きたる3/21~3/25に、NHKのEテレにて子ども向けのプログラミング学習番組『Why? プログラミング』が放送されるそうです。
先日、NHKにて、出演者の厚切りジェイソンさんによる取材会が行われ、その後、オンラインを中心に話題が広がっています。
NHK・Eテレでは、すでに2014年9月と2015年7月に、プログラミングの世界を紹介するバラエティ番組「アルゴリズミ子研究所」を放送して、話題になったこともあります。
昨年7月には、NHKニュース「おはよう日本」で、「小学生に人気 新たな習い事とは」というタイトルで、小学生の「習い事」として、プログラミング学習に注目されていることが話題として取り上げられていました。
文部科学省でも、2015年3月に「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」(PDF)(いろいろツッコミどころの多い資料だったようですが・・・)や、初等中等教育学校向けの「プログラミング教育実践ガイド」を公開し、文部科学省オリジナルのプログラミング学習ソフト「プログラミン」(!)も公開し・・・というタイミングでしたので、このタイミングで、NHK・Eテレが、プログラミング学習の教育番組を企画するのは当然のことかもしれません。
このように、プログラミング教育に注目が集まるなか、次に問題になってくるのは、おそらくカリキュラムの問題だろうと思います。
冒頭に紹介した番組『Why?プログラミング』でも、教育用のプログラミング言語「Scratch」が使用されるそうですし、文部科学省によって報告されたプログラミング教育の事例集においても、小学校では「Scratch」が利用されているようなのですが、「Scratch」という擬似的なプログラミング言語を学習したあとに、何をどのような順番で学習していけば、「Java」や「PHP」「Ruby」といったプログラミング言語への学習につなげていくことができるのか、という問題です。
『日経ソフトウェア』の武部健一さんは、次のように指摘しています。
さて、日経ソフトウエアとしては、スクラッチでプログラミングに興味を持った子供や大人を、次のステップへ誘いたい、と思っています。ただし、これが目下 の悩みです。というのは、“スクラッチの次”のステップとしてオススメできる適当なプログラミング言語が見当たらないからです。教育用として非常に良くで きたスクラッチが、プログラミングのハードルをあまりにも下げてしまったため、現在主流の言語との間に大きなギャップが生じているように思われます。
(記者の眼 - 「スクラッチの次」のプログラミング言語は?:ITpro)
実際、文部科学省による事例集を見てみても、小学校から高校までの実践事例から、カリキュラムの連続性を見いだすことが困難です。
これに関して、昨年末、プログラミング学習を学校での学習のコアに位置づけ、先進的なICT教育を展開してきた、多摩市立愛和小学校による「プログラミング」の授業に触れる機会を得ました。
あくまでも小学校での実践ですので、中学・高校に向けてどのようなカリキュラムを構築していくべきかについてはわかりません。
また、お伺いした範囲内では「低学年」と「中学年・高学年」というくくりでのご説明しか伺えなかったため、中等教育へのつなぎとなる肝心な部分が曖昧になっているとも思います。
が、さまざまなフリー・ソースを使い分けながら、子どもたちの発達段階にあったプログラミング言語を探しているという点、またその組合せ方は、プログラミング学習におけるカリキュラムのありかたを考えるうえで、参考になる部分があるのではないか、と考えます。
低学年
①SCRATCH Jr.(スクラッチ・ジュニア)
「お話(ストーリー)」づくりのひとつとして、プログラミングに取り組む
中学年~高学年
①Scratch(スクラッチ)
絵を動かして、ゲームを作成する
②Tickle(ティックル)
2次元のアニメーションを作成する。また、BB-8を動かすプログラムを構築する。
米国で使用されている教育プログラム。幼稚園から高校までを通じて、プログラミングの基本原理を学ぶカリキュラム「Code Studio」が公開されており、それを通じて学習を進めることができる。
愛和小学校では、一筆書きをするプログラムを組んでいくことで、プログラミングを学んでいる。
「Code.org」は、「プログラミングを全米の教育カリキュラムに組み込むこと」を目的としたNPO団体であり、「Kindergarten(幼稚園年長)から高校までの生徒に、ガイド付レッスンを通じてプログラミングの基本概念に興味を持たせる、ツールとカリキュラムを合わせたセット」も公開しています(Code.orgのCode Studioは、子供たちにプログラミングを教えるためのツールとカリキュラム | TechCrunch Japan)。
そのような意味で、「Code.org」につなぐことで、その後はここで提供されるカリキュラムに沿いながら、高等学校までのカリキュラムを考えていくこともできるのかもしれません。
とはいえ、「Cord.org」のカリキュラムに組み込まれているのも、あくまで、プログラミングの基本原理まで。「Java」や「PHP」などの特定のコードの学習にどのようにつないでいくか、という点については、もう少し丁寧な議論が必要なのかもしれません。
・・・と言いつつ、残りの問題が、いわゆるコーディングだけなのだとしたら、今年ついに日本語版がリリースされたことで話題になった、イスラエル発のコーディング学習ゲーム「Code Monkey(コードモンキー)」が、次なるステップになりえるのではないか、なんて妄想してしまいます。
「Code Monkey」では、Coffee Scriptというプログラミング言語を学習できるのですが、これが「Javascript」にコンパイルできるのです。
ここまで来れば、もうあと少しだ!・・・という感じがしますね。
文部科学省が本格的にプログラミング学習に乗り出した、という意味では、昨年はまさに「プログラミング学習元年」といえるかもしれません。
まだまだ、学校教育の世界では、プログラミング教育の賛否も含めてあまり議論されていない現状がありますが、おそらく今年1年で、そのような状況も大きく変わっていくのではないか、と思います。
その1年をどのように過ごしていくか、を私自身、これからもっともっと考えていかなければなりません。