kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

2008-01-01から1年間の記事一覧

「天使待ち」

あるいは、わたしの研究作法 昨日は、わたしも卒業したT大学N学類の卒論提出日だった。 4年生の卒論提出日が近づいてくる時期というのは、3年生にとっては卒論のための指導教官を選んだり、卒論テーマをぼんやりと決めなければいけない時期でもあるので…

年賀状づくりの楽しみ

「情報化社会における『著作』概念の問い直し」というとWikiだ、Web2.0だという話になりがちだけれど、わたしが毎年この話題を思い出すのは、なんといっても今の時期である。 「今年も年賀状つくらなきゃなぁ…」と思いたち、ネットサーフィンしながら、フリ…

統計に対するクリティカル・リテラシー

授業で、Phyllis Whitin and David J. Whitin "Learning to read the numbers"という論文を読む。この論文は、"Language Arts"という小学校(あるいは幼稚園)の教育者に向けた雑誌なのだが、"Language Arts"といういかにも、(日本でいえば)「国語教育」の…

哲学の無時代的読みかえ:《ベイビー・マルクス》と『まるくすタン』

かなり前、恐ろしく忙しいスケジュールの合間をぬって、横浜トリエンナーレに行った。「今回の横浜トリエンナーレは、何がオススメですか?」と、ふだんあまりアートと関わりのない知人に尋ねられたら、わたしは間違いなく、ペドロ・レイエス《ベイビー・マ…

物語と恋と恋愛と

わたしが人間にとっての「物語」の意味を考えはじめたのは、高校生のときでした。 その当時、わたしの友人だった男の子は、同じくわたしの友人であった女の子に好意を抱いていました。・・・が、そのことをわたしが知ってからずっとずっと二人の関係に変化がな…

「このはしわたるべからず」課題

オタクを前面に出さないで「読書教育の新しい試み−オタク文化論的視点から−」という論文を書いてください、と言われたかと思えば、今度は、退官した恩師(つまり、いわば「身内」)の退官記念論文集の図書紹介(ふつう、まったく関係ない第三者がその図書を…

「楽しむ」ことを教える

同じ研究室にいる小学校の先生から、「生活文」の指導について相談をもちかけられる。 「『フリーダム・ライターズ』に出てくる子どもたちは、書くことそのものを楽しんで、書いていったわけじゃないですか。そういう書くことそのものが楽しいと思えるような…

「キレイ」と「キタナイ」の政治学

高校生たちが一生懸命やっている、水戸でのプロジェクト。 たまたま、その話し合いに参加させてもらった関係で、メーリングリストの管理者などやっているおかげで、日々、そのプロジェクトの進行にともなう、さまざまな機微が伝わってくる。なんというか、高…

名士の娘たち

恩田陸『ユージニア』を読む。ユージニア (角川文庫)作者: 恩田陸出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発売日: 2008/08/25メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 21回この商品を含むブログ (151件) を見る奥田英朗の『イン・ザ・プール』や『空中ブラン…

平安時代の恋愛スタイル

まだ日本が、ロマンティックラブ・イデオロギーに染まっていなかった頃、人々はどういうふうに出会い、仲を深めていたのだろう。それは、きっと今とはまったく違うものであるに違いない。そんなことが、妙に気になる。わたしは小学5年生のときに、平安時代…

小学校教員資格認定試験一次自己採点

小学校教員認定試験の第一次試験から、はや2週間。ついに、合否判定基準と解答がアップされました。 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/nintei/08041507.htm自己採点をしてみたところ、なんとか基準はクリアしたようです。これで、7月後半から勉強して…

「子ども中心主義」の隘路

いまさらながら、苅谷剛彦『教育改革の幻想』(ちくま新書)を読む。教育改革の幻想 (ちくま新書)作者: 苅谷剛彦出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2002/01メディア: 新書購入: 8人 クリック: 29回この商品を含むブログ (49件) を見るわたし自身の研究的立場…

「本はダチ」

先日、学部生のluneさんが、卒論テーマについての相談にきた。池田修氏が考案した*1アイディア発想ツール「イメージの花火」http://homepage.mac.com/ikedaosamu/kokugo/fireworksofimage.htmlを使って、卒業論文でできそうなテーマについてのアイディアをい…

グループ討議課題「老人ホームのボランティア」

先日、看護学校の授業でグループ討議課題にチャレンジしてみました。1時間ずつ、合計2時間かけて「若い女性と水夫」課題もやってみようと思っていたのですが、授業時間の都合上、取り組むことができず、もうひとつ用意していた「老人ホームのボランティア…

「誰でもないわたし」と「誰でもあるわたし」の間2:現代アートにおける「顔」

先日、ジュリアン・オピーの作品について触れながら、わたしは、「人間にとって『顔』とはいったい何だろう」と問いを発した。「顔」とはいったい何か。エマニュエル・レヴィナスが問いつづけたこの問いに、真剣に向き合いつづけているもののひとつは現代ア…

