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国立国会図書館所蔵のゲーム資料の館内プレイ利用をするためのステップ

2024年7月6日、読売新聞オンラインで「国立国会図書館のゲーム3300点、利用は2年間で16件と低迷…「ゲーセン化」懸念しPR控え」と題する記事が公開されました。

www.yomiuri.co.jp

同記事によると、国立国会図書館では2022年6月より、同館が所蔵するゲーム資料の一部、3,300点を、試験的に館内でプレイ利用できるようにし始めたものの、2年間でその利用件数がわずか16件にとどまっているとのこと。

なぜ、そんなにも利用が低迷しているのでしょうか?

もちろん記事内にもあるように、(試験的な提供開始期間であるために)広報がほとんど行われてこなかった、というのも理由のひとつかもしれません。一方で、資料へのアクセスの困難さや、利用条件のハードルについても、1つ1つ、何がどのような意味でハードルとなりうるのかを考えていく必要があるでしょう。

そのため、今回、格闘系司書さんとともに、「図書館総合展2024」でその成果を発表することを目的として、国立国会図書館所蔵のゲーム資料に関する調査を行ってみることにしました。

具体的な調査報告は、図書館総合展2024の企画内で発表する予定ですが、ここでは、実際に、館内プレイ利用をするために、わたしが何をどのように調べ、行ったかについて報告します。

 

■目次

 

「じゃあ、行ってみよう!」と家を出る前に

先に伝えておきますと、国立国会図書館所蔵のゲーム資料を館内プレー利用するためのハードルはそれなりに高いので、記事だけを見て、なんの下調べも用意もなく、国立国会図書館に足を運んでみても、おそらく、ゲーム資料の館内プレー利用はできないでしょう。

ゲーム資料の提供が行われている「国立国会図書館 音楽・映像資料室」のページを見れば、基本的な利用申請の流れはわかりますが、ゲーム資料を館内プレー利用するために必要な具体的条件はわからないですし、そもそも、音楽・映像資料室備品として何のプレイ機が用意されているのかもわかりません。

 読売新聞の記事プレイステーション(PS)1~3だけだったゲーム機に、PS4やPSポータブル」も加えたと記載されているので、ここから備品としてPS1~4およびPSPがあることがわかりますが、館のページからはこの情報はわからないようです。

 

おおまかな館内プレイ利用の仕方の流れについては、松田真ゲーム寄贈協会代表理事)さんの「国会図書館でゲームをプレイしてきた」が参考になります。

 

 

 ameblo.jp

 

 

利用条件というハードル

はじめに直面するハードル、そして最大と言ってもよいかもしれないハードルが「利用条件」です。 

読売新聞の記事では、利用が低迷している理由として「開始時にほとんど広報を行わなかったこと」「調査研究目的に限定し」ていることに焦点が当てられています。

この「調査研究目的に限定」していることが、はじめのハードルです。

しかしこのハードルは、ゲーム資料に限られて存在するハードルではありません。「議員の調査研究に資するため」(国会法第130条)に設置された機関である国立国会図書館が、「調査研究目的」での利用を求めるのはある種当然であるともいえます。

事実、ゲーム資料の保管・資料提供を担当している音楽・映像資料室のページを見てみると、許可制の資料は、調査研究を目的とする場合に限り利用できます」と記載されており、「調査研究を目的とする場合に限り利用できる」のは、決して、ゲーム資料だけではないことがわかります。

わたしが、より大きなハードルであると感じたのは、音楽・映像資料室の「許可制の資料」に記載されていることとは異なる、もうひとつの利用条件でした。

それは「どのように成果を公表する予定か」読売新聞の記事より)を明らかにしなければいけない、というハードルです。

そう。国立国会図書館の所蔵のゲーム資料を、館内でプレイ利用するためには、①「調査研究目的(さらにいえば、公的・学術的な調査研究目的)」を具体的に明らかにすること、だけでなく、②(調査研究の成果の)具体的な公表予定や公表方法を明らかにする必要があるのです。

 

そのため極端なことをいえば、公表することが原則ではない卒業論文修士論文のための調査研究は、①の条件は満たすことができても、②の条件は満たせず、学会等で発表予定のない卒論・修論のための調査の場合、国立国会図書館所蔵のゲーム資料の館内プレイ利用はできない、ということになりそうです*1

 

 

館内プレイ利用可能な所蔵資料情報にアクセスするためのハードル

次に直面するハードルは、所蔵資料情報にアクセスするためのハードルです。

ふだんから「国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)」を使いこなしている方にとっては、ほとんどハードルにならないかと思われますが、ゲーム資料にアクセスしようとする方の中には、ほとんど「国立国会図書館サーチ」を使った方がいらっしゃらないかもしれません。

そういう方が、とりあえず「国立国会図書館サーチ」の検索窓に、知っているゲームソフト名(PS機でプレイ可能なもの)を打ち込んで検索しても、検索結果の見方がわからないのではないかと思われます。

そのような方のために、今回、わたしが情報を探したプロセスをご紹介しておきます。

 

