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kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

本や雑誌がわたしたちに教えてくれるもの~アイデアを生み出すためのザッピング読書

大学で担当している演習授業「国語教育演習Ⅰ」では、毎年、国語教育・読書教育関連の学術雑誌を「乱読」「ザッピング」する活動を実施しています。

 

 ザッピング読書に思いいたるまで

本や雑誌の「乱読」「ザッピング」には以前から関心を持っていたのですが、外山慈比古『乱読のセレンディピテイ』を読んだり、嶋浩一郎『なぜ本屋に行くとアイデアが生まれるのか』を読んだりして、一見関係なさそうに並んでいる本をザッと見比べたり、タイトル同士に思いがけないつながりを見出したりすることで生まれるアイデアについてあらためて考えさせられたこと。 

 

  さらに、『Courrie Japon』のウェブページで読んだスプツニ子!さんのコラム「Vol.30 手にした情報の「結びつけ方」で、新しいアイディアは生まれる」を読んで、あらためて、アイデアを生み出すための本の読み方として、「乱読」「ザッピング」を捉えてみたい!と思ったこと。

courrier.jp

そんな経験から、ここ数年ずっとそんな実践研究に取り組んでいたりします。

例えば、こちら。

JAIRO | 読書体験を共有する活動に着目したワークショップ・プログラムの実践

JAIRO | <リーフレット>こどもニンジャ(にんじゃ)図書館合戦(としょかんがっせん)あそび方(かた)ガイド

 ザッピング読書の対象にした雑誌リスト

今回の授業では、研究棟内の国語図書室に所蔵されている以下の雑誌のうち、2010年以降に発行されたものを「ザッピング」してみることにしました。

 

 

わたしの勤務先は、文学研究に関わるスタッフが充実しているので、『日本児童文学』は昨年度まで取り上げていなかったのですが、今年の受講者に、ラノベ好きが多いので、「児童文学に関する議論のなかでも、ラノベが取り上げられているんだよ!」ということを知っていただくため、『日本児童文学』を新たに加えてみました。

 

ザッピングしてみよう!

さて、いざ、ザッピング読書をしてみます。

毎回授業で用意しているのは、上記の雑誌(今回は2000年度に発行されたものから最新号まで)に加えて、2つのサイズの付箋を用意しています。

 

1つは、「ポスト・イット辞書引き用」など、雑誌の余白に貼れるようなサイズのポストイット。こちらは、とにかくはじめにザッピングしまくるときに、自分が気になった論文に自分の名前を書いて張りまくっていくために用います。

 

もうひとつは、「ポスト・イット ノート」です。

こちらは、ザッピングしたあとに、自分自身がその中でも特に興味のある論文・記事を見つけるときに使います。 

手順は、次のとおり。

 

  • 1人あたり3~5冊、雑誌を配ります。
  • まず、雑誌の表紙や目次にザッと目を通して、気になるタイトルやキーワードを見つけながら、「面白そうかも」と思える論文・記事に付箋(辞書学習用付箋)を張りつけていきます。
  • 付箋を貼り終えた雑誌を隣の人に廻していき、全員がすべての雑誌に目を通すまで同じことを繰り返していきます。
  • 次に、自分が「面白そうかも」と付箋をはった論文・記事の中から、「ベスト3」(時間がない場合はベスト1)を決めるために、もう一度、自分が付箋をはった論文を見直していきます。
  • あらためて論文を見直していき、「ベスト3」に残りそうなものは、ノート型付箋に、論文のタイトル、著者名、掲載雑誌名と簡単な内容(1~2文程度)・キーワード等をメモしていきます。これも終わり次第隣の人に雑誌をまわし、全員が「ベスト3」を選べるまで続けます。
  • 最後に参加者ひとりひとりに、自分の「ベスト3」を発表してもらいます。

 

「1週目にまわすときは、フィーリング重視で!」

「『ジャケ買い』的な感じで、タイトルにビビツと来たら付箋はっちゃってね!」

…と言っているので、けっこうたくさんの付箋が貼られていきます。

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毎回面白いと思うのは、1週目に、自分の付箋を貼って雑誌を廻していく段階で、参加者ひとりひとりの人となりのようなものが見えてくるだけでなく、参加者の人となりとの関わりのなかで、雑誌やそれぞれの特集号のような個性も見えてくること。

 

たとえば今回でいえば、『日本児童文学』のライトノベル特集号に、やたら特定の参加者の付箋が集中したり…(笑)、

参加者の中から、作業の途中で、「サイズの大きい雑誌は面白くない、小さい雑誌は面白い」という発言が出たり…(おそらく、大きい雑誌は『国語科教育』『読書科学』なので、学術的な雑誌は興味がもてないという意味であると思われる)、

「なんかこの論文(記事)やたら人気があるよね!」という論文・記事に出会ったり…、

そういう意味では、わたし自身にとっても、今までの論文の見え方とは違った見方でこれらの雑誌を見直すチャンスにもなり、いつも新鮮な時間をいただいています。

 

私としては、自分が研究のアイデアを思いつくために日々行っているプロセスの一端を、授業内ワークショップとして開いているだけなのですが、実際にやってみると、学生たちがまったく違ったかたちの体験をしてくれるのが面白いなぁ…と思っています。

 

まだまだ学習者の側から、学術雑誌のザッピング読書の意味が見いだせていないので、なかなか実践研究のかたちではまとめられていないのですが、もう少し、実践方法を固められてきたら、このような方法の学習上の意味を考えてみたいと思っています。