小学校教員資格認定試験・一次試験終了

小学校教員資格認定試験、一次試験が終了しました。 自分で言うのもなんだけどよく頑張った。9科目中6科目(うち2科目は図工・体育・音楽から選択)の科目選択が合否をわけるという一次試験。わたしの選択科目は、国語・算数・図工・音楽・体育・家庭科で…

小学校教員資格認定試験(第一次)

ついに明日から、小学校教員資格認定試験です。 第一次試験は、明日(9月6日)と明後日(9月7日)の2日間かけて行われます。わたしにとっては、大学卒業した頃から、常になんとなく気にかかっていた資格認定試験なのですが、世の中には知らない方も多い…

「誰でもないわたし」と「誰でもあるわたし」の間1:水戸芸術館現代美術センター「ジュリアン・オピー」展

先日、水戸芸術館で行われている「ジュリアン・オピー」展に行ってきた。 http://www.arttowermito.or.jp/art/modules/tinyd0/index.php?id=1 ジュリアン・オピーの一連の作品を長い時間をかけて眺めていると、「わたしたちが「その人らしさ」と感じるものっ…

パロディの生成

先日から読んでいる三浦しをん『ロマンス小説の七日間』(角川文庫)の中で、わたしの研究と関わってピピッとくる一節があった。 ロマンス小説は、結局のところ家族小説だ。ヒーローとヒロインが、いかにして幸せな家庭を築いたか、という話だ。これは私のた…

「総合的な学習の時間」特別授業への道1

近隣にある中等教育学校の1年生に向けた「総合的な学習の時間」でゲスト・ティーチャーをすることになった。 どうやらこの学校では、中学1年生は全員1年間をとおして「環境」をテーマにした「総合的な学習の時間」を行うそうで、毎回、違うゲスト・ティー…

「若い女性と水夫」

専門学校の「論理的思考」の授業で、ちょっとしたディベートに展開できるようなグループ討議を試みうかと思い、良い課題を探していたところ、「若い女性と水夫」という課題を見つけました。この課題は、構成的エンカウンター・グループの課題としてよく用い…

政治的イデオロギーのコスプレ

帰宅したら、鳥肌実の全国時局講演会のDM(通称:「赤紙」)が届いていた。 夏休みももう終わりである。皇紀弐千六百六拾八年 鳥肌実全国時局講演会「天照大演説」 http://www.torihada.com/kouen_info_hon.htm 「現代文化論」担当講師のY先生は、仲良く…

経験の翻訳

前の記事にも書いたドラフトが、ほぼ、完成した頃、id:Asayさんから同人誌『モーニングスター』を送っていただいた。小説の文章が、あいかわらず、すてきであったことは言うまでもないのだけれど、それと同じくらい、あるいはそれ以上に、その同人誌に添えら…

「読書教育の新しい試み」ドラフト完成

「読書教育の新しい試み−オタク文化論的視点から−」という、 冗談かギャグか、はたまた「言いがかり」としかつかないようなタイトルのついた依頼原稿のドラフトが、なんとか、完成した。 今回は、いわゆる「文芸部」の女の子たちの創作の世界観に触れたい、…

世界が自分100人の村だったら

さきほどの記事の引用が少しわかりづらいので、同じ内田樹氏のエッセイ「想像力と倫理について」(『街場の現代思想』、文藝春秋)から、かなりクリアで印象的な一節を引用しておきます。 私たちが自分に課すべき倫理的規範はある意味で簡単なものである。 …

「羞恥心」と無知の倫理(2)

「倫理的である」とはどういうことか、という問題を考える上で、 もっともクリアな説明をしているのは、内田樹『街場の現代思想』(文藝春秋)に所収されている「想像力と倫理について」というエッセイだろうと思う。街場の現代思想 (文春文庫)作者: 内田樹…

「羞恥心」と無知の倫理(1)

「羞恥心」が売れている。 ・・・あらためて、解説するまでもないが、「羞恥心」とは、フジテレビ系列の番組『クイズ!ヘキサゴン?』で珍回答を連発する「おバカ」男性3人組による男性アイドルグループである。先日、知人と話していたとき、 わたしの知人は、 …

芸とエンターテイメントとアートの間

ひさびさに一人暮らしのアパートに帰ってきたら、 加納真実さんの第二回ソロ公演「時間、時間!加納の小一時間!!2!!」のDMが届いていて、狂喜乱舞しました。 http://www.accircus.com/news/kanoujikan_iwato/kano_iwato.htmv 「これは芸か?アートか…

ブラック団の行方/「名前」について

■楽太郎が6代目円楽襲名 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080808-00000207-sph-ent小さい頃から、楽太郎さんが好きでした。 「楽太郎」といえば、「腹黒」の代名詞でした。 「腹黒」は「メガネ」や「スーツ」「白衣」とならんで、乙女の重要★萌えポイ…