kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

セクシュアルマイノリティと児童文学について考えること

夏休みに入る直前に、ある学生と話したことをきっかけに、児童文学におけるセクシュアル・マイノリティの表象に興味をもちはじめました。 学校におけるセクシュアル・マイノリティの問題については、以前と比べればかなり広く認知されるようになってきている…

黒人女性ラップにおける対話―『ブラック・ノイズ』

2015年5月6日に、トリーシャ・ローズ(2009)『ブラック・ノイズ』の輪読会が行われました。 私は、第5章「悪女たち:黒人女性ラッパーと性の政治学」を担当したのですが、本章で行われている議論がとても面白く、私自身が、今後、サブカルチャーやポピュラー…

堀井憲一郎『いますぐ書け、の文章法』

読む人への徹底的なサービスとしての「書くこと」 大学院時代にお世話になった先生が、Facebookで紹介していたので、いますぐ書け、の文章法 (ちくま新書)を購入。ご紹介いただいた当時、さっそく書店に行ってみたところ、 新書の帯に、「文章は暴走する」と…

イリイチ『シャドウ・ワーク』を読みつつ年始まわり

2012年 新年のご挨拶 あけましておめでとうございます。ついに年が明け、2012年がはじまりましたが、 皆さま、いかがお過ごしでしょうか?私は、昨年末、12月28日〜30日まで、人生初めて金沢市を訪れ*1、 12月31日から元日までは実家で、個人事業主(大工)…

価値(バリュー)を作りつづけること

今週末は体力的にも精神的にも少し余裕があったので、 以前から読みたいと思っていた雑誌や本を少しかじり読みました。まずは事務所帰りに、『BRUTUS』2011年1・15日号(特集:本。2011年、「世の中」を考える175冊)からいくつかの対談記事を。BRUTUS (ブル…

「翻訳」という実践

翻訳 Translation 翻訳の実践は、言語的記号の恣意性に関する洞察(シニフィアンとシニフィエとの関係は必然的ではなく慣習的である)をこれまで長く裏付けてきた。しかし、それにもかかわらず、ある「外国」のテクストをまったく同じ意味で正確に訳すことが…

ゼロからすべてをつくる「いじめられっこ」の物語

ポール・フライシュマン・作/ケビン・ホークス・絵『ウェズレーの国』 久々に、絵本を買いました。 しばらく見ない間に、絵本というメディアの可能性は果てしなく大きく広がったものだと、本屋に行くたびに実感させられます。それは、けしてピアノやゲーム…

名士の娘たち

恩田陸『ユージニア』を読む。ユージニア (角川文庫)作者: 恩田陸出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発売日: 2008/08/25メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 21回この商品を含むブログ (151件) を見る奥田英朗の『イン・ザ・プール』や『空中ブラン…

平安時代の恋愛スタイル

まだ日本が、ロマンティックラブ・イデオロギーに染まっていなかった頃、人々はどういうふうに出会い、仲を深めていたのだろう。それは、きっと今とはまったく違うものであるに違いない。そんなことが、妙に気になる。わたしは小学5年生のときに、平安時代…

「子ども中心主義」の隘路

いまさらながら、苅谷剛彦『教育改革の幻想』(ちくま新書)を読む。教育改革の幻想 (ちくま新書)作者: 苅谷剛彦出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2002/01メディア: 新書購入: 8人 クリック: 29回この商品を含むブログ (49件) を見るわたし自身の研究的立場…

パロディの生成

先日から読んでいる三浦しをん『ロマンス小説の七日間』(角川文庫)の中で、わたしの研究と関わってピピッとくる一節があった。 ロマンス小説は、結局のところ家族小説だ。ヒーローとヒロインが、いかにして幸せな家庭を築いたか、という話だ。これは私のた…

介護現場の混沌:阿部真大『働きすぎる若者たち―「自分探し」の果てに―』

阿部真大『搾取される若者たち−バイク便ライダーは見た!』(集英社新書)を、良質なエスノグラフィとして高く評価していたので、『働きすぎる若者たち―「自分探し」の果てに―』(生活人新書)を読んでみた。働きすぎる若者たち―「自分探し」の果てに (生活…