kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「誰でもないわたし」と「誰でもあるわたし」の間1:水戸芸術館現代美術センター「ジュリアン・オピー」展

先日、水戸芸術館で行われている「ジュリアン・オピー」展に行ってきた。 http://www.arttowermito.or.jp/art/modules/tinyd0/index.php?id=1 ジュリアン・オピーの一連の作品を長い時間をかけて眺めていると、「わたしたちが「その人らしさ」と感じるものっ…

パロディの生成

先日から読んでいる三浦しをん『ロマンス小説の七日間』(角川文庫)の中で、わたしの研究と関わってピピッとくる一節があった。 ロマンス小説は、結局のところ家族小説だ。ヒーローとヒロインが、いかにして幸せな家庭を築いたか、という話だ。これは私のた…

「総合的な学習の時間」特別授業への道1

近隣にある中等教育学校の1年生に向けた「総合的な学習の時間」でゲスト・ティーチャーをすることになった。 どうやらこの学校では、中学1年生は全員1年間をとおして「環境」をテーマにした「総合的な学習の時間」を行うそうで、毎回、違うゲスト・ティー…

「若い女性と水夫」

専門学校の「論理的思考」の授業で、ちょっとしたディベートに展開できるようなグループ討議を試みうかと思い、良い課題を探していたところ、「若い女性と水夫」という課題を見つけました。この課題は、構成的エンカウンター・グループの課題としてよく用い…

政治的イデオロギーのコスプレ

帰宅したら、鳥肌実の全国時局講演会のDM(通称:「赤紙」)が届いていた。 夏休みももう終わりである。皇紀弐千六百六拾八年 鳥肌実全国時局講演会「天照大演説」 http://www.torihada.com/kouen_info_hon.htm 「現代文化論」担当講師のY先生は、仲良く…

経験の翻訳

前の記事にも書いたドラフトが、ほぼ、完成した頃、id:Asayさんから同人誌『モーニングスター』を送っていただいた。小説の文章が、あいかわらず、すてきであったことは言うまでもないのだけれど、それと同じくらい、あるいはそれ以上に、その同人誌に添えら…

「読書教育の新しい試み」ドラフト完成

「読書教育の新しい試み−オタク文化論的視点から−」という、 冗談かギャグか、はたまた「言いがかり」としかつかないようなタイトルのついた依頼原稿のドラフトが、なんとか、完成した。 今回は、いわゆる「文芸部」の女の子たちの創作の世界観に触れたい、…

世界が自分100人の村だったら

さきほどの記事の引用が少しわかりづらいので、同じ内田樹氏のエッセイ「想像力と倫理について」(『街場の現代思想』、文藝春秋)から、かなりクリアで印象的な一節を引用しておきます。 私たちが自分に課すべき倫理的規範はある意味で簡単なものである。 …

「羞恥心」と無知の倫理(2)

「倫理的である」とはどういうことか、という問題を考える上で、 もっともクリアな説明をしているのは、内田樹『街場の現代思想』(文藝春秋)に所収されている「想像力と倫理について」というエッセイだろうと思う。街場の現代思想 (文春文庫)作者: 内田樹…

「羞恥心」と無知の倫理(1)

「羞恥心」が売れている。 ・・・あらためて、解説するまでもないが、「羞恥心」とは、フジテレビ系列の番組『クイズ!ヘキサゴン?』で珍回答を連発する「おバカ」男性3人組による男性アイドルグループである。先日、知人と話していたとき、 わたしの知人は、 …

芸とエンターテイメントとアートの間

ひさびさに一人暮らしのアパートに帰ってきたら、 加納真実さんの第二回ソロ公演「時間、時間!加納の小一時間!!2!!」のDMが届いていて、狂喜乱舞しました。 http://www.accircus.com/news/kanoujikan_iwato/kano_iwato.htmv 「これは芸か?アートか…

ブラック団の行方/「名前」について

■楽太郎が6代目円楽襲名 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080808-00000207-sph-ent小さい頃から、楽太郎さんが好きでした。 「楽太郎」といえば、「腹黒」の代名詞でした。 「腹黒」は「メガネ」や「スーツ」「白衣」とならんで、乙女の重要★萌えポイ…

小学校「外国語活動」の欺瞞

現在、小学校教員認定試験対策のため、 平成20年3月に告示された新学習指導要領を読んでいます。 多くの方はすでにご存じだと思いますが、 新学習指導要領から、小学校に新しい領域「外国語活動」が加えられました。 この「外国語活動」の「内容」のひとつ…

研究と実践の間

わたしが属する研究分野は「教科教育学」と名づけられている。 「教育学」…その中でも、「教科教育学」というのは、とかく、研究と実践との間で悩まされる学問分野であると思う。 「教育学」の中でも、「教育哲学」「教育史」という分野は、外側の人間から見…

オリジナルTシャツにムラムラする

以前、友人から貸してもらった瀧波ユカリ『臨死!!江古田ちゃん』は、ひとりの20代後半女性として、いろいろしみじみと感じいるところがありました。臨死!! 江古田ちゃん(1) (アフタヌーンKC)作者: 瀧波ユカリ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/04/21メデ…

「評論」の社会的役割

わたしが担当すべきすべての審査過程を終えたので、 そろそろ書いてもよい頃かと思われるが、 先日、ある御方からのご紹介をいただいて、生涯ではじめて、ラジオ番組の審査員をすることになった。 さて、ラジオ番組の審査員であるからには、自分が聞いたラジ…

「書きつづけること」への許可証

2008年8月3日。 日本読書学会の大会にて「読書科学研究奨励賞」という賞をいただきました。賞を受賞すると、受賞スピーチをしなければならないので、 スピーチで何を話すか、ずっと考えていたとき、 わたしの頭の中にあったのは、わたしが通っていた小学校…

介護現場の混沌:阿部真大『働きすぎる若者たち―「自分探し」の果てに―』

阿部真大『搾取される若者たち−バイク便ライダーは見た!』(集英社新書)を、良質なエスノグラフィとして高く評価していたので、『働きすぎる若者たち―「自分探し」の果てに―』(生活人新書)を読んでみた。働きすぎる若者たち―「自分探し」の果てに (生活…