kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

ボードゲームの体験を言葉にし、思想にする~『ボードゲームで社会が変わる』

與那覇潤・小野卓也 (2023)『ボードゲームで社会が変わる:遊戯(ゆげ)するケアへ』を読みました。 「「ボードゲームを思想にする」ために」(p.3)作られたという本書。 その言葉どおり、「ボードゲームを思想にする」ための数々の試みが、書籍全体にちりば…

児童書ビブリオバトル「この児童書がすごい#2~SDGs編~」を開催しました

昨年12月に開催された「科学・学術コミュニケーション編」、今年3月9日に開催された「ケアリング編」に引き続き、児童書ビブリオバトル「この児童書がすごい#2~SDGs編」を開催しました。 www.youtube.com kimilab.hateblo.jp 昨年12月に開催された、児…

児童書ビブリオバトル×39アート「この児童書がすごい!@水戸芸術館~ケアリング編」を開催しました

水戸芸術館現代美術ギャラリーにて現在開催中の企画展「ケアリング/マザーフッドー「母」から「他者」のケアを考える現代美術」にあわせて、「ケアリング(caring)」をテーマにした児童書ビブリオバトルを開催しました。その名も、児童書ビブリオバトル×39…

児童書ビブリオバトル「この児童書がすごい!!~科学・学術コミュニケーション編」を開催しました

図書館総合展ONLINE_plus の期間外企画として、児童書ビブリオバトル「この児童書がすごい!!~科学・学術コミュニケーション編」を開催しました。 libraryfair.jp このイベントは、図書館総合展内で開催したオンライントークイベント「図書館・レファレンス…

書誌情報から見えてくる「学習マンガ」~「読みくらべてみよう!『学習マンガ』in マンガピット」

2022年11月4日、図書館総合展ONLINE_plusのなかで「読みくらべてみよう!「学習マンガ」in マンガピット」というイベントを開催しました。 libraryfair.jp今年3月に、マンガ×学びをテーマにした施設「マンガピット」が開館。4月に施設を訪問したときに、「…

向坂くじら『とても小さな理解のための』を読みました

向坂くじらさんの第1詩集『とても小さな理解のための』が、今年8月に世に出たとのお知らせをいただいたので、入手しました。 shironekosha.thebase.in 向坂さんは、詩人でありながら、今年、国語専門塾「ことぱ塾」も開塾された方。 topics.smt.docomo.ne.…

言語学SFで描かれるフェミニズム・ユートピア~李琴峰『彼岸花が咲く島』

『彼岸花が咲く島』で芥川賞を受賞した李琴峰さんの芥川賞受賞スピーチが話題になっているのを目にし、その中で、彼女が受賞式後、数多の攻撃を受けていけながらそれを「彼らは心無い言葉によって、『彼岸花が咲く島』という小説を、寓話的なフィクションか…

ゲームを終焉させるゲームは可能か~SBGJ2021ビブリオバトルと『なぜふつうに食べられないのか』

「シリアスボードゲームジャム2021 ONLINE~図書館と一緒にシリアスボードゲームジャム!」の「前祭」として開催された「ビブリオバトル」に「バトラー(本を紹介する側)」として参加してきました。 sbgj2021.jimdosite.com 「シリアスボードゲームジャム」…

オートライフヒストリーの方法論~タラ・ウェストーバー『エデュケーション(Educated: A Memoir)』

タラ・ウェストーバー(2020)『エデュケーション( Educated: A Memoir)』を、読んだ。 Amazonのページにある華々しい紹介文や、推薦コメント、そして邦訳につけられた「大学は私の人生を変えた」から推察されるように、この本は、「モルモン教サバイバリスト…

コモン(共有地)としての「事実」を考える~「教育言説のファクトチェック:プレ入門」

NPO法人教育のためのコミュニケーションによる読書会イベント「教育言説のファクトチェック:プレ入門編」に参加しました。 「教育言説のファクトチェック プレ入門編」 EVENT|教育言説のファクトチェック<プレ入門編> 岩波ブックレットとして発行されて…

