kimilab journal

Literacy, Culture and contemporary learning

文学×ゲーム×プログラミング!『ミッションメーカー:マクベス』パイロット調査版【終了しました】

3月下旬に、NPO法人ratikより、アンドリュー・バーン『19歳までのメディア・リテラシー:国語科ではぐくむ読む・書く・創る』を無料公開しました

ratik.org

本書のまえがきにも書きましたが、著者のアンドリュー・バーン先生は、国語教育(English)、メディア教育、ドラマ教育を横断的にとらえた理論や実践を展開されているかたで、「映画も!演劇も!アニメも!マンガも!ゲームも!小説も!みーんな大好き!」という、わたしのような人間にとっては、大変ありがたい存在なのです。

 

そんなバーン先生が、現在どんなプロジェクトをなさっているかというと…これ!

マクベス』をデジタル・ゲーム化するソフト開発!

f:id:kimisteva:20190403141958p:plain

Missionmaker Macbeth

 『マクベス』といえば、あれですよ!ウィリアム・シェイクスピアの四大悲劇のひとつ!念のため、解説を加えると、こんなあらすじです。

スコットランドの武将であるマクベスが凱旋の途中3人の魔女と出会い、魔女から自分が王になると告げられる。この魔女の予言と男勝りの夫人の教唆によって野心をつのらせたマクベスは、王ダンカンを暗殺して王位を奪うものの、その後、王の遺児による討伐軍によって討たれる。

 

日本だと、黒澤明監督の映画『蜘蛛巣城』(1957年、東宝.主演:三船敏郎)が、『マクベス』を日本の戦国時代に置き換えた作品ということで、有名だったりもしますよね。


Kurosawa's "Throne of Blood "(1957) 蜘蛛巣城

 

しかも、このプロジェクト、単に、研究者やゲーム開発者がかってにやっているだけではなくて、大英図書館British Library)の協力を得て進められていて…であるがゆえに、なんとゲーム中に、大英図書館所蔵のシェイクスピア初期作品集(First Folio)の画像が入れられちゃう!という…なにそれすごい!みたいな仕様なのです。

 

そんな『ミッションメーカー:マクベスですが、現在、このゲーム制作ソフトのパイロット調査版を試してみてくださる、教育者(小学校~大学で教師をしてくださる方はもちろん、図書館や博物館・美術館、地域のスペースなどでワークショップを開催してくださる方でもかまいません)を、2019年9月まで、募集し、パイロット的な実施を行っておりました。

現在、すでにこのプロジェクトは終了しておりますが、どのようなプロジェクトであったのかをご紹介しておきます。

『ミッションメーカー:マクベス*1調査版をお試しくださる先生方へ

 

このご案内は、ゲーム制作ソフト『ミッションメーカー:マクベス(Missionmaker Macbeth)』の調査版を試してくださる教育関係者の皆様に向けて作られました。

 


HOW TO MAKE MISSIONMAKER MACBETH GAMES Japanese titles

 

本プロジェクトの背景と経緯

 

本ソフトウェアミッションメーカーマクベスは、ロンドン大学(University College London)・UCLナレッジラボ(UCL Knowledge Lab)にある「マジカル・プロジェクト(MAGiCAL Projects)」によって開発されました。

Andrew Burn教授が率いるこのチームは、Burn教授の他、演劇(ドラマ)の専門家であるTheo Bryer、シェイクスピアの専門家であるJane Coles博士が所属してます。

また、ゲーム会社のDDZ社からAbel Drew、Bruno de Paulaがソフトウェア開発に携わってきました。「ミッション・メーカー:マクベス」プロジェクトの詳細については、「マクベスをプレイする(Playing Macbeth)|D. A. R. E」のホームページ(英語版のみ)をご参照ください。

darecollaborative.net

 

本ソフトウェアは、英国の英雄叙事詩ベオウルフ(Beowulf)の物語をもとづいてゲームを作成するバージョンをもとに開発されました。

 

『ベオウルフ』、『マクベスどちらのバージョンも、『ベオウルフ』の原稿、シェイクスピアの初期作品集のデジタル版を所有する大英図書館の協力を得て作られており、近いうちに、高解像度の画像を使用できる予定になっています。『ベオウルフ』のプロジェクトについては、以下のホームページの動画をご覧ください。『ベオウルフ』をプレイする:図書館をゲーム化する(PLAYING BEOWULF: GAMING THE LIBRARY) | D.A.R.E.(英語のみ))

 

darecollaborative.net

もともと、これらのプロジェクトの着想は、かなり前から始動していた、イマーシブ教育社(Immersive Education Ltd)との共同開発によって作成されたものから始まりました。イマーシブ教育社との教育開発のバージョンは、シェイクスピア作品の物語に基づきゲームを作る最初の試みであり、それは、シェイクスピアの「グローブ座」を現代に再現した複合型の劇場施設『シェイクスピア・グローブ(Shakespeare Globe)で使用されました。 このプロジェクトについては、以下のホームページの動画をご覧ください。(「シェイクスピアをプレイする(Playing Shakespeare) | D.A.R.E. (英語のみ))

 

darecollaborative.net

 

本プロジェクトにおけるアイデアの概要

多くの教育用ゲームは、学習者が遊ぶために、指導者など学習者以外の者がゲームを作成するという前提で作られています。私たちのアプローチは、それとは異なるものです。 本ソフトウェアでは、児童・生徒が自分だけのゲームを制作します。その過程で、通常とは異なるかたちで文学を学び、ゲームデザインについて学び、そして論理代数など、プログラミングの基礎を学びます

