教員免許更新講習「やってみよう!国語科におけるICT教育」
本年度から、教員免許更新のための講習として、「やってみよう!国語科におけるICT教育!」という科目を担当することになりました。
小学校・中学校の先生方を対象とした講習で、「授業でICTを利活用すべし」という声があることも知っているし、なにか使ってみたいとは思っているけれど、具体的にどのように使っていけばいいのか手がかりが得られない…という方に向けた講習(のつもり)でした。
しかし、実際に講習がはじまってみると、そこにいらっしゃる方の「ICT活用度」は本当にさまざま。「なんでこの講座を受けようと思ったんだろう…?」というくらい、ICTを使いこなしていると思われる方もいれば、キーボードの文字入力ひとつひとつにも困難を覚えていらっしゃる方までいらっしゃいました。
そんな「ICT活用度」に大きな差がある参加者をお迎えした講習でしたが、それでも、やっぱり、皆さんと一緒に、なにか、ICTを使った表現・交流活動を行ってみたい!ということで、「NHKクリエイティブ・ライブラリー」を活用したICTによる表現活動とその交流を行ってみることにしました。
今回とりあげたテーマ活動はこちら。
5~6人のグループになって、グループで「百人一首」の歌を一首選んでいただき、グループのメンバーそれぞれに、百人一首動画を作成してもらいました。
反転する「イチゴの日」-筒井康隆×いとうのいぢ『ビアンカ・オーバースタディ』-
2016年5月に、筒井康隆×いとうのいぢ『ビアンカ・オーバースタディ (角川文庫) 』が文庫版で発売されました。
『ビアンカ・オーバースタディ (角川文庫) 』といえば、『ファウスト Vol.7 (2008 SUMMER) (7) (講談社MOOK) (講談社 Mook) 』(2008年)に本小説が掲載された際、表紙に「文学史上の“事件”が発生」という文字が踊るほどのインパクトを残した作品。
2012年には、星海社から『ビアンカ・オーバースタディ (星海社FICTIONS) 』が発売され、発売1ヶ月を待たずに3刷を重ねる売れ行き(!)であったことがちょっとした話題になりました*1
こんな話題のライトノベルですので、2013年に発売された『ライトノベル・スタディーズ 』にも「文学史上の“事件”ー筒井康隆『ビアンカ・オーバースタディ』」と題されたコラムも掲載されています(265-266頁)。
もちろんオンライン上でも、さまざまな書評やレビューをみることができ・・・、そのような意味ではまったく、今さら述べるところのないライトノベルなのですが、ここでは少し違った観点から、この作品についてレビューを書いてみたいと思います。
続きを読むクィアなテクストをクィア読みして「ストレート」にする―谷川俊太郎「きみ」―
昨年の夏頃、「児童文学におけるセクシュアル・マイノリティ」について考えたいと宣言し、その後、さまざまな方がたと、「児童文学における性(セクシュアリティ)」や「児童文学に登場するセクシュアル・マイノリティの描かれ方」についてお話する機会がありました。
そのような時、ある方から、『はだか―谷川俊太郎詩集』(筑摩書房)に収録されている詩「きみ」をおすすめいただいたきました。
その方によると、どうやら思春期におけるホモホモしい気持ち(?)が描かれている詩であるとのこと。そしてそのことについて、谷川さんご詩人が『ぼくはこうやって詩を書いてきた 谷川俊太郎、詩と人生を語る』の中で語られているとのことでした。
…それは、すごい!
というわけで、遅ればせながら『はだか』と『ぼくはこうやって詩を書いてきた』を取り寄せて、読んでみました。
谷川俊太郎「きみ」は、中学・高校の合唱曲にもなっているようで、オンライン上で動画を見ることもできるようです。
冒頭にある…
きみはぼくのとなりでねむっている
しゃつがめくれておへそがみえている
ねむっているのではなくてしんでるのだったら
どんなにうれしいだろう
…を読んだ時点で、ぐっと「少年愛」的世界*1に引き込まれるのはわたしだけではないはずだ!…と信じたい。
そしてラスト!
ふたりとももうしぬのだとおもった
しんだきみといつまでもいきようとおもった
きみととともだちになんかなりたくない
ぼくはただきみがすきなだけだ
…に至っては、もう圧巻すぎて言葉を失いました。ジルベール!!
