先週末、4月25日(土)に、スパイスとヒト(山形県鶴岡市)1階スペースにて、「ゼミマンガトーク~「次はキミの番」になりたかったアナタへ~」を開催しました。

会場内に展示された、300冊近くの「ゼミマンガ」
昨年12月と今年2月にオンライン開催された「進研ゼミDM講座」*1の第3回イベントという位置づけともなる本イベント。
今回は、初の対面(オフライン)開催!ということで、「進研ゼミDM講座」に登壇してくださったヒデヨさん、伊藤崇先生(北海道大学)それぞれが持っている「ゼミマンガ」*2コレクションをお持ちいただき、それを会場内に展示することにしました。
その数、なんと…300冊近く!

会場内では、ヒデヨさんの「進研ゼミ」DMマンガコレクションと、伊藤崇先生の「こどもちゃれんじ」DMコレクションを2つのコーナーにわけて展示しました。
こちらの写真は、膨大なコレクションを時系列、学年別に並べて展示したコーナー。
この展示スペースの反対側にある、「ピックアップ」コーナーでは、伊藤先生、ヒデヨさんそれぞれのおすすめコメント付きで「ぜひ見ていただきたい」のゼミマンガ作品を設置しました。
「ピックアップ」コーナーには、たとえば、次のようなゼミマンガが設置されていました。
- 原作(プロット)を共有している「進研ゼミ」DMマンガ(ストーリー展開は同じなんだけれどもマンガ家さんが違う!)
- 同じマンガ家さんによって描かれたのではないか、と思われる「進研ゼミ」DMマンガ(時代を超えて少しずつ画風を変化させつつ、それでも変わらない特徴があるところに、ぐっときます)
- 子どもが生まれる前(妊娠期)から届く「こどもちゃれんじ」DMマンガ(もはやそれを「こどもちゃれんじ」DMマンガと呼んでいいのかどうかすら不明)
- 「こどもちゃれんじDM」が描き出す(創り出す!)子どもの発達段階(「こどもちゃれんじ」が創り出した「おむつはずれ(おむつはずし)」概念については、トークでも話題になりました。)
ひとつひとつのゼミマンガが短いとはいえ、「ピックアップ」コーナーに展示されているものだけでも、全部に目を通すのは、なかなか大変でした…。
展示されたゼミマンガ群を見てみる
イベントは、午後2時にスタート。
はじめに、「せっかく展示したコレクションを、見ていただきましょう!」ということで、30分ほど、参加者と登壇者とが一緒になって、展示されているゼミマンガを見てみる時間にすることに。
皆で、わいわいガヤガヤと、ゼミマンガを見ていると、自然に、さまざまな言葉がわきあがってきているのが聞こえてきます。
はじめは「こんなマンガ、あった、あった!」とか「このマンガ、自分のところにも同じようなのが届いていたかも」といった声がたくさん聞こえていたのですが、しばらく時間が経ってくると、「このマンガの画風は、○○に似ている!」とか「このストーリーは、なんともいえない」とか、ちょっと分析的(?)な言葉が聞こえてくるのが、なんとも面白いところです。
これだけたくさんの「ゼミマンガ」に一度に触れる機会なんてほとんどないので、それに触れるというだけで、つい考えさせられてしまう…ということがあるのかもしれません。
わたし自身は、これまで「学習マンガ」の読み比べイベントを開催してきました。
このときにも、ふだん触れることのないたくさんの資料が、比較可能なかたちで設置されていることで見えてくるものの大きさに感銘を受けたりしていましたが、今回も「読み比べ」ができる、ということで自然と見えてきたり、考えさせられたりすることがたくさんあったように思います。
進研ゼミDM講座ダイジェスト
展示された「ゼミマンガ」作品をひとしきり見終えたのち、今回の登壇者であり、資料提供者でもあるヒデヨさんと伊藤先生から、オンライン開催された「進研ゼミDM講座~第1回・進研ゼミDMマンガ編」および「進研ゼミDM講座~第2回・こどもちゃれんじ編」の内容紹介が行われました。

