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Literacy, Culture and contemporary learning

身体と感情でジェンダーを問う―ダレデモデラルテvol.2「ザ・ベクデルテスト」

即興劇場「ダレデモデラルテ」による公演・第2弾として行われた「ザ・ベクデルテスト」の公演(午前の部)を鑑賞しました。

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ダレデモデラルテvol.2 ザ・ベクデルテスト

◆即興劇場ダレデモデラルテ vol. 2 「ザ・ベクデルテスト」 ご観覧ありがとうございました‼︎ 午前・午後あわせて4つのドラマ。 4人の女性とそれを取り巻く世界。 敬愛する仲間と演じることができて、 皆さまに観ていただけて幸せでした♪ 終演後には嬉しいご感想がたくさん! 喜びと感謝の想いが絶えません。 次回は4月24日(土)開催♪♪♪

井谷信彦さんの投稿 2021年3月19日金曜日

 

「ザ・ベクデルテスト」については、以前、「ワークショップフェス2018」の一環として開催されていた「『ザ・ベクデルテスト』入門」を体験させていただいたことがありました。

映画界で話題になっていた「ベクデルテスト」については、TEDでの、コリン・ストークスのトーク「映画が男の子に教えること」で知っている人もいるかもしれません。

www.ted.com

わたしも、なにかの記事で「ベクデルテスト」という語そのものは聞いたことがあり、そんな知識をもって、ディズニーの『シュガー・ラッシュ:オンライン』を観にいったりして「うほほーい」とか思っていたりした経験があります(映画を観にいったのは、ワークショップを受けたあとですが)。

何言っているかわからないかたは、こちらをご覧ください。


シンデレラらディズニープリンセスの豪華共演シーン公開! 映画「シュガー・ラッシュ:オンライン」特別映像

 

「ワークショップフェス2018」では、「ザ・ベクデル・テスト」について、次のような説明がありました。

2016年BATSで初演されたThe Bechdel Testを紹介します。主人公は3人の名前がある女性です。主人公は3人の名前がある女性です。ワークショップの説明のなかに「…物語は「女が男の話をする」以外にもある、普通の生活の中での複雑さ、豊かさ、関係性等を描きます。ザ・ベクデルテストは女性の物語を女性自身で探究し表現していけるフォ―マットです。(直井玲子「『ザ・ベクデルテスト』入門』」-パフォーマンスラーニング研究会ブログ記事より

 

正直なところ、わたしはこの説明をはじめて見たときに、すごい違和感を覚えました。

映画界で取り組まれているダイバーシティに向けた取り組みとしての「ベクデルテスト」については、なんとなくその意図はわかるけれども、それをインプロ(即興演劇)のフォーマットにしたときに、あえて、「男」「女」という性別二分法に基づく必要があるのだろうか、と思ったのです。むしろ、そういう二分法的なジェンダーの捉え方を崩していくことこそ、重要なのではないか、と。

 

そういう疑問をいろいろなところでお話ししていたところ、けして、このような疑問を抱いているのがわたしだけではないこともわかってきました。

そんななか、即興劇場ダレデモデラルテの公演で、「ザ・ベクデルテスト」の公演にトライされると聞き、「これは!」と思って鑑賞したのでした。

 

今回はじめて、「ザ・ベクデルテスト」の公演そのものを鑑賞してみて、あらためて、感じたのは、プロのアクター(パフォーマー)が演じることの意味でした。

たしかに、ジェンダー二分法にもとづくフォーマットであるのだけれども、ジェンダー二分法に基づくフォーマットのなかで、「女性」というアイデンティティをとりあげて、それをプロの身体でパフォーマンスしていくことによって、そこにある何かが覆されたり、新たな可能性が模索されていくことのの可能性を感じました。

そこにあるのは、あくまで、実験の俎上にのせられるための「女性」というカテゴリーであり、実際に、インプロ(即興劇)のパフォーマンスのなかで問われていくのは、それそのものではない

 

そう考えてみると、「ザ・ベクデルテスト」は、ジェンダー二分法や「女性」というカテゴリーについて、生身のアクター(パフォーマー)の身体や感情のすべてを使って実験を行っていく場、といえるのかもしれません。

「プロのアクター(パフォーマー)の身体・感情によって、ジェンダーについての問題を身体的・感情的に考えるための実験場」であり、「実験を通して、ジェンダーに対する新たなパフォーマンスを創り上げていく場」。

そんなキーワードが自分のなかに、浮かび上がってきました。

 

そして、そういう「ザ・ベクデルテスト」の公演を実現していた、即興劇場「ダレデモデラルテ」というコミュニティのデザインそのものも、興味深いものでした。

これまで、インプロ(即興演劇)の公演を鑑賞しにいくことも、インプロ(即興演劇)のワークショップを体験することもありましたが、「ダレデモデラルテ」の公演は、そのちょうど「中間」にある場だという感じがしました。

ダレデモデラルテが、固定のホストメンバー(4名)にゲストを迎える、というかたちで、公演を行っていることが、そのような「中間」にある「稽古場」的な感覚を生み出しているのかもしれません。

継続したコミュニティだからこそ醸成されている関係性と、初めての人たちが入ることで何かが起きる、という創発的な学びの場としての要素――それらが、がよいバランスで混ざり合っているように思いました。

第1回目の公演の様子については、ダイジェスト映像が視聴できるようですので、ぜひご関心のあるかたは、下記の映像を見ていただき、その「中間」的な感じのいったんを感じていただければと思います。

冒頭に引用した投稿でも紹介されているように、次回の公演は、4月24日(日)午前とのこと。楽しみです!