のアーティスト)がなにかを創って展示している、そこでみんなが生活(?)していることが大きな違和感として表出されていたように思いました。

建物そのものが、「みんなの公共空間」であることを拒んでいるような、そんな感じすらします。

 

でも、その違和感やズレのようなものが、異なる可能性を開くこともあります。

ひとつの誰かのための場所に、色彩のかなり異なるさまざまな作品が展示されていて、全体としては違和感満載なのですが、大きな違和感のなかに、ふとした瞬間に、建物と異なる色彩の作品たちが共存する瞬間がある。

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扉の向こうに見えるインスタレーションと、扉に映し出されたチープな手法の映像が、共鳴しあう瞬間がある。

 

旧・平櫛田中邸宅のあちらこちらにひそやかに設置された佐藤歴治+原口寛子≪明日の予報≫は、映像作品であることもあり、建物や他の作品との小さなシンクロニシティを生み出すきっかけを創りだしていたと思う。

sayonaLife: 佐藤史治+原口寛子「明日の予報」を見てきました。 / Denchulab.

 

1階とは、また異なる世界をもった2階に展示された古澤龍さんの展示は、完全なる闇を創りだしている点で、建物そのものとのシンクロニシティのようなものは感じられないけれど、完全なる闇のなかであるからこそ感じられる、外に広がる風景を感じさせてくれる。映像そのものが呼吸をしていることも、それを感じられた原因のひとつなのかもしれない。

この場所は、唯一、「みんなの公共空間」であることを忘れさせてくれる。

わたしがひとりであることを感じさせてくれる。

それがこの建物で展示するための、正しいアプローチなのかはわからないけれど、「誰かのための住みつくるための場所を、その根源的な原点にまでさかのぼらせてくれることは事実だと思う。

ここが、孤独に思考し、創造するための場所であったとすれば、これほど正しいアプローチはないようにも思える。

 

平櫛田中邸を新たな創造・交流の場所として再生させようとするこのプロジェクトは、今後どのようなアプローチをとっていくのか。

その問いを考えるための手がかりは、きっと、展示された作品群のなかにバラバラと散らばっている。

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