kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

大学内イベントとしてオンライン上映会を開催する~YNUプライド2020「カランコエの花」ZOOM上映会

2020年6月10日に、横浜国立大学・長谷部学長(学長でもあり、ダイバーシティ戦略推進本部長でもある)が「プライド月間 学長メッセージ」(PDF)を公開しました。

「6月は、LGBTQIA等、性的少数者の人権を尊重し、社会の中の多様性を考えるプライド月間です」という文言から始まり、「アンコンシャス・バイアス」の問題が広く存在することへの認識を示したメッセージです。

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「プライド月間学長メッセージ」

この「プライド月間 学長メッセージ」の公開にともない、ダイバーシティ戦略推進本部のある先生から、ぜひ「プライド月間(=6月)」に、本学の取り組みの第一歩となるようなイベントを開催したい、という相談を受けました。

とはいえ、世の中は、新型コロナウイルス感染予防のため「三密」回避が求められている状況。横浜国立大学も、7月2日からは入構規制緩和が行われたものの、春学期中の授業はすべて遠隔講義、さらに6月中は入構規制も厳しい状況で、会議などで教職員で集まることすらほぼ不可能という状況でした。

そのため、「なにか、遠隔(オンライン)でできることを」という条件も加わり、わたしが提案したのが、オンライン映画上映会でした。

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YNUプライド2020「カランコエの花」Zoom上映会チラシ

本上映会開催されたのは、6月25日でしたが、その後、参加してくださった教職員の方などから、「どのようにオンライン映画会を開催したのか、知りたい」というご要望もいただきましたので、今回、どのような手続きや準備を行ったのか、について簡単にまとめておきたいと思います。

 

1.図書館が購入した映画DVDの上映を考える→実現せず

まず、横浜国立大学図書館で所蔵している映画DVDの上映を考えました。

横浜国立大学図書館に『ハーヴェイ・ミルク』や『ハッシュ!』のDVDが所蔵されていることを知っていたこともあり、これらを上映することができるなら、それが一番ハードルが低いと考えました。


映画『ハーヴェイ・ミルク』日本版予告編

 

今回の上映会は、教職員・学生の研修を目的に、非営利・無料で行われることは決まっていたため、著作権法第38条(営利を目的としない上演等)第1項が適用可能なのではないか、と考えたのです。

図書館が購入した映画ビデオの上映会を図書館の会議室で開催するには、権利者の許諾が必要でしょうか。 | Copyright Q&A 著作権なるほど質問箱

著作物が自由に使える場合 | 文化庁

 

…が、「公表された著作物を上演・演奏・上映・口述することができる」とはあるものの、オンライン上映会は「公衆送信」に当たってしまうため、これは適用できないのではないか、ということで、実現されませんでした。

 

2.自主上映会としてのオンライン上映会の可能性を探る

そうなると、公衆送信による「自主上映会」を開催する、という条件をきちんと説明したうえで、上映をお認めいただける配給会社などを探すしかありません。

折しも、cinemo by United People「Zoomでのオンライン上映会の開催方法」をホームページ上で公開していましたので、cinemoが提供している映画であれば、比較的、オンライン上映会開催へのハードルも低くできそうだ、と思いました。

「Zoomでオンライン上映会」開催方法|cinemo

…というわけで、次に候補にあがったのが、『ジェンダー・マリアージュ』。

www.cinemo.info

その他、UPLINKの「自主上映のご案内」を見たり、合同会社東風のサイトを見たり、いろいろとリサーチはしました。

今回は実現できなかったけど、東風では『恋とボルバキア』が提供されていることがわかったので、ぜったいいつか、上映会を実現したい…!という思いが高まりました。 

kimilab.hateblo.jp

そのようなかたちで、いくつか候補を挙げ、主催者である部局の先生方にお伺いしたところ、今回は、学校を舞台にした作品である『カランコエの花』を上映したい、というお話になり、『カランコエの花』を上映することに。

 

kimilab.hateblo.jp

 

3.「カランコエの花」HPから上映の連絡をとる

カランコエの花』は、トップページのいちばん最後に「お問い合わせフォーム」があり、そこに親切にもわざわざ…

「映画「カランコエの花」に関するお問い合わせフォームです。劇場での上映の他、学校・企業・自治体などの非劇場での上映も承っております。

…と記載されていたので、安心して連絡をとることができました。

「お問合せ内容」の「上映について」にチェックをしてら連絡をとると、すぐに、上映に関するご案内をいただくことができます。*1

 

