kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

遠くから思いを馳せざるをえない時代のアートー「メゾン・ケンポクの何かはある2020」アーカイブサイト

昨年(2020年)1~3月に開催されていたメゾン・ケンポクの「何かはある」。

メゾン・ケンポクの『何かはある』(メゾン・ケンポク、茨城県北各地)

今年開催が予定されていた「何かはある2021」も、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、一部プログラムが休止したり、開催形態が変更になっているようです。

maisonkenpoku.com

いま、振り返ってみると、昨年度の「何かはある」も、まさに、新型コロナウイルスによる社会生活への影響が少しずつ、そして、確かにはっきりと、生活のなかで感じられてきていた時期に開催されていました。

 

その「何かはある2020」のアーカイブ・サイトが公開された、とのお知らせをいただきました。

maisonkenpoku.com

このブログにも記事を掲載した、松本美枝子《海を拾う》レビューや、華雪さんによるワークショップ《和紙に文字を植える》のレポートも、アーカイブサイトに記事をご掲載いただいています。

 

kimilab.hateblo.jp

 

kimilab.hateblo.jp

 

松本美枝子《海を拾う》に関しては、上記ブログ記事でもご紹介しているわたしのちいさなレビューと一緒に、小松理謙虔さん(ローカル・アクティビスト)によるかなり詳細な作品レビュー「石が問う、産業と地域、そして芸術」も掲載されています。

-松本美枝子《海を拾う》レビュー「石が問う、産業と地域、そして芸術」/小松理謙虔さん(ローカル・アクティビスト) 

同じ作品に対する複数のレビュー(しかも、小松さんのレビューは、私が書いたようなライトでフワフワッとしたものではなく、小松さんご自身のこれまでの経験に根差しながら、本作から地域とアーティストとの関わりに関する深い考察を導き出した、かなり骨太なレビューです!)が、ひとつのページのなかに並べられていて、それらを見ることができる、というのは、なかなか素敵なこと。

普段から、自分が見た/経験した作品やプロジェクトに対しては、いくつかのレビューサイトを見比べたりもするけれど、それが本サイトのなかで、主催者側の企画として実現されている、というのが素敵です。

さらにいえば、もともと、松本美枝子《海を拾う》の映像によるドキュメント/レビューとして制作された鈴木洋平監督による派生作品《短編映像|海を拾う》も掲載されていて、文字(テクスト)によるレビューとはまた異なった視点で、《海を拾う》という作品を「経験」(ここはあえて「経験」と言いたい)することができます。


松本美枝子「海を拾う」

 

 松本美枝子さんといえば、2014年に行われた「鳥取藝術祭」での美枝子さんの仕事がとても印象的でした。

芸術祭の「広報」という枠で行われたものであるにもかかわらず、「鳥取藝術祭に来られない人」、遠くからこのプロジェクトに思いを馳せる人たちに向けた、写真+テキストによる作品(とあえて言いたい)が実現されていて、非常に感銘を受けた記憶があります。 

kimilab.hateblo.jp

 そんな松本美枝子さんが、『未知の細道』での連載のなかで、同様に、現地に来られない人たちにとっての「演劇」のありかたを探った、長島確とやじるしのチームによる「←(やじるし)」のプロジェクトについての記事を書かれていたのも、とても面白い。

www.driveplaza.com

さらにいえば、昨年は、ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020の《BOOK PROJECT|そのうち届くラブレター》にも、アーティストとして参加されていて、山本高之《悪夢の続き》への「応答」として、誰かによる「見せたい風景」をピンホールカメラで撮影された写真群を作品として展示されていたのが印象的でした。


山本高之《悪夢の続き》 Takayuki Yamamoto The Nightmare Continues, 2020

(BOOK PROJECTの感想も書こうと思って書けていない…できていないことが多すぎますね)

 

新型コロナウイルスの影響で、「現地に行くことができない」「遠くから思いを馳せることしかできない」という状況のなかで、今後、松本さんがどのようなプロジェクトを今後展開していくのか、ますます楽しみになるようなアーカイブサイト公開のお知らせでした。

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松本美枝子《海を拾う》展示作品の一部