「ほっといてください」の感情共有装置―宇佐美りん『推し、燃ゆ』

ようやく、宇佐美りん『推し、燃ゆ』を読んだ。 芥川賞受賞作であり、かつ本屋大賞にもノミネートされていることもあり、とにも書くにも評判は高いのだが、本の「あらすじ」を見ようとしても、ほとんど、帯コピー(「推しが炎上した。ファンを殴ったらしい。…

大人につきあう、知らない世界にジャンプする~伊藤崇『大人につきあう子どもたち』

伊藤崇先生から、5/26発売予定の新刊『大人につきあう子どもたち:子育てへの文化歴史的アプローチ』(共立出版)をご恵投いただきました。 inn.finnegans-tavern.com ひつじ書房から『学びのエクササイズ 子どもの発達と言葉』(伊藤, 2018)が出版されたと…

格差とか多様性とかを語るための文体~『ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー』と『みんなの「わがまま」入門』と

ノンフィクション本大賞をはじめ、数多の賞を受賞して話題になっている、ブレイディみかこ(2019)『ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー』(新潮社)。3月に入って時間ができたこともあり、ようやく読むことができました。 親子でのやりとりが軸になっ…

善意の暴走と「心理学化」~『「発達障害」とされる外国人の子どもたち』

2月末に発売されたばかりの、金春喜(2019)『「発達障害」とされる外国人の子どもたち――フィリピンから来日したきょうだいをめぐる、10人の大人たちの語り』(明石書房)をさっそく入手して、読みました。 本書が発売される少し前に、明石書房のTwitterで本書…

言葉の教育の研究者として授業研究に関わる~石川晋『学校とゆるやかに伴走すること』

先週末、ようやく、教員免許更新講習も終わり、ようやく「万が一、倒れてしまってもどうにかなる」というくらいの予定になってきたので、本棚に入ったまま、開くことすらできずにいた、石川晋(2019)『学校とゆるやかに伴走するということ』(フェミックス)…

文学者にまなび、あそぶ!現代メディアの文章表現~『メディア・リテラシーを高めるための文章演習』

酒井信(2019)『メディア・リテラシーを高めるための文章演習』(左右社)を読みました。 わたしが担当している「初等教科教育法(国語)」の中で、ある学生たちのグループが「炎上」をテーマにした模擬授業を考えたい! と言っていて、その学生たちと「どん…

学校教科書で「音楽する(musicing)」~大谷能生『平成日本の音楽の教科書』

大谷能生『平成日本の音楽の教科書』 (よりみちパン! セ)を読みました。 あの(!)大谷能生さんが、平成時代の小学校・中学校・高等学校の音楽教科書のみならず、なんと平成元年(1989年)、平成10年(1998年)、平成20年(2008年)に改定されてきた学習指…

パフォーマンス学習の場としての模擬授業~渡辺貴裕『授業づくりの考え方』~

前の記事でも書きましたが、体調が万全に回復しないのを良いことに、自分のインプットのための時間を作っています。 その中で、教職課程での授業との関わり方について、静かに考えなおすきっかけをもらえるような2冊の本と出会いました。 1つは、C. A. ト…

ダークペダゴジーとしての評価を再考する~『一人ひとりをいかす評価』~

あまり体調が芳しくないことを良いことに、遠出するような予定はすべてあきらめて、家で、本を読んだり、映画を観たりしています。 おかげさまで、ようやく、インプットのための時間をとることができ、とてもありがたい。 もっともありがたかったのは、この…

思考によるリフレクション/身体によるリフレクション~上條晴夫『実践・教育技術リフレクション あすの授業がうまくいく〈ふり返り〉の技術(1)身体スキル』~

東北福祉大学の上條晴夫先生から、『実践・教育技術リフレクション あすの授業が上手くいく〈ふり返り〉の技術 (1) 身体スキル』(合同出版)をご恵投いただきました。 「あすの授業が上手くいく」という、教育技術のマニュアル本によくあるフレーズと、「リ…

