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Literacy, Culture and contemporary learning

トライアルワークショップ『パフォーマンスに基づく新しい教員研修の方法』

「パフォーマンス心理学研究会」による12月の研究会(ワークショップ)に参加してきました。

「トライアルワークショップ『パフォーマンスに基づく新しい教員研修の方法』」というタイトルで、講師は、宮本万里さん。

 

3時間のワークショップでしたが、あっという間に終了時間になってしまいました。

「パフォーマンスに基づく新しい教員研修の方法」というタイトルで、しかも、下記のような紹介で集まってきた方々だったせいか、パフォーマンスへの意欲がかなり高い状態で、始まったワークショップだったなぁ、という印象です。

 

トライアルワークショップ
『パフォーマンスに基づく新しい教員研修の方法』
日時:2018年12月16日(日曜日)
   14時から17時まで。
会場:筑波大学東京キャンパス


講師:宮本万里さん(Creative Communication Company, New York)


内容:プロジェクト研究3『演劇的表現やパフォーマンスを通した学習と学習環境の共創』の3つのミッション(①附属学校群の教育方法の革新、②教員のマインドの改革、③危機管理に関する新しい研修方法の開発)のうちの②のためのトライアルワークショップを試みる。


 プロジェクト3の内のミッション③について:教員のバーンアウトや新しいことにチャレンジできない固定化したマインド等の問題が指摘されて久しい。本プロジェクトでは、教員、とくにベテランといわゆる年齢となり、これまでのやり方から抜け出すことのできず、相変わらず体罰や暴力的な指導を繰り返す教員が少なくない。

インプロパフォーマンスの経験を通して、このような固定化してしまった教員に対して、新しいことに向かって再イニシエーションの支援を行うような、新しい研修プログラムを開拓する。

 

 

今回行ったアクティビティは、下記のとおり:

 

  1.  ポーズで自己紹介
  2.  相手の名前を呼ぶ
  3.  「GO!」
  4.  赤いボール
  5.  「何してるの?」
  6.  単語あてゲーム①(名詞)
  7.  単語あてゲーム②(名詞+形容詞)
  8.  2人組でフリーシーン
  9.  「あけて/あけたくない」のスキットに基づくシーンづくり

 

ワークショップでは、受付時に、「自分の呼ばれたい名前」をテープに書いて、わかりやすい位置に貼るように求められます。

「1 ポーズで自己紹介」では、その名札テープにかかれた名前を言いながら、「自分がどこから来たのか?」にまつわるポーズをとりました。

わたしは、その日、某オリンピック・サーフィン会場予定地から上京して、ワークショップに参加していたので、サーフィンのポーズを取ったつもりだったのですが、まったく伝わらなくて残念でした(^^;)

 

次に、1 で示された名前とポーズを使って、「2 相手の名前を呼ぶ」アクティビティ。

自分のポーズを取りながら自分の名前を言い、次に、ターンを受け渡したい相手のポーズを取りながら、相手の名前を呼びます。

1 で、印象的なポーズを取られていた方がやたらとターンを回される羽目になります。……仕方ない(笑)

 

「3 『GO!』」は、「GO!」と言って相手に近づきながら、相手をその場所から移動させ、自分がその相手のいた場所に入るというゲーム。

相手の名前を呼んだりするわけではないので、相手に向けて「GO!」を届けること、相手との間のテンションを保ちつつ近づいていくことがポイントとなります。

 

「4 赤いボール」は、参加者全員で輪になって、イメージの「赤いボール」を渡していくゲーム。渡す人は、「赤いボール」といって、イメージのボールを手渡し、それを受け取った人は、イメージ上のボールを受け取ったあと、「赤いボール。ありがとう」と言います。

今回のワークショップでは、「緑のボール(Green ball)」「緑のボール。ありがとう(Green ball. Thank you!」と受け渡すアクティビティーから始まり、「大きなスイカ(Big Water mellon)」「眠っている赤ちゃん(Sleeping baby)」など、さまざまなものが受け渡されていきました。

 

「5  何してるの?」は、『インプロをすべての教室へ』にも掲載されているアクティビティー

2人組でペアになって、1人が何かのアクション(例:料理をする)をしているところに、もう1人が「何してるの?」と声をかけ、アクションをしていた人は、自分がしているのとはまったく異なるアクションを言います(例: 「水泳してるの!」)。言われた方のペアは、相手が言った内容のアクション(この例でいえば、水泳)をはじめ、それを交互に行っていくというゲームです。

インプロをすべての教室へ 学びを革新する即興ゲーム・ガイド

インプロをすべての教室へ 学びを革新する即興ゲーム・ガイド

 

今回のワークショップでは、宮本さんから、「自分が言ったことに対して、相手がどんなアクションをするのか。自分のイメージとの違いを感じてみて!」という声かけがありました。

確かに、「掃除をする」でも、雑巾がけあり、窓拭きあり、掃除機あり…とそのイメージはさまざまですよね。

個人的には、たまたま、その声かけがあったあとにペアになった方が、「焼酎飲んでるの!」「日本酒飲んでるの!」とおっしゃって、わたしなりの焼酎飲んでる像と、日本酒飲んでる像を演じわけてみたのですが、自分がそんなことができることにビックリでした。

 

次の「 言葉あて」(6~7)では、1人ひとつずつ、名詞のみのカードと、形容詞+名詞のカードが配られます。その言葉そのものを言わずに、相手になんもか、自分の持っているカードの言葉を当てさせるゲームです。

 

これらのゲームを経て、後半は、ペアによるシーンづくり。

ひとつ目の「8 フリーシーン」は、脚本なし。もうひとつ最後に行われたシーンづくりでは、「開けてほしい/開けたくない」の対立がある短いスキットが示され、それに基づくシーンづくりを行いました。

 

終了後の交流会で、宮本さんにお伺いしたところ、今回のワークショップでは、「自分が用いている、この言葉のイメージは、相手に伝わるのだろうか?」ということについて振り返り、考えていくための時間を創りだすことをねらっていたとのこと。

 

ニューヨークで日本語学習のためのインプロ&パフォーマンスによる学びの場を展開して、日本で英語教育のためのインプロ&パフォーマンスによる学びの場を展開してきた宮本さんが、「言葉のイメージ」に対してそのようなかたちでインプロ・ゲームやパフォーマンスを用いられていることが、興味深かったです。

 

留学生対象の日本語教育を担当されている先生とともに、日本語初級クラス受講生と教員養成課程の学生との共同ワークショップを行って2年目になりますが、そのワークショップでは、むしろ、「言葉がなくても通じちゃった!」とか「ミス・コミュニケーションって面白い!」みたいな感覚を創出するこもをねらいにしてきました。

そういう意味では、言葉やコミュニケーションの学びと、インプロやパフォーマンスとの関係について、また違ったアプローチを見せていただいた感じがします。