4.オンライン上映会開催に向けて(マニュアル・参加登録)


このとき、「オンライン上映会をどのようなかたちで実施するのか」、参加者数のカウントや、参加者以外が上映作品を閲覧していないということの確認方法について尋ねられたため、このときは、cinemoがオンライン上で公開している『Zoomオンライン上映会開催マニュアル』(PDF)にしたがう」という回答をしました。

 

★ 『Zoomオンライン上映会開催マニュアル』(PDF)

 

ただし、このマニュアルでは、「人数カウントのため「登録」を「必須」に」という方法が推奨されているのですが、横浜国立大学でのZoom利用におけるセキュリティポリシーの中で、「Zoom利用時、(個人情報保護のため)学生には、氏名表示をさせない」というルールがあったため、このルールを適用しての開催はできない、ということが判明。

そのため、以下のように事前参加登録を行うかたちで、参加者を確認することにしました。

 

(1) 参加希望者(教職員・学生とも)に、上映会開催日前日までに、オンライン・フォームから参加登録を行ってもらう(大学公式メールアドレスからのみ参加申込可とし、氏名・連絡先メールアドレス等を記載)

(2) 上映会当日午前中までに、「参加者ID」を配布

(3) 上映会参加時には、Zoomにサインインする際に、「氏名」欄に「参加者ID」or「参加登録氏名」を記載する

 

…なお、参加者数が30名を超えたため、ひとりひとりに「参加者ID」を記載したメールをお送りすることが難しい、ということになり、①学生のみに、1人1人「参加者ID」を付与し、1人1人にメールを送付することとし、②教職員には「参加者ID」ルール(例:「YNUpride+(採用年4桁)」)のみをお知らせすることにしました。

 

当日、これで参加登録者の確認を行っていたのですが、どうも、Zoomでの「氏名表示」の変更の仕方がわからない方がたがいらっしゃったらしく、部署名(?)で何度も「待合室」に入ってこられる方がいらっしゃいました。

オンライン上映会に限らないことだとは思いますが、事前に、以下のことをお願いしておくことは必要なことだと思います。

 

①Zoomのアプリをダウンロードすること(ウェブ・ブラウザ―からでは適正な品質で映像が見られません。かなり映像・音声が乱れるようです)

 

②Zoomを最新版にアップデートしておくこと(時間ギリギリに入ろうとしたときに限って、突然、アップデートが始まったりします

 

③不安な人には、「氏名表示」の変更、マイク・カメラOFFの設定を練習しておいてもらう

 

④有線LANに接続できる環境で参加することを、推奨する

 

5.当日の運営

当日の運営については、ほぼ、『Zoomオンライン上映会開催マニュアル』(PDF)に記載されているとおりの設定をすれば、問題なくできそうでした。

 

① ミーティング作成時に、「入室時に参加者をミュートにする」をチェック

 

② 画面共有を「ホスト」のみ「可」にする

 

③ チャットを「OFF」にする

また、「当日の運営」ということではないですが、オンライン上映会の場合、通信できる画像の品質に限りがあるので、「Bru-lay」ではなく、「DVD」を使用したほうが良いと思います。…というか、どちらでもOKなのですが、「Bru-lay」に対応しようとして高画質送信できる設定にすると、トラブルが発生する参加者が出てくる可能性が高そうでした。

 

以上です。

参加者数が40名未満と少数であったからかもしれませんが、大きなトラブルもなく、無事にオンライン上映会を終えることができました。

 

おそらく今後も、なかなか、集まってなにかを開催するということが難しい状況は継続するように思います。

そのような時代において、なにか研修会などを開催したい、というときのひとつのアイデアとして「オンライン上映会」という選択肢があることを、お伝えしたいと思い、この記事を書きました。どこかで、だれかの、何かの参考になればうれしいです。

*1:残念ながらわたしは、入力するメールアドレスを間違えるという大失態を犯してしまったため、連絡がとれるまでにものすごく時間がかかりました…本当に申し訳ない…