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Literacy, Culture and contemporary learning

岡本太郎「太陽の塔」の著作権~こだま芸術祭「太陽の塔プロジェクト」~

埼玉県本庄市児玉郡エリアで開催されていた「こだま芸術祭」に行ってきました。

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kodama-art-festival.info

「こだま芸術祭」は、1969年に設立されたこだま青年会議所の50周年記念事業ということで、公益社団法人こだま青年会議所による主催。

 

これまでも、多くの地方自治体が主催となって、地方の芸術祭やアートプロジェクトが行われることは多々あったし、後援、協力のなどのかたちで、青年会議所などが名を連ねることもあったとは思うのですが、ついに、青年会議所の単独主催で芸術祭やアートプロジェクトが行われる時代になったのですね…!

 

そんな「こだま芸術祭」の中で、戸矢大輔「太陽の塔プロジェクト」と名付けられたプロジェクトが展開され(戸矢 大輔 | こだま芸術祭)、11/5より、本庄市にある上里建設駐車場敷地内にて、「太陽の塔」の模索が展示されるいういうことで、話題になっていたようです。

地元の新聞(上毛新聞)でも記事として取り上げられていました

www.jomo-news.co.jp

 

この記事によると、本作の制作者である戸矢大輔社長(上里建設の社長をなさっている方なんですね!)は、「大阪万博が開かれた1970年ごろの熱はすごい。美術には空間を変える力があり、この街の雰囲気を変えられればいい」という熱い思いで、本作の制作に着手されているようで、きっと、本作は、岡本太郎太陽の塔》へのオマージュという意味合いもあったのではないか、と思います。

 

その上で…、ほぼ職業病的に心配になってしまったのが、この作品の著作権処理に関してです。

新聞記事にも掲載されて話題になっているくらいの作品ですしきっとなんらかの対応はなさっているはず…だとしたら、どのようにしたらこのような作品の展示がOKになるのかしら、と思い、岡本太郎作品に関する著作権管理を行っている現代芸術アトリエに問い合わせてみたところ、次のようなご回答をいただきました。

 

弊社には主催者や製作者から相談や通知などは一切なく、本日お知らせをいただき初めて知りました。(2018/11/19 現代芸術アトリエからの回答)

 

…特に、許諾がとられていたわけではなかったんですね…。

 

そうだとすると、これは「著作物が自由に使える場合」に当てはまるということなんでしょうか。

www.bunka.go.jp

 

文化庁ホームページ内「著作物が自由に使える場合」を見てみると、著作権法第46条に「公開の美術の著作物等の利用」というのがあり、「屋外に設置された美術の著作物又は建築の著作物は,方法を問わず利用できる」とあります。

 

…おっ!

太陽の塔》が、美術作品か建築物かという議論はさておき、「方法を問わず利用できる」のであれば、やっぱりこれは、「自由に使える場合」に当たるのか?

 

と思って、最後までこの項目を読んでみると、「(若干の例外あり(注6))」という文字が目に入ります。

では、「若干の例外」とはいったいなんでしょうか?

 

(注6)公開の美術の著作物等の利用の例外
(1)彫刻を彫刻として増製し,又はそれを公衆に譲渡すること。
(2)建築の著作物を建築として複製し,又はそれを公衆に譲渡すること。
(3)屋外に恒常的に設置するために複製すること。
(4)もっぱら販売目的で美術の著作物を複製し,又はそれを販売すること。 

 

太陽の塔》が「彫刻」にあたるのか「建築」にあたるのかという議論はさておき(しつこくて、すみません)、「彫刻」であっても「建築」であっても、それを増製・複製することは、やはり、「自由に使える場合」には当てはまらない(=利用の例外) ようです。

 

そうだとすると、この「太陽の塔プロジェクト」は、どのようにして、著作権法上、展示可能になっているのか、がますます気になります。

著作権管理者の許可も得ておらず、著作権法上の自由利用の範囲外(少なくとも、文化庁のホームページなどで、少し調べただけなので、もっと他にも著作権に関する細かな自由利用可能条件があり、それが適用されるということなのかもしれませんが)にあるとしたら、この展示は、著作権法上、問題があると言わざるを得なくなってしまうのではないか、と思ってしまいます。

 

わたしは、この芸術祭の運営について詳しいことを知っているわけではないので、これ以上、何かをいうことはできないのですが。

アーティストをはじめとした人々の表現をあつかう「芸術祭」であればこそ、人々の表現を守る権利である著作権についても、大切に扱われているはずであってほしい…と祈らずにいられません。