kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

書誌情報から見えてくる「学習マンガ」~「読みくらべてみよう!『学習マンガ』in マンガピット」

2022年11月4日、図書館総合展ONLINE_plusのなかで「読みくらべてみよう!「学習マンガ」in マンガピット」というイベントを開催しました。

libraryfair.jp

今年3月に、マンガ×学びをテーマにした施設「マンガピット」が開館。
4月に施設を訪問したときに、「こんな施設があれば、あれもできそう!これもできそう!」といろいろな妄想が浮かび、まず手始めに、その中のひとつである「学習マンガの読み比べ」を開催しはじめています。

kimilab.hateblo.jp

今年7月には、教職大学院の授業の一環として、マンガピットへの訪問と、学習マンガの読み比べをやってみたところ、4人でやってみただけでもいろいろな発見があり、学習マンガ読み比べの可能性を感じました。

kimilab.hateblo.jp

新型コロナウイルスの感染がいまだおさまらない時期の開催ということもあり、定員10名という小さな規模で開催。当日は8名の方にご参加をいただきました。

今回の企画は、としょけっと実行委員会*1・図書館とゲーム部による共催ということで、「としょけっと」実行委員会のみさき絵美さんとわたしの2人で会の進行をすることに。

当日は、マンガピットのほうでこのイベントのための看板を用意してくださったり、参加者の方がたがとても楽しそうであったりしたこともあり、みさきさんと2人でなんだかとても楽しい気分になってしまい…今見てみると、Twitter上でリアルタイムでのレポートも、ちょっとテンション高めな感じがします。

今回のイベントでは、最後に、参加者+進行役全員で3つのチームにわかれて、それぞれ「発見」したことを共有しあったのですが、これまでにない視点で、「学習マンガ」の書誌情報を見る人たちがたくさん現れたところが、面白かったです。

さすがは図書館総合展のイベントにいらっしゃる皆さんです!見るところが、書誌!

学習まんが読み比べの様子

「『学習マンガ』がだれに忖度して描かれているのか?」という視点から見えてきたのは、伝記マンガのための資料を提供する地方の郷土資料館・歴史資料館とのかかわり。

それぞれの地域には、それぞれの地域での「推し武将」「推し歴史人物」がいるわけですが、その表象やストーリーがぶつかりあってしまう事態というのも生じるわけです。

たとえば、ポプラ社のコミック版日本の歴史「戦国人物伝」シリーズは、戦国時代の人物だけで学習マンガのシリーズを出してしまっているわけですが、誰かが主役のときはまったくイケメンでもなんでもない武将が、自分が主役の巻になるとかなりキラキラした状態で出てきていて相当イメージが違う…なんていうことも多々あるわけです。


www.youtube.com

また、「学習マンガ」に著作者としてかかわる人々の多さに着目したチームもありました。

「シナリオ」ライターに着目してみると、たとえば、集英社の「学習まんが 世界の伝記NEXT」シリーズで、複数作のシナリオを手掛けていらっしゃる三上修平さんがかかわっている作品は、死後の描き方がなかなか特徴的。

kids.shueisha.co.jp

宮澤賢治~銀河鉄道で空を旅したファンタジー作家』では、死後、賢治が、銀河鉄道にのって旅立っていきます。これはなかなか他の伝記マンガではない展開です。

 

2019年の話になりますが、学習マンガも多く手がけていらっしゃる相川柚希さんによるツイートをきっかけに、「学習マンガは(ストーリーマンガに比べて)格下なのか!?」という議論が生じたことがありました。(議論というより「そんなことない!」とみんなが言っている感じでしたが)

togetter.com

わたし自身も「そんなはずない!」という立場ですが、一方で、学習マンガならではの作家性や技術のようなものになかなか焦点が当たらず、話題になりにくいというのも事実としてあるように思います。

そうであるとしたら、「学習マンガ」を読み比べながら、「このシナリオライターって独特だよね!」とか「この描き方はうまいな!わかりやすい!」とか、みんなで言い合う今回のような場がもっと大切にされてよいのではないか、と思います。

*1:「としょけっと」は図書館を楽しみたい人に向けた同人誌即売会です。詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

CA2002 – 図書館をテーマにした同人誌即売会「としょけっと」の開催から / みさき絵美