 

これは、必ずしも、シェイクスピア作品が有する価値を下げることにはなりません。これまでの研究によると、ゲームを通して文学を学ぶことは、物語の構造や視点、登場人物の動機や心情、さらには言語や比喩について、子どもたちが想像力豊かに考えるよう促すと言われています。これは,知的でやりがいのある、創造的かつ革新的なアプローチです。一方、私たちは、ソフトウェアだけでこれらを達成できるとは考えていません。熟練した指導法も必要です。そこで、ノースヨークシャー州で国語科(English)の指導主事をしているJames Durran氏による、「教師用導入パッケージ」を作成しました。

 

情報教育・プログラミング教育にかかわるの先生方と、国語科の先生方との協同で、本ソフトウェアを用いた実践を行うことができれば、より理想的です。ぜひ同僚の先生方と、『シェイクスピア』がいかに「演算」しうるのか、プログラミングによってどれだけ素晴らしい物語が生み出せるかを、話し合ってみてください。

 

ぜひ私たちの研究チームと、古典文学のテキストを教えるための新たな方法を見出しましょう。 研究段階にある『ミッションメーカー:マクベスはさらに発展し続けていく予定です。そのため、教育関係の先生方や児童生徒から、どのように改善しうるのかかについて、ご意見をお待ちしています。

また、本ソフトウェアを使用してゲームを作成し登録した際には、簡単なアンケートの質問に答えていただければ幸いです。

  ①教師(指導者)用アンケート(日本語版)

https://redcap.slms.ucl.ac.uk/surveys/?s=P3PKDPRTRJ

 

 ②児童生徒(学習者)用アンケート:

https://redcap.slms.ucl.ac.uk/surveys/?s=K48XW4NWN8

 

簡単なビジュアル紹介

『ミッションメーカー:マクベスで作られたゲームが、どのようなものなのかは、以下のサイトでご覧いただけます。このゲームは、マクベスとマクダフの最後の戦いを、魔女の視点から写しています。


Macbeth and Macduff

https://www.youtube.com/watch?v=F8KA6h-8BNs&t=32s (英語版)

 

こちらは、『ミッションメーカー:マクベス』を作成するプロセスがどのようなものなのかを示す映像です。


HOW TO MAKE MISSIONMAKER MACBETH GAMES Japanese titles

 

よくある質問

 

Q:『ミッションメーカー:マクベス』は、どの年齢層の学習者に適していますか?
A:10歳から博士課程の学生まで、幅広い学習者に使用されています。


Q:武器の使用は暴力を助長しますか?
A:『マクベス』の物語で使用されている以上の武器(や血)は出てきません。しかし、どのように武器を使用し、戦闘をゲーム上で表すかはユーザーである児童生徒と教師によって異なります。


Q:ゲームを作るのにどれくらい時間がかかりますか?
A:90分で短いゲームを作成した10歳の子どもがいました。しかし、より時間をさければ、より良いゲームが出来るでしょう。ソフトウェアを持ち帰って家で作成することもできます。


Q:どのようなコンピューターが必要ですか?
A:『ミッションメーカー:マクベス』は、WindowsMacに対応しています。Mac版は最近完成したので、まだ広く試されていません。)


Q:ゲームは共同作業で作れますか。
A:はい。ゲームを他のゲームとリンクさせることができます。例えば、生徒がペア学習で作成した15個程度のゲームを統合して、クラス全体のゲームとして完成させることができます。


Q:バグはありますか?
A:すべてのソフトウェアにはバグがあります。特にこのソフトウェアは商業会社によって作られたものではないので、私たちが気付いていないバグが発見されるかもしれません。そのような場合はぜひお知らせください。私たちは本ソフトフェアを改善するために、絶えず取り組んでいます。


Q:生徒は自分のビジュアル・オブジェクトを作成できますか?
A:自分の2D画像をメディアファイルとしてインポートできます。これらはソフトウェアのBrank Roomという機能を使って、壁に取り付けることができます。このテクニックを使って作成した『ベオウルフ』のゲームはこちら(https://www.youtube.com/watch?v=f3l515DhiJM)からご覧いただけます(英語版のみ)。

 

 

調査にご協力ください
最後に、簡単なアンケートに回答して、私たちの研究にご協力ください。
教師(指導者)用のアンケートと児童生徒(学習者)用のアンケートがあります。

 

   ①教師(指導者)用アンケート

https://redcap.slms.ucl.ac.uk/surveys/?s=P3PKDPRTRJ

 

 ②児童生徒(学習者)用アンケート:

https://redcap.slms.ucl.ac.uk/surveys/?s=K48XW4NWN8

 

ご協力いただきありがとうございます。

Andrew Burn
英語、メディア、演劇教授
UCL教育研究所

*1:マクベス(Macbeth)について

英国の劇作家ウィリアム・シェイクスピアによる四大悲劇のひとつ。スコットランドの武将であるマクベスが凱旋の途中3人の魔女と出会い、魔女から自分が王になると告げられる。この魔女の予言と男勝りの夫人の教唆によって野心をつのらせたマクベスは、王ダンカンを暗殺して王位を奪うものの、その後、王の遺児による討伐軍によって討たれる。なお、黒澤明監督の映画『蜘蛛巣城』(1957年、東宝.主演:三船敏郎)は、『マクベス』を日本の戦国時代に置き換えた作品である。