kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

学習マンガの読み比べ@マンガピット~伝記マンガ編

2022年3月末にオープンした、マンガ×学びの拠点「マンガピット」
以前、こちらのブログ記事でも、このときの訪問レポートをアップしておりますが、このたび、教職大学院の授業の一環として、「マンガピット」での出張講義を行ってきました。
kimilab.hateblo.jp

教職大学院の授業は、基本的に、1回あたり2コマ(90分×2コマ=180分(3時間))。そのため、15:00集合・18:00解散の予定でスケジュールを組みました。
具体的なスケジュールはこんな感じです。

マンガピットでの授業スケジュール

はじめに、集まった人たちで「わたしとマンガ」というテーマで自己紹介をしあったあと、その話の流れで、「学び×マンガといえば?」というテーマで自由にいろいろ話しあいをしました。
このフリーディスカッションでは、かなりいろいろな話題が出ました。

「学び×マンガといえば?」

国語科の授業において読解対象の理解を促すための副教材として用いられるマンガ(例:「源氏物語」を理解するための副教材としての大和和紀あさきゆめみし』)や、マンガによって誰かから離される「話」をよく理解できるようになったといったエピソードのみならず、「LLマンガ」の話、『マンガノミカタ』で紹介されているようなマンガ表現の読み方についての話まで出てきました。
mediag.bunka.go.jp

その後、「これも学習マンガだ!」のプロジェクトや、「マンガピット」の蔵書内容についてご案内いただいたのち、本日のメインの学習活動として考えていた「学習マンガの読み比べ」を行いました。

上に示したスケジュールでは「演習1」「演習2」と2つ用意していたのですが、今回は、「演習1:ノンフィクション・知識に関する本としての『マンガ』」のみを行うことにしました。
そのなかでも、今回取り組んでみたのは、「伝記マンガ」の比較です。

「マンガピット」の蔵書には、いくつかの特徴があり、それを言い尽くすことは難しいのですが、「伝記マンガ」に関しては次のような2つの大きな特徴があるといえます。

(1) 複数社が発行する学習まんがシリーズを揃えていること。
(2) 「ストーリーマンガ」として発行されている「伝記マンガ」も所蔵されていること。

そのためスティーブ・ジョブズ」に関しては、なんと4作品の比較が可能(!)です。

今回は、時間が限られていることもあり、そんなにたくさんの比較をすることはあきらめて、2社くらいで比較ができそうな歴史上の登場人物をとりあげて、比べ読みをしてみることにしました。

その結果、今回見てみることになったのは、ジャンヌ・ダルク(2作品)」「宮沢賢治(2作品)」「ヘレン・ケラー(4作品)」、「紫式部(2作品)」の4人。

わたしは、「紫式部」をとりあげ、『清少納言紫式部小学館版 学習まんが人物館)]』(小学館)と『紫式部: はなやかな王朝絵巻『源氏物語』の作者 (学研まんがNEW日本の伝記)]』(学研)を比較してみることにしました。
…が、比較してみると、かなりキャラクター性が違っていて「これ、同じ人物か?」と言いたくなります。

比較して読みながら、「この違いは、監修している研究者の違いによるものかなぁ…?」とぼんやり考えていたのですが、最後に共有した結果わかったのは、同じ監修者によって監修されていた「ジャンヌ・ダルク」であっても、2作品のキャラクターは(真反対ともいえるほど)違っていたということ。
たしかにジャンヌ・ダルクであれば、どんなキャラクターの描かれ方であっても、「それこそが、正解!」とはならないとは思うのですが、通常、学校図書館や公立図書館に設置されている学習マンガは1社分で、そのシリーズのその作品だけでその人物に出会うことを考えると、どの「伝記マンガ」と出会うかで、その人物に対する印象がかなり違ってしまいそうだな…という印象を受けました。

そう考えてみると、「どの学習マンガを図書館に採用するか」を考えるべき立場にいる人たちが、一度、このようなかたちで、複数のシリーズの学習マンガを比較読みしながら、各作品やシリーズの特徴について、あれこれ言い合ったり、自分なりの見方をもっておくことは大切なことであるように思います。

今回は、「学習マンガの読み比べ」企画の第1弾として、自分が興味ある「伝記マンガ」をとりあげてその比較を行ってみました。
…が、「伝記マンガ」ひとつとってもまだまだ切り口はありそうですし、「学習マンガ」に広げてみてもやれることはたくさんありそうなので、教職大学院の授業のみならず、いくつかの機会をつかまえて、「学習マンガ比較」をいろいろな人たちと、継続的にやってみたいと思います。

評論文や説明文にかかわるマンガ比較もやってみたい企画のひとつなので、ぜひ関心のあるかたは、お声がけください。