「評価」と「批評」―『グローバル化時代の教育評価改革:日本・アジア・欧米を結ぶ』

大学院の授業で、田中耕治(編著)『グローバル化時代の教育評価改革:日本・アジア・欧米を結ぶ』(日本標準)を読んでいます。 今週の授業では、渡辺貴裕先生(東京学芸大学)の「英語圏における芸術教育の評価の新展開」(第3章第4節)を読みました。 芸術…

反転する「イチゴの日」-筒井康隆×いとうのいぢ『ビアンカ・オーバースタディ』-

2016年5月に、筒井康隆×いとうのいぢ『ビアンカ・オーバースタディ (角川文庫) 』が文庫版で発売されました。 www.matolabel.net 『ビアンカ・オーバースタディ (角川文庫) 』といえば、『ファウスト Vol.7 (2008 SUMMER) (7) (講談社MOOK) (講談社 Mook) …

いつものご飯の喜び/架空のご飯の誘惑――ビブリオバトル@ゼミ

お題「秋の夜長に読みたい本」・・・ということで、先日、ゼミナールで開催した「ビブリオバトル」について報告します。 わたしのゼミは、今年の10月からスタートしたばかり。 ゼミへの参加を希望してくれる学生たちが気になっていること、やってみたいことを…

あなたがペニスをナイフにするのなら・・・――近藤史絵『あなに贈る×(キス)』

児童文学におけるセクシュアル・マイノリティを探るプロジェクト第5弾として、近藤史絵さんの『あなたに贈るキス (ミステリーYA!) 』を読みました。この作品は現在、新装版も発行されていて、そちらでは本作品の主人公のその後についての短編も読めるらしい…

一人称代名詞という主戦場――スーザン・クークリン『カラフルなぼくら』

私を呼ぶときの代名詞には、本当は〈彼ら〉を使ってもらいたいんだ。男と女の両方が自分の中にいると思うから。でもそれを理解できる人はほとんどいないので〈彼〉でいいよ。長い間ずっと〈彼女〉だったから、そろそろ交代してもいい時期だ。女子でいるのは…

生物のユートピア――遠野りりこ『マンゴスチンの恋人』

「児童文学におけるセクシュアルマイノリティについて考える」ための読書プロジェクトの一環として、遠野りりこ『マンゴスチンの恋人』を読みました。 www.shogakukan.co.jp 左から、単行本版、文庫版、マンガ版になります。 表だって「ヤングアダルト」を掲…

サロンパスのようなナプキン:川島誠「電話がなっている」

以前の記事にも書きましたが、児童文学におけるセクシュアルマイノリティの問題を考えていると、どうしても、児童文学におけるセクシュアリティの問題にぶつかります。 『だれかを好きになった日に読む本 (きょうはこの本読みたいな)』の中の「解説」にも、…

セカイ系児童文学――『だれかを好きになった日に読む本』

「本当にだれかを好きになった日に読んだら恋愛どころじゃなくなる本」との評判高い(?)現代児童文学研究会(編)(1990)『だれかを好きになった日に読む本』(偕成社)を読みました。 本の表紙画像を見て、「そんなおおげさな」と思われた方もいらっしゃる…

なんとなく性別越境したいボクら・その2

児童文学におけるセクシュアルマイノリティについて考えるため、引き続き、如月かずささんのYA文学『カエルの歌姫』(2011年)を読みました。 前回読んだ『シンデレラウミウシの彼女』は、講談社のYA! ENTERTAINMENTシリーズということもあり、装丁からし…

なんとなく性別越境したいボクら・その1

「セクシュアルマイノリティと児童文学について考えること」で書いた決意表明にしたがって、セクシュアルマイノリティが登場する児童文学・ヤングアダルト文学を読みはじめています。 まずはじめに手にとったのは、如月かずさ(2013)『シンデレラウミウシの彼…