kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

パフォーマンス心理学関連シンポジウムの報告書が公開されました

2019年3月に参加してきたイーストサイド・インスティテュート(East Side Institute)イマージョンプログラムで得た経験や知見をなんとか日本につなげたい!という思いから、2年間にわたり、日本質的心理学会大会での会員企画シンポジウムの企画にかかわってきました。

私たちが、ニューヨークでのプログラムを終えて、日本に戻ったのが3月中旬。それから数週間後に公開された、ロイス・ホルツマン(Lois Holzman)先生の記事があまりにもうれしくて感涙した記憶は、それから3年以たった今でも、リアルです。

loisholzman.org

私自身のイマージョンプログラムの報告(一部)はこちら。

 

kimilab.hateblo.jp

 

これらの企画は、日本認知科学会・教育環境のデザイン分科会(SIG-DEE)に共催で行われていたのですが、そのおかげで、これらのシンポジウムのオンライン報告書を作成・公開することができました!

 

1.「関係を紡ぐ言葉の力/言葉を紡ぐ関係の力―『言葉する人(Languager)の視点から心理療法・教育・学習を横断的にとらえなおす」(日本質的心理学会第16回大会, 2019年)(PDF)

イマージョンプログラムのなかで印象的だったセッションのひとつに、グウェン・ローウェンハイム(Gwen Lowenheim)先生の「日本語と遊ぶ(Playing with Japanese)」というセッションがありました。

そのなかで、キーワードとして何度も使われていた「Languager」という言葉に焦点をあてながら、「言葉を使用する種でもあり、言葉を創造する種でもある人間」という視点から、分野横断的に、人間の発達・学習というものを捉える理論的ベースを創れないだろうか、と思い、青山征彦先生(成城大学)とともにこのようなシンポジウムを企画しました。

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2019年度シンポジウム表紙

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2020年度シンポジウム情報

松嶋秀明先生によるご発表は、松嶋先生のご著書『少年の「問題」/「問題」の少年』(新曜社)で報告されているフィールドワークの成果を、パフォーマンス心理学的な観点からとらえなおしたもので、非常にエキサイティングでした。ここでの議論は、新曜社ウェブマガジン「クラルス」での連載記事「『道具と結果方法論』から見た学校臨床での議論にもつながるもので、あわせて読むと、本連載記事でその後展開されているディスカッション部も含めて、ひとつのフィールドワーク事例から、議論が広がっていく感じがして、面白いです。

clarus.shin-yo-sha.co.jp

 

 

2.「知識偏重社会への警鐘―『知らない』のパフォーマンスが未来を創る」(日本質的心理学会第17回大会, 2020年)(PDF)

ロイス・ホルツマン(2020)『「知らない」のパフォーマンスが未来を創る―知識偏重社会への警鐘(原著名:Overweight Brain)』(ナカニシヤ出版)の出版を記念して開催されたシンポジウム。

本書の編訳者であり、ロイス・ホルツマンらによる「パフォーマンス心理学」の議論を日本へと紹介・普及してきた、茂呂雄二先生による「パフォーマンスとは何か?」「パフォーマンス心理学が日本での議論にもたらす示唆とは何か?」についてのプレゼンテーション。

佐伯胖先生による本書およびロイス・ホルツマン『遊ぶヴィゴツキー:生成の心理学へ』(新曜社)への本質をついたクリティカルなコメント発表「パフォーマンスはあやしい!」

そして、それをめぐる本書の訳者陣と、サトウタツヤ先生による(口頭およびチャットでの)ディスカッション。

……と、今考えてみると、パフォーマンス心理学の今後の日本での展開を考えるうえで、かなり重要なイベントになったな…!と思えるシンポジウムでした。

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2020年度シンポジウム表示

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2020年度シンポジウム情報

このシンポジウムの記録が残せて、本当によかったです。

本書の訳書出版のために開催した、第1回翻訳検討会を開催したのが2018年12月…思えば遠くまできたものです。

 

kimilab.hateblo.jp

 

わたしは当日の口頭での議論には、ほとんど参加できていませんでしたが、チャットでの情報提供を頑張りました!

オンライン報告書では、複数のチャンネル上で展開されながら「渦」をつくっていくような議論の展開をどのように「記録化」できるか、自分なりにチャレンジしてみたつもりです。

オンラインでの議論の場は、おそらく今後も続くであろう現在。

ぜひこれをきっかけに、オンラインでの議論についての「記録化」の仕方についても、いろいろな人と議論していきたいと思いました。

 

以下に示すのは、これまでに出版されている、ロイス・ホルツマンやフレド・ニューマン、イーストサイド・インスティテュートにかかわる研究者・実践家による、パフォーマンス心理学関連書籍です。

わたしがこの分野ではじめて翻訳にかかわったのは、2016年に出版された、キャリー・ロブマンほか『インプロをすべての教室へ』(新曜社)でした。

 

kimilab.hateblo.jp

フレド・ニューマン&ロイス・ホルツマン(2020)『  革命のヴィゴツキー』(新曜社)のような重厚な理論書までをも含む7冊もの書籍が日本で出版され、日本語でそれらを読むことができる(!)という事実に、あらためて感動を覚えます。