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Literacy, Culture and contemporary learning

こども×アート×ワークショップの原点~「ブルーノ・ムナーリ」展@神奈川県立近代美術館葉山

先週末まで、神奈川県立近代美術館葉山で開催されていた、「ブルーノ・ムナーリ こどもの心をもちつづけるということ」展に行ってた。

 

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「ブルーノ・ムナーリ こどもの心をもちつづけるということ」展:神奈川県立近代美術館<葉山館>

 

神奈川県立近代美術館葉山での展示は終わってしまったのですが、「かなチャンTV」の展覧会案内動画で、《読めない本》《旅行のための彫刻》《見立ての石》が紹介されていて、うれしい。

 


神奈川県立近代美術館 「ブルーノ・ムナーリ こどもの心をもちつづけるということ」展 2018/04/27Fri.

 

展覧会のホームページの方では、もっと、いわゆる「芸術作品」らしい(?)作品の写真が多く掲載されているように見えるのに、こちらの案内動画では、どちらかというと「子どもの遊び」っぽい方の作品が取り上げられていて、うれしい。

 

ブルーノ・ムナーリは、『ファンタジア』の中で、「未来の社会はすでに私たちの中に、つまり子供たちの中にある」…と言っているそうだけれども、子どもたちとのワークショップはもちろんのこと、本の装丁、デザイン・ワーク、そして初期から続くアート作品まで、「みんなの創造性のきっかけ」を創出することに、大きな関心を抱いていた人なんだろうな…ということが、ひとつひとつの作品から伝わってくる。

 

本展の担当学芸員である高橋雄一郎さんは、ムナーリが、本の雑誌や装丁を多く手がけけていることについて、次のようにコメントしている

これを読んで、あらためて、ブルーノ・ムナーリの一連の仕事が、ワークショップやデザインやアートや教育や…いろいろなところで行われている、「みんなの創造性のきっかけ」をつくりだすプロジェクトの原点になっているんだなぁ…と実感した。

 

 装丁の仕事は晩年まで手がけていました。ムナーリは、「芸術のための芸術」のようなものを目指した人ではないんです。自身の作品がいかに大衆に広く触れ、創造的なきっかけになるかということのほうが、むしろ関心があったのでしょう。だから、装丁のような仕事はバランスが取れたいい仕事だと、ムナーリはとらえていたのではないでしょうか。

ブルーノ・ムナーリって、何者?学芸員に聞く、ユーモアを忘れないマルチ・アーティストの創作の裏側|美術手帖)

 

展示室の最後には、ムナーリの制作した遊具で遊べるコーナーがあり、そこの解説で、ムナーリにとって、アートは、ラテン語の「芸術(ars)」と日本語の「遊び(asobi)」との二つの側面を持つものだというようなことが書かれていた。

いま、まさに学習における「play(ful)」に関心をもって、いろいろな研究や実践を行っているわたしとしては、「プレイ(play)」ではなく、日本語の「遊び(asobi)」がここで持ち出されていることに、興味を惹かれた。

 

「プレイ(play)」という英語を用いて議論することで、演技(play)、演奏(play)、遊び(play)を連続して議論していけるという面白さは確実にある。

たとえば、ミッチェル・レズニック『ライフロング・キンダーガーデン』において展開されている議論の面白さは、まさに「play」に関する議論にこだわったところから生み出されている、と思う。

  

 

一方、「遊び(asobi)」という日本語の言葉にこだわることによって、見えてくるものもありそうな予感がするのも、たしか。

ブルーノ・ムナーリによる子どもたちとのワークショップの映像を見ていると、これは「プレイ(play)」ではなく「遊び(asobi)」だという気がしてくる。

もちろん、レズニックが語っている「レゴ・マインドストーム」や「スクラッチ」をいかに子どもたちが遊び、学んでいるか?を具体的に見てみると、そこには、ここに見られるような「遊び」の要素も多分に含まれているのだけれども。

 

 

 これについては、もう少し自分自身でも考えてみたい。

 

ブルーノ・ムナーリ」展は巡回展で、このあと、北九州市立美術館、岩手県立美術館での展覧会が開催され、11月17日からは、世田谷美術館で見られるようになるとのこと。

今回ご覧になれなかった方は、ぜひ世田谷美術館での開催の折に、足を運んでみてほしい。

2018年6月23日~8月26日  北九州市立美術館
2018年9月8日~11月4日  岩手県立美術館
2018年11月17日~2019年1月27日  世田谷美術館

 (「ブルーノ・ムナーリ こどもの心をもちつづけるということ」展:神奈川県立近代美術館<葉山館>)

 

それにしても…

まだこれから展覧会が巡回していく予定だというのに、すでに図録が売り切れていて、(出版社在庫もなく!)プレミア価格で売られている状況になっているのは、どうにかならんのですかね…(汗)