ヒデヨさんのトークでは、はじめに「進研ゼミ漫画を読んで次はキミの番になりたい奴ちょっと来い」でも書かれている、「進研ゼミ」DMマンガのストーリーパターンについての報告が行われたあと、「広告」「宣伝」という観点からみた進研ゼミDMマンガについての話題へと展開していきました。
「広告」「宣伝」のためのメディアとして「進研ゼミ」のDMマンガを捉えた場合、その最終的なゴールは、子どもに「次は自分の番だ!」と思わせることそのものではありません。どちらかといえば、保護者が「進研ゼミ」の提供する教育サービスを受けることを納得し、(他の教育サービではなく)そのサービスを選ぶことを決定し、サービス利用契約を結ばなければなりません。
これは、「進研ゼミ」と、塾や家庭教師とを隔てる大きなポイントでもあるため、非常に興味深いです。塾や家庭教師の場合、特に、小中学生向けのサービスであれば、その宣伝の対象としては、保護者が選ばれることが多いよう見えます。一方、「進研ゼミ」は、そうではない。あくまで、(少なくともはじめに)子どもに選ばれるサービスであろうとしています。
そのために、ここにズレ、矛盾が生じるわけです。ヒデヨさんは、これを解決するための仕組みとして導入されているシーンとして、「親を説得するシーン」の存在に着目します。「進研ゼミDMマンガ」は、「次は自分の番だ!」と思った子どもたちが、親を説得するためのシミュレーション教材、ロールプレイ教材的な役割を果たしているのではないか、とヒデヨさんは述べます。
そう考えてみると、「親を説得するシーン」の近くには、実際の教材の写真が掲載されていたり、具体的なサービスの情報が記載されたページも配置されていたような気がしてきます。
そうであるとすると、DMマンガにおける、ストーリーのためのコマ(ページ)と、情報のためのコマ(ページ)の配置のされ方なども気になってきて、ますます調べてみたいこと、知ってみたいことが増えていくかんじがします。
伊藤先生は、第2回講座でもご紹介いただいた「こどもちゃれんじ」内の登場人物、コマの特徴などを集計することによって見えてきたことの報告に加え、「こどもちゃれんじ」における電子玩具(「エデュトイ」)の描かれた方についての分析結果を発表((この分析結果は、日本認知科学会第42回大会で発表された内容でもあるようです。「音声を発する電子玩具と遊ぶ幼児はいかに描かれるか:「こどもちゃれんじ」ダイレクトメール内のマンガを対象とした分析」(日本認知科学会第42回大会・ポスター発表・P1-2)(PDF)))。
伊藤先生の報告内容は、オンラインイベントの際にも反響がありました。
母親には名前(固有名)がある一方、名前を有した父親はほとんど登場しないこと、マンガに描かれる父親の役割が非常に限定的であり、(1)子どもを溺愛する父親か、あるいは、(2)教材サービスを契約するか否かを決める最終的な決定者としてしか(ほぼ)登場しないこと……など、それが収集された当時においても多様化していたであろう家族の実態を考えると、どうしても、モヤモヤとしたものを感じてしまいます。
今回のトークでは、さらに、電子玩具(エデュトイ)の描かれた方についての報告もあり、「こどもちゃれんじ」のDMマンガのなかで、これらの玩具が、単純に「学習を達成するもの」ではなく、(子どもが玩具に夢中になることで)母親を育児負担から自由にするものとして描かれている、ということも報告されました。
登場人物などの数量的分析では、固定的な家族観が強調されるように見える一方で、電子玩具(エデュトイ)をめぐるエピソードでは、固定的なイメージとはちょっとだけ異なったイメージが描かれているような気もして、それらが、ひとつのマンガのなかで矛盾なくまとめられている、というのがなんだかとても興味深いことなのではないか、と思います。
参加者それぞれが語る「ゼミマンガ」
トークのあとには、ふたたび、参加者の方がたに展示されているゼミマンガを見ていただき、自分自身の「いちおし!ゼミマンガ」を見つけて、発表・共有してもらうことに。
今回のイベントは、10名の方にご参加いただいたのですが、すべての方が、それぞれのライフヒストリー(人生史)と、「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」、そしてゼミマンガへの思いをもって、「これぞ、いちおし!」と思うものを選んで、それを共有してくれたことに、感動を覚えました。
来てくださった方のなかには、「こどもちゃれんじ」から「進研ゼミ高校講座」まですべてをやりとげて有名国立大学に進学しました!という、「生粋のチャレメ(チャレンジメイト)」の方から、「全然やらなくて、積んでました~」という方まで、いろいろな方がいらっしゃいました。が、それぞれの人生のなかでの出会い方、抱いていた距離感がそれぞれに違うからこそ、見えてくるものがあったように思います。
これまでのオンラインイベントのなかでは、なかなか、実際に「キミの番」を「自分の番」にできた人の存在を考えることができなかったのですが、「自分の番」にできた人たちにとってのゼミマンガについてかんがえることができたことも、今回のイベントの収穫だったように思います。
「次はキミの番だ!」
「スパイスとヒト」というすてきな場所があり、そこに集まる人たちがいたからこそできた今回のイベントでした。が、今、振り返りながら、これは「終わり」ではなく「始まり」ではないか、という思いがしています。
今回のイベントがあったことで、ラジオ番組で、「あなたの知らないゼミマンガトークの世界」を取り上げていただいたりしたこともとても大きな出来事で…、まさに、次なる「始まり」を感じさせてくれるものでした。
※※このラジオ番組、終始、ヒデヨさんとシャドウくにもとさんが、ゼミマンガについてしゃべり倒しているうえに、途中、小芝居も入ったりしてとても楽しいので、ぜひ、皆さんに、ご覧いただきたいです。
この後、このイベントがどうなっていくのか、次回があるのかないのか…など、まだまったく未知数ですが、ご関心のあるかたは声をかけていただければと思います!
「次はキミの番だ!」

*1:「進研ゼミDM講座第1回」「進研ゼミDM講座第2回」は、図書館総合展/図書館とゲーム部の企画として開催されました。
*2:本イベントでは、「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」などの広告・告知を目的としたダイレクトメール(DM)の中に同封されているマンガを「ゼミマンガ」と呼んでいます。本呼称は本イベント独自の呼称であり、正式な名称、一般に流布し定着した名称などではありません。