明日(10/19)から開催される、日本質的心理学会第21回大会 にて、会員企画シンポジウム「「ゲームをつくること」による関係性のあみなおし―「クロスロード」を巡る近年の展開を中心に」というタイトルの会員企画シンポジウムを開催します。
シンポジウムは、10月20日(日)13:00~15:00の時間帯に、成城大学7号館722教室で開催予定です。
話題提供者に、「クロスロード:大洗編」の開発はじめ、茨城・大洗エリアでの展開や、台湾での展開など、「クロスロード」のその後を見守られてこられた李旉昕先生、と、「クロスロード」の発想を、外国につながる子どもたちを支援する人たちの語り合いの場につなぎ、自らの「声」を失いがちな支援員さんたちが、自分たちのことを自分たちで語る場を創出しようとしてきた松井かおり先生をお呼びしています。
お二人にはそれぞれ「「クロスロード:大洗編」から生まれるインターローカリティとは」(李旉昕)、「ゲーム製作でつくる私のことば,私たちのことば」(松井かおり)というタイトルで話題提供をしてもらう予定です。
指定討論者には、先日邦訳が発刊されたばかりのパトリシア・リーヴィー『アートベース・リサーチ・ハンドブック』の監訳者でもあり、自らも「アートベース・リサーチ」を実践されている岸磨貴子先生においでいただけることになりました。
もう大会前日にはなってしまいましたが、Peatixからの事前登録が必要とはいえ、当日参加も可能ということなので、ぜひおいでいただけたらうれしいです。
https://peatix.com/event/3961578
先週末に大会の抄録集も全文アップロードされていました(PDF版)が、わたしたちのシンポジウムの抄録は、69~70頁に掲載されています。詳細はそちらをご覧ください。
企画趣旨は、以下のとおりです。
1995年の阪神淡路大震災を契機に生まれた、ゲーミングシミュレーション・ツール「クロスロード」。その後の20年の時間のなかで、このゲーミングシミュレーション・ツールが、どのようなかたちで、新たな展開を生み出していったのか、その一旦を知り、「ゲーム」を通じたリサーチやアクションの可能性について考えていければと思っています。
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会員企画シンポジウム
「ゲームをつくること」による関係性のあみなおし―「クロスロード」を巡る近年の展開を中心に」
本シンポジウムでは,ゲーム――特に,過去に起きた出来事や,現在生じている出来事を題材としたゲーム――をつくることによってもたらされる,人々の関係性の「あみなおし」に着目する.
「ゲームをプレイすること」による関係性の変容については,矢守(2010)が,ゲーミングシミュレーション・ツール「クロスロード」を事例とし,インターローカリティという観点から,媒体としてのゲームを意義づけている.
過去・現在に生じる出来事の中で人々が感じた葛藤に基づいてつくられる「クロスロード」は,「防災」「災害」といった元来のコンテクストを越えて,「食のリスク」や「感染症」など,過去・現在(あるいは未来)のさまざまな危機的出来事によって生じる葛藤を記録・集積し,それをゲームというかたちで開くことで,人々が語りあう場をつくるためのツールとして,さまざまなコンテクストのなかで転用・専有(appropriate)されるようになってきているとすら言える.
このような「クロスロード」の特徴は,「クロスロード」の「つくり手」を専門家(研究者やゲームデザイナー)から,市井の人々へと転換することをも可能にしてきた.過剰な復興支援ゆえに自らの「主体性」を奪われてしまっている被災地の住民自身が自らの経験や語りに基づき「クロスロード」を作成し,それを用いたゲームプレイを行うという試み(李ほか,2019)は,その好例であると言えよう.
本シンポジウムでは,このような「クロスロード」の2010年代以降の展開に着目し,その実践・研究に関する話題提供を踏まえ,「ゲームをつくること」によって,いかなる人間関係のあみなおしが可能であるのかを考える.はじめに「クロスロード:大洗編」をはじめとした複数の場で「クロスロード」を作成する活動を行ってきた李旉昕氏,および,外国につながる子どもたちの支援・教育に関わる人々にとっての「クロスロード」の可能性に着目し,作成やプレイの場を設けてきた松井かおり氏が話題提供を行う.その後,「アートベース・リサーチ(Arts-Based Research)」を中心に,研究成果のさまざまな発信の仕方,教育や社会へのつなぎ方を研究してきた岸磨貴子氏が指定討論を行う.当日はこれらに基づき,フロアとともに「ゲームをつくること」による「あみなおし」について議論したい.
※本シンポジウムは,科学研究費課題20K02877・24K06256の一環で実施されるものである.