*1:もちろんこの時点では(というかこの詩全体として)性別はわからないという読み方もできると思います。
わたしは、冒頭の「きみ」「ぼく」だけで、少年同士の関係性を想起したということです。これについて谷川俊太郎さん自身が「だって『きみ』って、男の子のことでしょう。」(『ぼくはこうやって詩を書いてきた 谷川俊太郎、詩と人生を語る』402頁)と言っているので、おそらくそんなに外れていなかったのだと思います。
学習指導要領にインプロ的に応答する
「ジャパン・オールスターズ」の一員として翻訳を行った、キャリー・ロブマン&マシュー・ルンドクィスト(2016)『インプロをすべての教室へ 学びを革新する即興ゲーム・ガイド』(新曜社)が無事に発行され、本日わたしの手元にも書籍が届きました。
訳者のひとりとして関わりつつ、一読者としてとても楽しみに待っていたインプロ・ゲームの本なので、こうして手元に届いたことがとてもうれしく、本書に掲載されている100以上もの即興ゲームを見ながら、さまざまな妄想をふくらませています。
もちろんすでにさまざまなインプロ・ゲームに関する本が世の中に流通していますし、インプロ・ゲームをはじめとしたさまざまインプロの手法を学校教育に適用するための本も、いくつか発行されてきています。
昨年度(平成27年度)から使用されている光村図書の小学校・国語教科書には、「話すこと・聞くこと」の教材として、劇作家・演出家の鴻上尚史さんが監修したアイスブレイク教材が掲載されていたりして…、かなり学校教育とインプロが近いところに来ている印象を持っていたりもします。
そんな中、この書籍が特別なのは、国語や算数、理科、社会などの教科学習のなかにインプロを取り入れるための具体的なゲームの提案があること、そして、それらのインプロ・ゲームに教師や子どもたちが楽しく取り組んでいくなかで、学校での学びの限界を超えていけるような仕組みになっていることがあるのではないか、と思います。
続きを読む切符をなくした子供たちは都市ネットワークの夢を見るか?―北川貴好「地上階には、つながらない邸宅」
2/25(火)から3/1(火)まで東京・池袋エリアで開催されている回遊型の展覧会、北川貴好「地上階には、つながらない邸宅」に参加してきました。
池袋駅からスタートするこの展覧会。
参加者は、SNSのメッセージのようなかたちでスマートフォン上に表示されるいくつかの指示や説明に従いながら、池袋エリアの地上下にめぐらされた地下都市空間を巡っていきます。
地下鉄、線路、エスカレーター、駅構内にあるショッピングモール、そして、タワービル。
地上からは見えない地下都市ネットワークは、いくつかの「駅」を中継ポイントとしながら、すべてがつながりあっているようです。
本展の作家である北川貴好さんは、タワービルをリサーチする中で、本展の企画をつくりあげていったそうなのですが、個人的には、本展においてもいくつかのエリアの中継ポイントとして機能している「駅」がわたしには印象的でした。
プログラミング言語の学習カリキュラムをどう組み立てるのか?―愛和小学校×Ludix Lab「i和design冬期講習会」より
きたる3/21~3/25に、NHKのEテレにて子ども向けのプログラミング学習番組『Why? プログラミング』が放送されるそうです。
先日、NHKにて、出演者の厚切りジェイソンさんによる取材会が行われ、その後、オンラインを中心に話題が広がっています。
NHK・Eテレでは、すでに2014年9月と2015年7月に、プログラミングの世界を紹介するバラエティ番組「アルゴリズミ子研究所」を放送して、話題になったこともあります。
昨年7月には、NHKニュース「おはよう日本」で、「小学生に人気 新たな習い事とは」というタイトルで、小学生の「習い事」として、プログラミング学習に注目されていることが話題として取り上げられていました。
文部科学省でも、2015年3月に「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」(PDF)(いろいろツッコミどころの多い資料だったようですが・・・)や、初等中等教育学校向けの「プログラミング教育実践ガイド」を公開し、文部科学省オリジナルのプログラミング学習ソフト「プログラミン」(!)も公開し・・・というタイミングでしたので、このタイミングで、NHK・Eテレが、プログラミング学習の教育番組を企画するのは当然のことかもしれません。
このように、プログラミング教育に注目が集まるなか、次に問題になってくるのは、おそらくカリキュラムの問題だろうと思います。
冒頭に紹介した番組『Why?プログラミング』でも、教育用のプログラミング言語「Scratch」が使用されるそうですし、文部科学省によって報告されたプログラミング教育の事例集においても、小学校では「Scratch」が利用されているようなのですが、「Scratch」という擬似的なプログラミング言語を学習したあとに、何をどのような順番で学習していけば、「Java」や「PHP」「Ruby」といったプログラミング言語への学習につなげていくことができるのか、という問題です。
