kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

愛とは分け隔てること――趣向『The Game of Poliamory Life』

 KAAT(神奈川芸術劇場)で行われた、趣向『THE GAME OF POLIAMORY LIFE』を見てきました。www.kaat.jp

The Game of Polyamory Life

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「ポリアモリー(Poliamory)」とは、合意のうえで、複数の人々と誠実な愛の関係をもつ恋愛スタイルのこと。・・・いや、恋愛スタイルというよりも、より広くライフスタイルそのものであるといったほうが正確かもしれません。

ポリアモリー 複数の愛を生きる (平凡社新書)』の著者である、深海菊絵さんは、『日刊ゲンダイDIGITAL』のインタビュー記事のなかで、次のように説明しています。

 

「ポリアモリーとは、最もシンプルに言えば、『複数のパートナーと誠実に愛の関係を築くスタイル』です。ただし定義は人それぞれ。『合意の上で複数の人と性愛関係を築く』という人や、『結婚制度にとらわれず自分が愛する人の人数を決める』という人もいます」

 

「恋人や伴侶に嘘をついたり、隠すのはポリアモリーではありません。自分の交際状況をオープンにし、合意の上で築く人間関係です。『2人の彼女を誠実に愛 しているが、その状況を彼女たちに伝えていない』男性がいたら、それはポリアモリーではなく『彼なりに誠実な二股』です」

「複数の愛を生きる」深海菊絵氏 | 日刊ゲンダイDIGITAL)

 

おそらく、ここでポイントになるのは「合意」でしょう。

今回の公演に行く以前に、「ポリアモリー」について調べていたときに、わたしの中で引っかかっていたのが、まさに「合意」という言葉でした。もちろんあらゆる恋愛関係において、「合意」は必要なのかもしれないけれど、あまりに相手との「合意」的な関係を強調するあまり、恋愛にともなう(と、通常考えられている)感情的な機微があまり考慮されていないのではないか、と思えたのですね。

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わたしとわたしでないものをつなぐ「メディア」――東京学芸大学附属小金井小学校・校内研究授業――

東京学芸大学附属小金井小学校で行われた校内研究授業・研究協議会に参加して参りました。

www.u-gakugei.ac.jp

今回、私が拝見させていただいた国語の研究授業は、校内研究授業の最後の回にあたります。附属小金井小学校では、これまで年7回このような校内研究授業・研究協議会を公開で実施されてきたとのことでした(PDF)

 

今回、教材としてとりあげられたのは、光村図書の小学校国語教科書・1年下巻にとりあげられている『どうぶつの赤ちゃん』(参照:教材別資料一覧 1年 | 小学校 国語 | 光村図書出版

作者は、増井光子(ますい みつこ)さん。「よこはま動物園ズーラシア」開園時から園長を努められ、昨年(2015年)4月に亡くなられた方です。上野動物園に在籍されていた頃には、パンダの繁殖に成功されています。まさに日本の動物園の歴史をつくってこられた方ですね!

 「よこはま動物園ズーラシア」をめぐる増井光子さんの思いについては、こちらの記事(くらしと保険 WEB.05 いのちを守る 増井光子さん)でも読むことができますし、増井さんが、2010年6月にBankARTstudioNYKで行われた講演「生物多様性と私たち­の暮らし」を、現在でもオンライン上で見られます。

 

 

 『どうぶつの赤ちゃん』がこのような教材であることもあり、この教材と動物園をつなげられると楽しいだろうなぁ・・・と思っていたところ、東京学芸大学附属小学校の子どもたちが遠足で多摩動物公園に行っていることがわかり、さらに、授業者の筧先生も、今回の単元に取り組まれるまでの前段階として、子どもたちが動物に関心を持てるようなさまざまな学習活動を展開されてきたことがわかり、今回の授業を拝見するのをとても楽しみにしておりました。 

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情緒的なつながりへの過剰な配慮について――アクティブ・ラーニングにおける人間関係――

大学院の演習授業の発表で、ある研修生の方が「協働学習」についての発表をしてくださったことがきっかけとなり、大学院生たちと、高等学校におけるアクティブ・ラーニングについての議論が行われました。

 