国立国会図書館サーチ(NDL)サーチの「詳細検索」をひらく

国立国会図書館サーチ」のページを開いたら、まず、「詳細検索」画面を開きます。検索窓の左下くらいにわかりやすく表示されているので、ここでわからなくなる人はいないはずです。

どこかのタイミングで、「国立国会図書館」のチェックボックスに、チェックを入れておきます。

「ジャンル・形式用語」の「コンピュータゲーム」にチェックを入れる

画面下方に少しだけスクロールしていくと、「ジャンル・形式用語」という項目が出てくるので、そのなかの「コンピュータゲーム」のみにチェックを入れます。

調べたい・探したい目的に応じて、リスト表示形式を変える

どのようなゲーム資料を探したいのかに応じて、リストの表示形式を探すことをおすすめします。

今回わたしは「図書館総合展」での発表を行うために、社会・文化史的な観点から見てゲーム資料が保存されていることの意義を考えたいと思っていたこともあり、「出版年:古い順」で並び替えを行い、同じタイトルでもより古い年代のものを探すようにしました。

 

利用したい資料が館内プレー利用可能かどうかを確かめる

前述したように、プレイ利用可能なのは、PS1~4, PSP機でプレーできるもののみなので、その他のゲームソフトを館内プレー利用することはできません。

そのようなこともあり、自分自身が館内プレー利用したいと考えた資料が、利用可能なものになっているのかを確かめておく必要があります。

 

このときに、このページ内で表示されている国立国会図書館請求記号」(「アンジェリーク」であれば「YH239-209」)をメモしておくと、国立国会図書館の音楽・映像資料室「請求票」を記載するときに、わざわざ調べなおさなくてよくなります。

 

「閲覧許可申請書」というハードル

ここまで準備して、国立国会図書館音楽・映像資料室に行くと、書籍など他の資料の閲覧を行う場合でも必要となる「請求票」(ここにさきほどの請求番号を記載することになります)の他に、「閲覧許可申請書」というA4判の申請書に記入することが求められます。

この「閲覧許可申請書」には、「調査目的、研究テーマなどを記入」するのですが、このときに、以下の内容を踏まえて書くことが必要になります。

  1. (利用するの対象が)そのゲーム資料でなければならない理由
  2. プレイ機を利用しなければならない理由

「1」については、調査の目的がはっきりしていれば書けそうですが、「2」については案外難しそうです。

社会言語学会第40回研究大会のワークショップ「メディア・コミュニケーションとしてのゲーム・コミュニケーション―ナラティブ,実践,アイデンティティ―」の際、フロアから、卒業論文でゲームについて研究をしたいという学生たちが増えているとの声があり、そのやりとりのなかで、ゲームのパッケージ(外箱)を研究対象とすることの可能性が示されましたが、少なくとも、このようにパッケージ(外箱)のみを分析対象としようとする場合、館内プレイ利用申請はできないわけです。(もちろん、いくらパッケージに記載された内容の研究であるといっても、実際のゲームプレイ内容がどのようなものかを確認したうえで、パッケージの文言を理解する必要はあると思いますが。)

わたし自身も、ゲームが舞台とする「世界」や「設定」、「登場人物」の造詣やゲームプレイのなかで描き出される「物語」に関心がある方なので、「2」についてはどのような書き方をしたらよいだろうか、と少し悩みました。

 

調査研究資料としてのゲーム資料とはどうあるべきか

これから、利用を考えようとしている方々のために、「このあたりがハードルになるのではないか」と思われるポイントと、それに対して自分が何をどのように行ったのかをまとめてみました。

今回、国立国会図書館の館内プレイ利用を通じてあらためて考えたのは、メディア文化・メディア社会に関わる研究を行おうとするひとりの「研究者」として、またそのようなメディアに関する調査を行い、メディア環境を批判的に捉え直すことのできる市民を育成するメディアリテラシー教育に関わる者として、ゲーム資料をいかに保存し、提供してもらいたいのかを、より具体的に示していく必要がある、ということでした。

例えば、今回、プレイ利用を行う際、カウンターで貸し出されたのは、ゲームソフトの「説明書」のみ。プレイ機の設置やディスクの挿入を、館内スタッフの方が行ってくださるのはよいのですが、なぜ、パッケージ(外箱)が手渡されないのだろうか、と不思議に思いました。

「外箱は貸していただけないのですか?」とお尋ねしたところ、ご提供いただくことはできたのですが、通常は、説明書のみが資料提供されることになっている(?)のだとしたら、それは、とても不思議なことだと思います。

しかし、「パッケージ(外箱)に、調査研究資料的に意味がある」ということが可視化されなければ、きっとそれは認識されないままになってしまう。

そうであるとしたら、試験的な提供が行われている今だからこそ、「調査研究目的」でゲーム資料を提供してほしい側としては、このようなことが必要なのだ、とういことをもう少し、私たちの側もクリアにしていく必要がありそうです。

夜の国立国会図書館

 

 

 

 

*1:ただ、これについては、館内スタッフの方に確認したわけではありません。どのような方針になっているのか、お聞きしてみる必要がありそうです。