『日経ソフトウェア』の武部健一さんは、次のように指摘しています。
さて、日経ソフトウエアとしては、スクラッチでプログラミングに興味を持った子供や大人を、次のステップへ誘いたい、と思っています。ただし、これが目下 の悩みです。というのは、“スクラッチの次”のステップとしてオススメできる適当なプログラミング言語が見当たらないからです。教育用として非常に良くで きたスクラッチが、プログラミングのハードルをあまりにも下げてしまったため、現在主流の言語との間に大きなギャップが生じているように思われます。
(記者の眼 - 「スクラッチの次」のプログラミング言語は?:ITpro)
実際、文部科学省による事例集を見てみても、小学校から高校までの実践事例から、カリキュラムの連続性を見いだすことが困難です。
続きを読むわたしの言葉/わたしたちの言葉――横浜国立大学附属中学校研究発表会
先日開催された「平成27年度 横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校研究発表会」に参加してまいりました。
私が参加したのは、2日目(20日(日))に行われた国語科の研究発表。
国語科では「『ことば』への認識を協働的に育む指導と評価」というテーマで、中学1年生の生徒たちが、1年間かけてとりくんできた「言葉ノート」を題材にした、「書くこと」の授業が行われました。
(画像は、「研究発表会2次案内」(PDF)より抜粋)
授業は体育館で行われたのですが、体育館内には、附属横浜中学校の生徒たちが取り組んでいる「言葉ノート」の実物なども展示されており、この授業がどのような文脈の中で行われるものなのか、を知ることができます。
こちらが、「言葉ノート」*1
A6サイズのコクヨ・Campusノートが使われていました。
表紙には、生徒たちが思い思いに書いたタイトルも。この生徒はおそらく、「この『言葉ノート』の活動を通じて、自分を変えていくぜ!」と気合いを入れて、「言葉ノート」の活動に取り組みはじめたのでしょうか・・・?
『必殺!!変身ノート』という、かなり気合いの入ったタイトルになっています。「必殺」したい対象が何なのかについては、詳しくお伺いしたいところです*2
この生徒は、かなり気合いの入った感じになっていますが、もちろん、そんな生徒ばかりではありません。『コトバ散歩道』『一連花生』など、エッセイ集のようなタイトルもあれば、『自分だけの広辞苑』のように、辞書・事典を意識したタイトルもあります。それぞれの生徒による『言葉ノート』の意味づけによって、タイトルの付け方が様々あります。
生徒たちは、それぞれのタイトルに従って、あるいは、途中から方針を変えたりしながら、1年間、日常生活や学校生活で出会ったときに自分のなかの琴線に触れたさまざな言葉を、『言葉ノート』に書きためてきたようです。
こちらは、ツイッターで流れてきたという、いわゆる癒し系の言葉。いわゆる「ポエム」と言ってもいいかもしれません。
SNSを通じて流れてくる「ポエム」的なものに共感してしまうあたり、現代の子ども・若者っぽさをなんとなく感じてしまうわたしです。
一方、そういう、「現代の子ども・若者っぽさ」を、乗り越えてくる言葉があるのも面白いです。
こちらは、どこかの町にあるらしい「手羽先二郎」というお店の名前。
店の名前に注目しているのも面白いですが、なによりこれが面白いのは、「この言葉の意味は書いている私自身よくわからないのですが、」と言っているところですよね。
一般的には、「わかる」ものこそ「面白い」とされたり、高い評価を与えられたりするものですが、この生徒は、「わからない」けど「面白い」ものに気づいている。
なんだかよく「わからない」けれど、それでも、考える価値があるもの、『言葉ノート』に書いておく価値があるものがある、ということに気づいただけでも、大発見だと思います。
そして、(おそらく)『言葉ノート』を書きつづけるどこかのタイミングで、「このノートを、これからも続けよう」と思い立ち、はじめに名付けた『はじまり』というタイトルの下に、「No.1」と書き加える生徒もいたようです。
こうやって、学校という文脈のなかで、教師から与えられたツールが、学習者自身の文脈の中に位置づけられていき、学習者のなかで意味をもっていくことって、ステキなことだなぁ、と思います。
今回は、この『言葉ノート』をもとにそこから、①「自分だったらこの言葉を残したい!」と思うものを選ぶとともに、②友達から「あなたらしい言葉」を選んでもらい、それを受けて、A4版×2枚(あるいはA3×1枚)に「言葉のノート抄」をまとめる・・・という活動が行われました。
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