「高等学校におけるアクティブ・ラーニング」といえば、昨年12月に東京大学日本教育研究イノベーションセンター(JCERI)によるポータルサイト「マナビラボ」がオープンし、アクティブラーニングに関する初の全国調査とも言われる「高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する全国調査」の分析結果が公開されたこともあり、非常にホットなテーマでした。

manabilab.jp

 

授業での議論のなかで話題になったのは、協働学習などを中心とした、アクティブ・ラーニング型授業を導入・実施する際に、教師側も生徒側も、情緒的な人間関係を重視しすぎているのではないか、ということでした。

 

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襲いかかる記憶――「クリテリオム92 土屋紳一」作品制作

今年の2月20日から水戸芸術館にて開催される「クリテリオム92 土屋紳一」展の作品制作に協力するため、水戸芸術館まで行ってきました。

 

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フィルム写真全盛期よりデジタル技術を用いた写真作品の制作に取り組んできた土屋紳一。本展では、カセットテープレコーダーを題材に、個々人の記憶を歴史へと接続する作品を紹介します。(水戸芸術館|美術|土屋紳一)

 

わたしにとって、“カセットテープ”というメディアは、常にわたしの半生とともにあったといっても過言ではありません。

高校時代に、演劇部で作品づくりをする際には欠かせない存在でしたし、高校を卒業してからも、その後3年くらいOB劇団をつくって公演を行ったり、高校演劇のお手伝いのようなこともしておりました。当時使っていた、10分サイズのカセットテープは、いまだに残っています。

大学院に入ってからは、インタビューによるライフストーリー調査によって、さまざまな人たちの語りを集め、耳を傾けてるメディアとして、カセットテープを選んできました。当時はまだICレコーダーが高価であったこともありますが、カセットテープレコーダーの気軽さが、なによりも大きな魅力でした。

 

カセットテープとともに、自分の生き方を暗中模索しつづけた時代があまりにも長かったため、調査で使用する機材を、カセットテープレコーダーからICレコーダーへと変えたときには、感慨深いものがありました。

時はながれ、今や、ICレコーダーすら持ち歩かなくても、だれもが気軽に、スマートフォンで、その場で起きている出来事を、録音することができます。

 

そのような中で、「カセットテープレコーダーを題材に、個々人の記憶を歴史へと接続する作品」を製作されるというお話を聞き、「これはぜひ何か協力したい!」と思い、今回の作品製作に協力させていただくことになりました。

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動物たちの寒さ対策――埼玉県こども動物自然公園・2016年冬――

今週のお題「年末年始の風景」第2弾です。

2016年新春は、「暖冬」と呼ばれただけあって、なかなか暖かい陽気に恵まれましたよね。4月並の気温であるという話もあったとか・・・寒さに弱いわたしにとっては、とてもありがたいお正月となりました。

 

さて、そんな暖かな陽気に恵まれたとはいえ、冬は冬。

・・・というわけで、不思議なあたたかさをもつ冬の動物園を直撃。

今回は、埼玉県こども動物自然公園を突撃取材!動物たちの寒さ対策をレポートします。



【寒さ対策①:ねころぶ】

まずは、「これは・・・むしろ、寒くないのかな?」と思われるケースのカンガルーさん。
太陽光を熱源として最大限活用した、ひなたぼっこ作戦です。「暖冬」だからこそできるワザですね。よかったよかった。

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【寒さ対策②:うまる】

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外気温は低くても、木の葉のなかはあたたかい!・・・そんなこともあります。

木の葉の中に埋もれば、外の寒さもしのげちゃう!

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【寒さ対策③:あつまる】

しかし、身の周りに木の葉などがなくて、うもれないときもあります。

そんなときはどうすれば良いのか?

こちらは、そんな時のための裏ワザです。みんなであつまって身を寄せ合えば、みんなの体温をつかってあたためあうことができますね。さすが!

