水戸芸術館現代美術センター・高校生ウィーク「大人部」、および、その後に行われた水戸のキワマリ荘でのトークイベント「よんでみる 11」でお世話になった、アーティストの中島佑太さんが、川崎市岡本太郎美術館の企画展「遊び ひらく 岡本太郎」展のなかで、「現代の作家たち」としてワークショップと展示をしていると聞き、岡本太郎美術館まで行ってきました。
岡本太郎美術館の常設展・企画展が面白いのは、特段、わたしが言うまでもないので割愛。この展示室の写真のカオス感ですべてを感じとってください。
中央下部にある、岡本太郎さんの等身大パネルは、館内のあちらこちらにあり・・・、イベントが行われるときには、看板かけ(?)としても使われているようで、岡本太郎さんの愛されっぷりが伝わってきます。
そんな岡本太郎美術館のなかで、さらに岡本太郎さんにおける「遊び」をテーマとした企画展のなかで、中島祐太さんのワークショップ+展示が行われています。
中島さんのワークショップ+展示について、ウェブサイトやチラシでは、次のように紹介されていました。
■現代の作家たち 会期中に展示がえを行います。
中島佑太 NAKAJIMA Yutai9月1日(火)~10月4日(日)
作家がつくったルールをもとに、来館者が作品を作ることができる、参加型の展示です。
会場内で、会期中毎日作品作りに参加できます。◆作品に参加しよう! 中島さんの作品は、見に来た人がつくったり、体験したりして楽しむこともできます。
★の日程で、中島さんも展示会場にやってきます!
日時:9月1日(火)から10月4日(日)まで毎日開催 9:30~17:00
★作家滞在日程:9月5日(土)、6日(日)、19日(土)、20日(日)ほか、
詳しくはHP等で告知します。
参加方法:申し込み不要!いつでも、どなたでも参加できます。
(川崎市岡本太郎美術館ホームページより)
「作家がつくったルールをもとに、来館者が作品を作ることができる、参加型の展示です」!!
こんなに楽しそうじゃないワークショップ?展示?の告知文は、はじめて見ました。こういうときに使う言葉ではないけど、すでに「コレジャナイ」感がはんぱない・・・。
これを見て、「なにこれ!楽しそう!」って思って美術館に足を向ける方は、どのくらいいるのかと不安になるレベルです。
そして、こんなに「タノシソウジャナイ」のに、「作品に参加しよう!」とか言われても困る。
「中島さんの作品は、見に来た人がつくったり、体験したりして楽しむこともできます。 」という文言に、つい、「ホントかよ」とツッコミました。
実際に、会場に足を運んでみると、やっぱり楽しくない。ひたすら、つらい。
会場入口には、「ルールを守って正しく遊びましょう」と書かれた看板があって、その場にいるアーティストから「『ルールを守って正しく遊びましょう』ですから、ちゃんとルールを守って、正しく遊んでくださいね」と言われる。つらい。
・・・というか、そもそも会場内にはいたるところに、そういう「ルール」が書かれた看板が溢れんばかりに設置されていて、そもそもその風景そのものがおぞましい。気持ち悪い。すでに帰りたい気持ちでいっぱいです。
(中島さんに聞いてみたところ、やっぱり、会場をちら見しただけで展示会場から出ていかれるお客さんの割合はかなり多いようです。)
中島さんのワークショップ《ルールを守って正しく遊ぶ》については、以前、「大人部」でもミニ・ワークショップとして実施していただき、たしかそのときも早々にフェードアウトした記憶があります。(そしてそのときも、折り鶴をることはできなかった・・・無念)。
しかし、今回さらに「つらいなぁ」と思ったのは、フェードアウトしたあとの行動すら「ルール」に定められていたこと。
会場のすみっこに、「ルール」に指示された「遊び」に従えずに奥のほうに身を沈めてしまうであろう来場者に向けた「ルール」の看板があるのですが、そこに書かれた内容はともかく(正確な文言を覚えていないのです、ごめんなさい)、それが、「ルール」として、看板に指示されているということが怖い。
「ルール」がどこまでも追いかけてきて、そこから逃げられない恐怖感。
どこまでいっても、自分の意志だけで自由を求められない絶望感。
そんな恐ろしく閉じられた世界であるはずなのに、ふつうに楽しそうに「ルール」にしたがって「遊んで」いる人たちがいるという事実に、さらに私たちは世界からの隔たりと、孤独と絶望を感じます。
楽しそうな笛の音に誘われ、自ら笛吹き男のあとをついていった結果、洞窟に閉じ込められ、二度と戻れなくなってしまった『ハーメルンの笛吹き男』に出てくる子どもたち。
この会場にある「ルール」はまるで、この笛の音のようです。
子どもたちを、参加者を思い通りに動かす仕掛け。参加者は、実は自由を奪われているのに、それに気づかずに、自由を奪われたなか「ルール」に指示された楽しさを享受している。
「ワークショップ」って果たしてこんなものだっただろうか、とつい考えこんでしまいます。
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