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ミスリード情報をリツイートしてしまった話――フェイクニュースとの付き合い方

先日、BuzFeed  Japanによるファクトチェック記事「新型コロナワクチン、「感染予防効果なし」は誤り」が公開されました。

www.buzzfeed.com

マスメディアによる、いわゆる「反ワクチン」報道については、これまでも話題になってしましたが、それに対して、BuzzFeed  Japan がファクトチェックを行い、専門家にヒアリングを行いその見解を紹介する、というかたちで切り込んだかたちになります*1

そして今日は、同じBuzz Feed ニュースで、「反ワクチン」報道記事の削除が相次いでいることが取り上げられていました。

www.buzzfeed.com

 

新型コロナウイルス関連の報道に関しては、実は、わたしも反省(懺悔)しなければならないことがあり、そのことについて、ここで記しておきたいと思います。


1月中旬頃、都営大江戸線運転士の集団感染(新型コロナウイルスへの集団感染)に関して、運転士らが使用していた洗面所の蛇口を介して感染が広がったのではないか、というニュースが複数のメディアで報じられました。

以下に示す読売新聞の独自取材記事がもととなり、読売新聞で報道されたあと、共同通信でも報道があり、NHKニュースや民放でも放映されました。

www.yomiuri.co.jp

大江戸線運転士の集団感染、蛇口経由拡散か(共同通信) - Yahoo!ニュース

洗面所の蛇口介し感染か 都営大江戸線の新型コロナ集団感染 | 新型コロナウイルス | NHKニュース

 

そして、このニュースに関しても同様にBuzzFeed Japanで検証したところ、このニュースが「ミスリードであるという評価がなされました。

www.buzzfeed.com

 

じつは、私、読売新聞の独自取材記事が、オンラインで公開されていた時に、この記事を自分自身のTwitterリツイートしていました。

その後、1月23日に、フォローしていたファクトチェック・イニシアティブのアカウントで、以下のツイートを拝見し、驚いて記事本文を見てみたところ、「洗面所の蛇口が感染ルートであった」という説明が、あくまで、対応した保健所から出されたひとつの可能性に過ぎず、専門家からも疑義が呈されていたことがわかりました。

 

 

メディアリテラシー教育研究者の端くれとして、フェイクニュース(とまでは言えないですが)の拡散を防止するどころか、拡散に加担してしまった(!)ということにショックを受けると同時に、わからないことだらけで、かつ日々変化していく未知のウイルスの存在に直面している現在、今回のような情報の拡散を完全に防ぐことは(ほぼ)不可能である、ということも思い知りました。

 

たとえば、NHK for School『週刊メディアタイムズ』には「フェイクニュースを見抜くには」という回があり、ここで示されているポイント(資料PDF)を見てみると…

 

「発信元を探る」

「他のメディアを調べてみる」

「文章の表現に着目」 

 

…とあり、完全な「フェイクニュース」はもちろん、今回のような真偽の不確かさをもつニュースであっても「他のメディアを調べてみる」は有用だと思っていたのですが、読売独自取材→共同通信(通信社)→報道各社…というルートで、同じニュースが掲載されていると、さすがにこれに対して、真偽が不確かな情報だと思うのは難しい。

その段階になると、むしろ読み手の側の「ニュースリテラシー」によって、情報の確からしさを、他のニュース同様に吟味するなかで、自分自身の対応を決めていく必要がありそうです。SNSの拡散という段階で防ぐのは難しいし、情報のスムーズな流通が滞るというデメリットの方が大きそうです。

 

そうであるとすると、私たちができるのは、「ミスリード」するような情報は存在する、ことを前提に、ニュースと付き合っていくことなのだと思いました。

予防線として、今回、私がそうであったように、ファクトチェック団体のSNSをフォローしておく、など、いつでもファクトチェック情報にアクセスできる環境を整えておくことは有用そうです。そして、自分が拡散した情報が、誤情報あるいは真偽が不確かな情報だと思ったときに、それを積極的に拡散していく(…といっても、そういう情報はなかなか拡散してもらえないのですが)ということが、求められるのかもしれません。

 

そういう自分自身のメディア環境をデザインすることも含めて、「ニュース・リテラシー」「メディア・リテラシー」を考えていく必要があるように思います。

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大日本タイポ組合「文ッ字」展・展示作品より

 

*1:この記事内容について、当初、「ファクトチェック・イニシアティヴがファクトチェックを行い…」と記載していましたが、読者の方から、実際に検証を行ったのはBuzzFeedであるというご指摘をいただきましたので、記事内容を訂正しました(2021/1/27)。