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【寒さ対策④:あびる

そうはいっても、熱源が提供されるのであれば、それに超したことはありません。

お湯があればそこに行き、お湯をあびる!基本です。基本は大事。

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【寒さ対策⑤:つかる】

とはいえ、あたたまるなら、やっぱり温泉が一番だよね♪

・・・ってことで、最後はカピバラ温泉です。

温泉につかってるカピバラって、なんであんなに幸せそうなんでしょうね。

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初日の出と祈りの風景

2016年になりましたね。皆さま、あけましておめでとうございます。

今週のお題「年末年始の風景」ということで、初日の出の様子をご紹介したいと思います。

「初日の出」というと、水平線の向こう側から日が昇ってきて、水面に太陽光が反射し・・・という写真で表現されることが多いですよね。

たしかに、視覚的に1枚の写真・絵画でみたときには、そのような「絵」が一番わかりやすいだろうとは思うのですが、「初日の出を拝む」といったときに大切な時間は、むしろ、日が昇る前の時間だろうと思うのです。

 

太陽が出てくる前、気温の低いピンとした空気のなかで、日が昇るのを待つその時間。

そこにあらわれる、祈りの風景こそが、美しい。

・・・そんなことを毎年思います。

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なぜ、私たちは、初日の出を拝むのでしょうか。

それは、「初日の出とともに年神様が現れる」という信仰があるからなのだそうです。

そう考えてみると、神様のあらわれを待つその時間こそが大切だとかんじる、わたし自身の感覚に、理由が与えられたような気持ちになります。

 

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明るくなってきたな・・・と思って海のほうに目を向けると、雲のかたちにそって、光のラインができています。とても神秘的。

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日が昇りはじめると、それまで波にのっていたサーファーたちも、一斉に水平線の方を向き、手を合わせます。

宗教とかイデオロギーとか、そういうものを超えた大きな力のようなものが、そこにはあるような気がしてきます。

その大きな力のようなものに、かつて生きた人々は「年神様」という名前をつけたのかもしれません。

 

今年も良い年になると良いですね。

皆さまのご健康とご多幸を心よりお祈りしております。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

LGBT・セクシュアルマイノリティ教育のための学習リソース集@神奈川

NPO法人Re:Bitによる公開講座「LGBTの自立/就労を応援するためにできること」@横浜))に参加してきました。

LGBTとは、「レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルトランスジェンダー」の頭文字をとった総称で、一般的には、セクシュアルマイノリティを包括的に示す言葉として使われることの多い言葉です(定義はこちら

rebitlgbt.org

この公開講座は、今年度3回シリーズで開催される予定で、今回はその2回目。1回目は先週、「LGBTってなんだろう?」というテーマで開催されたということでした。さらに、その数日前には、同じ会場で、LGBTの若者を対象にした「10~20代のジョブトーク!」@横浜も開催されていたようで・・・、「横浜レインボーフェスタ」といい、なんだかすごいぞ、横浜!というかんじがします。

 

事実、横浜市は今年から、LGBTへの支援を充実させるべくさまざまな事業を展開しているようです。神奈川新聞のこちらの記事では、横浜市が今年11月からLGBT支援を充実させるためにはじめた2つの事業(交流スペース事業、相談事業)が紹介されています。

www.kanaloco.jp

 

さて、本日の公開講座では、「LGBTの自立/就労を応援するためにできること」というタイトルで、Re:Bit代用理事でもあり、認定キャリアカウンセラーでもある薬師実芳さん自身が、LGBT当事者のキャリアサポートをするなかで出会った、LGBTの自立/就労上の困難についてもお話がありました。

 

その中で、学齢期の児童・生徒たちの問題として挙げられていたのが、「働くおとな」としてのロールモデルの不在。社会のなかではたらくLGBT当事者のイメージがないため、うまくキャリア形成をしていけない・・・という問題があるようです。

 

今年の6月に朝日新聞のウェブ記事で紹介されていた、LGBTカップルの「かぞく」の動画は、LGBTの「おとな」「かぞく」として生きることの具体的な姿をわたしたちに見せてくれました。

www.asahi.com

これと同じように、LGBTとして「はたらく大人」の姿をつたえることが、LGBTに関する教育を、キャリア教育の視点から考えていくための第1歩として、必要なことなのかもしれません。

では、学齢期の子どもたちに「働くおとな」としてのロールモデルを持ってもらうには、どうすれば良いのでしょうか?

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